領地視察
新しい馬車を試し乗りがてら視察のためにリゼル村へと向かう。
まだ新型は一台しか完成していないので、以前の馬車と揺れを確かめるために乗り比べも兼ねる。
オリビアとクリスは自分の愛馬に乗りながら馬車とご機嫌で並走している。
青毛のクリスの馬の名前はシーザリオ、佐目毛のオリビアの馬の名前はクリメロ。
2頭とも2人にすぐに懐いて信頼関係を気づけているようだ。
「フォークさん、揺れ具合は以前の馬車と比べてどうですか?」
「リゼル様…これは凄いです…移動手段の革命になります。陛下や閣下に見せると恩賜を間違いないかと。今までの馬車と比べると速度が凄いです。それにこの揺れの少なさ…」
フォークさんは興奮している。思っているよりも良い出来のようだ。これで国内の流通が今まで以上にスムーズになるかな?
村に到着…もう規模が町レベルになってる…どんだけフォークさん達頑張ったんだろう。
遅れて今まで使っていた馬車が到着した。
「この距離でも結構な時間差が出ますね。これなら遠距離からの物流だとコスト低下見込めますね」
「はい、リゼル様。まず王家と貴族が欲しがります。次に軍部ですね、その後に商人達がこぞって押し寄せるはずです」
「それだとダンクさんのところ生産追いつかないよね、過労で倒れちゃうよ」
「そうですね…陛下と閣下のお墨付きを頂いて、ダンク馬具工房は高級仕様専門店にすると良いかと思います。他の馬具工房や馬車職人には商用の馬車を作らせるように棲み分けをさせるのが良いかと思われます」
「それで良いのかな?ダンクさん達の売上は減らないの?」
「元々はリゼル様のアイデアでございます。今の段階でも人気店でございますので高級路線の方が逆に売上は増えるかと思います」
「そうだね、陛下に献上する馬車が出来るまでこの馬車で耐久面のテストをしよう」
久々の領地の村は区画整理もされて洗練された村に生まれ変わっている。
「これは村ですか?」
「はい、村でございます。前々からの計画を実行いたしました。領民も皆やる気を出してくれたおかげでスムーズに行えました。事業の方も順調ですので、これから案内させます」
養殖場など新しくできた施設を見学していく。
思ってるよりも本格的な施設が出来ている。
「よくこの短時間で出来上がってますね。想像以上でした」
「王国からも予算が出ておりますし、何より皆のやる気が一番ですね。リゼル様の為にと皆、必死になってやりとげました。このまま計画通り順調に進んでいけば領地のモデルケースになります。王国中の貴族の視察が来ることになると思われます」
「うわぁ〜•••それは面倒ですね」
「たしかにロード辺境伯様のエリアは•••その大らかな風土ですので•••他の貴族ですと面倒に感じるかもしれません。リゼル様のお手を煩わせることなく視察の対応は代官達にやらせますので問題はございません」
「それなら安心です。まだマナーに自信がありませんので。頑張ってくれた領民たちに私の財布から振舞ってあげてください」
「かしこまりました。では、少し予算をいただいて宴を開催させていただきます」
代官屋敷へと移動をする。増えた文官達一人一人に声をかけて行く。
「フォークさん。お金でしか感謝を伝えられないけど頑張ってくれた皆に慰労金を出してあげて下さい。ちゃんと休ませてあげて下さいね」
文官達はボーナス支給に喜んでいる。
久しぶりの視察を終えての帰りの道中。
「フォークさん思いつきなんだけど話しても良いかな?」
「はい、リゼル様の思いつきは賢者の知恵なので是非お話しください」
「いや、そこまでのものでもないんだけど。村はまだ土地に余裕あるよね?ダンクさんの工房を村に誘致できないかな?王都にも近いし、試運転用の土地も我々で開拓すれば準備出来るし、店を王都に残して馬車生産を村にすれば産業に出来ないかな?職人育成用の学校もあればなお良いかも」
「•••。それは素晴らしいアイデアです!!明日、ダンク馬具工房へ打診に伺います。間違いなく村へ移住してくれると思います」
翌日、移住のために大規模工房と試運転用の施設、住居などの提供をすることを提示するように指示を出す。フォークさんの報告によればダンクさんは心良く快諾してくれたみたい。
ついでに引退した職人達を雇って村に職人育成用の教育施設の作成も指示を出した。将来的に村の産業になればと淡い期待をしてみた。
将来、リゼルの期待通りに領地の一大産業になるのであった。
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