バス・ロマン
我々はクリムロード領に赴いている。賢者リゼル卿が発掘した温泉の視察が目的である。
クリムロード卿は不在だったため、領都の代官に挨拶をし訪問目的を告げる。
代官は、視察のためにとある人物を紹介してくれた。
リゼル温泉協会会長のハゼルという男。彼は自慢げにリゼル卿と温泉を紹介してくた。
「若様が温泉を掘ってくれてから街の人々は毎日温泉に行くようになったんだよ、料金が非常に安くてね財布にも優しいんだ。それにな俺たちが払ってる温泉の入浴料が子供たちの学校の運営費に回ってるんだ、最近は日中から子供たちの元気な声を聞くことも増えてね良いことだらけだよ。」
我々は温泉へ向かって歩いていく。私の頭の中には温泉が湧き出てる場所に掘っ立て小屋でも立ってるんだろうと想像していた。
目の前には立派な建物がある…
「ここは一体!?」
「ん?ここがリゼルの湯 クリムロード温泉郷だよ。リゼル様が温泉テーマパークってのを作るって言って建物が急ピッチで作られたんだ、まだ全部完成してないから、あっちの方は工事中だよ。 今日は入館料はいらない日だから一緒に中に入ってくださいな」
「無料の日とは?」
「あー説明不足だった。毎週、太陽の日は入館が無料になってるんだ、これもリゼル様が考えてくれたことで1週働いた我々へのご褒美だって言ってた。今日はいつもより人が多いかもしれん。中は広いから芋煮にはならないから安心していいよ。」
「うむ、質問なんだが温泉協会とは一体どんな組織なのかな?」
「俺たち温泉協会は、有志が集まって無料で温泉の使い方・遊び方を説明する集団だよ。温泉に惚れて、温泉の素晴らしさを人々に伝えるのが目的なんだ、仕事が休みの日に交代でボランティア活動さ。 今じゃ温泉教って言われてるんだぜ、笑い話だよ、俺達はリゼル様が広めてくれた温泉の良さを忙しいリゼル様に変わって崇高な教え(温泉)を伝えるのが俺たちのモットーだ!」
「そ、そうか…なんか想像していたのと違うな…ここは随分広いスペースだな」
「ここは大広間で風呂上がりに雑談したりゲームをしたりするスペースだ。2階は飲食スペースであとで案内するよ。まずは風呂にいきましょう。おっと、風呂に入る前にこの水を飲んでください、若様が決めたルールで風呂の前後に必ず水を飲むっていうのがここのルールなんですわ、なんか健康に良いって言ってた」
「ここがメインの大風呂だ。区分けされてるのが熱い湯と温い湯だ、爺様たちは熱い湯に入ってるだろ?あれ、”熱くないと風呂じゃない一派”だな。まずここから浸かっていこう。 ここの温泉はリゼル様が最初に掘った温泉で俺たちは第一の湯って言ってる。ここにも色々浸かり方があるんだよ。
あそこの寝てるやつらいるだろ?あそこが寝湯スペースだ。横になりながらゆっくり湯に浸かってるやつら、”寝湯こそ至高派”のやつらだ。
あっちの体半分だけをお湯に浸かってるやつら、若様が半身浴って言ってたな。体から汗が出やすい体勢だって、”半身浴でスッキリ派”
あそこに高い場所からお湯が落ちてきてる場所、打たせ湯って命名されてます。マッサージ効果があり疲労回復に役立つとおっしゃってた。あそこで修行僧のように打たれてるのが、”打たせ湯マッサージ派”
とまぁ、メイン風呂だけで色々な楽しみ方があるんですよ。」
我々は第一の湯を満喫した。汗をかいて長旅の癒やしができた。
「次にサウナにでも行きましょうか。ここもクリムロード温泉の自慢の場所ですね。
右からドライサウナ、塩サウナ、スチームサウナ(低温、中温) それぞれ違うサウナが楽しめるんですよ。10分くらい入りましょう。入り終わって汗を出してスッキリしたら横にある水風呂にはいってください。」
我々は各種サウナを堪能した。ロウリュウというサービスは画期的だ!汗が尋常ではない量わきでてくる。締めの水風呂で毛穴をしっかりしめられた。サウナのあとの水風呂・・・悪くない。
「次の温泉は変わり湯ですね。1つ目が薬湯、薬草とか体にいいものを袋に入れて沈めています。腰痛に効果があるらしく腰痛い人たちはここにいることが多いです。2つ目がりんご湯、毎月中に入る物が変わるんですが肌にいいものを入れてるから女性たちに人気がある風呂ですね。」
りんごを入れると美肌効果か、王都で流行りそうだな。女性の美への探究心は凄いからな。
「あっちで子供たちの騒ぎ声が聞こえるのが、キッズプールって言って子供たちが遊べる温泉です。見て下さい、浅くて広いスペースでしょ? 若様が子供たちがはしゃいで遊んでもいいようにって広くしたんですよ。あそこに見えるのがお湯が出る滑り台、結構楽しいですよ。あとで乗ってみましょう」
滑り台が楽しい、童心に帰った気持ちになった。他の遊具もよく考えられている、子供たちの体力づくりにも役立つようにできている。
「最後はクリムロード温泉郷、一番の自慢の露天風呂ですわ。どうです?この景色。川辺の風景を見ながら風呂に入る、若様が言うにはマイナスイオン効果っていうらしいんですが聞いても意味が理解できなかったんですけどね。心を休ませる場所だって言ってましたよ。ここには”露天風呂こそ温泉派”っていうのがいますね」
心を休ませるとは良い言葉だ。風景を見ながら川のせせらぎを聞く、ゆっくりと湯に浸かってられる。
俺の求めていた癒やしはここにあったのか!?
「湯上がりの塩レモン水です。これは無料になってる飲み物なので飲んで下さい。汗をかいた体に良いものだって若様が作った飲み物です、最初は飲み慣れなかったんですけどね、今はこれなしでは生きていけなくなりましたよ、がはは」
しょっぱ酸っぱいな。だが汗をかいた体がこれを求めている。おかわりをしてしまった…
「次は2階の飲食スペースへご案内します。ここは街の料理屋に毎月交代で場所を無料で貸してるんですよ。仕事終わりに風呂に入って夕飯を食べていく奴らが多いんでね、どこの店もそりゃ腕によりを込めて調理してます。ここで評判になれば街の店にも足を運んでくれますからね。 ここで若様が決めたルールがあるんですよ、”温泉たまご”を使用した料理を提供すること。 温泉たまごってなんだ?って、食べてみればわかりますよ、”飛ぶよ”」
俺は飛んだ。料理も安く提供されている、一品一品の量は多くなく各店舗楽しめるように出来ている。冷えた麺に温泉たまごを載せた温玉麺が気に入った。ここではアルコールの販売は禁止になっている。
早くエールが飲みたい、温泉の話しで盛り上がりたい…
我々は領内の視察を終え、王都へ戻っている。
どうにかして、クリムロード領へ派遣…永久出向してもらえる方法がないかと
温泉教徒が数名また増えた…リゼル温泉卿万歳!!
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