6歳 ダンジョンデビュー⑩

「無事で良かった…」


父様が私に抱きついてきた。ディーたちも涙目になりながら駆け寄ってきた。

思った以上に心配をかけていたみたいだ、いずれ私もこうなるんだろうな…


別空間であった出来事を伝える。

「はぁ〜初代様も無茶苦茶だ…。リゼルはゴブリン・キングを一人で倒したということか!?マクベス、ゴブリン・キングはどのくらいの強さになる?


「ゴブリン・キングですか…モンスターの等級で言えば集団だとA、単体でBランクだと思われます。通常は5〜6人のパーティーで倒すものですが…」


「リゼルよ、証拠になるものはあるか?」


「ゴブリン・キングの死体ならば何かに使うと思いアイテムボックスに入れてあります」


「うむ。冒険者ギルドに報告をしにいこう。俺に良いアイデアが浮かんだ、この町の観光名所を増やすことが出来るかも知れんしな」


転移装置で地上に戻り馬車で町へ。冒険者ギルドへ直行しギルド長を呼び出す。


「クリムロード卿、どうなされましたか? 横にいらしゃるのはリゼル卿でしょうか? はじめまして、この町のギルド長をしておりますローゼンと申します」


「ローゼン殿。実はな、この町のダンジョンは初代様が作られたダンジョンだと言うことがわかった。10階のボス部屋の中に入ったときリゼルだけが転移して別空間に飛ばされたのだ。その空間にゴブリンキングが出現しリゼルがそれを退治した。その後に初代賢者様の本が出現し、今回のことが記述されておった」


「ちょっとお待ち下さい…色々と情報量が多すぎます。まず、ゴブリンキングを倒した証拠はございますか?これが一番重要になります」


「はい、ゴブリンキングの死体を持ち帰っています。出しましょうか?」


「あぁ、それは後ほど解体部門へお願い致します。ゴブリンキングの死体は研究者に売れますので。初代様の本を見せてもらってもよろしいでしょうか?」


「この本は賢者にしか読めない本ですがこちらになります」


「本当ですな、まったく知らない文字ですね。リゼル卿はこの文字が読めるのですか?興味深い。学者たちが喜びそうな話ですな」


「文字は感覚で読めるので、研究対象にはしにくいですね…たしかに証拠と言われると弱いですね」


「いえいえリゼル卿。こういうのは噂と言ったもの勝ちの部分が強いのです。」


「そうだぞリゼル。おまえが六歳で踏破したダンジョンが実は初代様が作られたダンジョンであったということ。証拠としてゴブリンキングを討伐し賢者の本が出てきたと。この2つがあればこの町の宣伝に充分使える。リゼルは知らないだろうがこの王国は賢者ブーム真っ只中なんだぞ、領都はもっと酷い。二代目賢者のリゼルが ”ここは初代様が作ったダンジョン” であると言った事実が重要なんだ。 


”初代様がお作りになったダンジョンの町”という響き、”二代目賢者が攻略したダンジョン”という結果、”二代目賢者考案のアスレチックジムと温泉” 3つもあれば観光スポットとしては充分だ」


「クリムロード卿、これから観光目当ての国民とダンジョン目当ての冒険者が多数やってくることが予想されますな。治安維持用の兵士の派遣をお願いします。あとはこの町の吟遊詩人たちにリゼル卿の今回の英雄譚を歌っても良い許可をお願い致します。なんならばリゼル卿の絵画を絵師に書かせますので、この町の冒険者ギルドに展示の許可を…」


「ローゼンさん。流石に絵画や歌は恥ずかしいので勘弁して下さい…」


「リゼル卿、もうこの町の冒険者や耳の早い商人たちはリゼル卿のダンジョン5階のボス部屋での活躍は広まっております。何もせずとも勝手に詩人たちには歌われます、それくらいであれば公認にしたほうが観光に来てくれた人々への娯楽にもなりますのでそこは是非に許可してください」


「わかりました…歌だけですよ!絵は恥ずかしいので駄目です!」


「ありがとうございます。クリムロード卿、この町はこれから忙しくなりますよ。代官殿にも是非お伝え下さい。このギルドも一儲けのチャンスですからな、ガハハ」


悪そうな顔の父様とギルド長であった…



〜 あとがき 〜

パパも領主なので収入源は大事です。ギルド長やギルドスタッフは収益があがると給料が増える仕組みです、やる気が凄いことになっています(基本給+出来高制)

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