ダンク馬具工房②

屋敷へ帰宅。


話し合いの結果、”ブリちゃん先生”と言う名称でまとまった。

ペーレの苦笑いが印象的だったが…


太陽の日、3ヶ月ぶりにダンク馬具工房へと王都観光を兼ねて皆で向かう。


今日はオーリとオリビアと3人で店に入る。皆は近辺の商店などを見て歩いてる。

店のドアを開けると私の顔を見た白髪のダンクさんが笑顔で応対してくれる


「お久しぶりです、リゼル様。今日はグリフ様の鞍の調整でしょうか?」


「うん、お久しぶりですダンクさん。それもあるんですけど特注の馬車って作れますか?あと馬が欲しいのですが扱ってますか?」


「え?馬車と馬ですか?私がコーチビルダーなので馬車の方は作れますが…特注と言われますと一体どのような馬車でしょうか?」


私は昨日、オーリに作って貰った見本と模型を手渡す。


半楕円形の鋼鉄を成形して作った板バネ、それを重ねてまとめる。馬車のキャリッジ本体を乗せて振動を抑えるためのものでようはサスペンション。


車輪の軸穴用にベアリングの見本を木製で作ってもらっている。


この世界の馬車はサスペンションとベアリングがない。


模型を使って説明をする。


「これを馬車に使うのですね…なるほど、こういう構造で…流石は賢者様です…これが成功すれば馬車の振動がだいぶ抑えることができそうです」


ダンクのつばを飲み込む音が聞こえる。奥から3人の職人とお爺さんが出てくる。


「賢者様じゃ…賢者様のおかげでダンク馬具工房が繁盛いたしました。ありがとうございます…」


お爺さんが涙ぐみながら感謝し続ける。ダンクさんに顔が似てるからダンクさんの祖父さんかな?


「おい、爺さんやめろ恥ずかしいだろ。それに今は依頼の話をしてる最中だ」


「おぉ。新しい依頼ですか予約を全て後回しにしてすぐに取り掛からせていただきます」


「爺さん勝手に決めるな!結果そうなるんだけどよ…」


「親方、賢者様の依頼は一体?」


ダンクは3人の職人と祖父に今回の模型を見せながら説明する。

そこでオーリが説明を補足する。


「俺はドワーフ族のオーリ。鋼の板はサスペンション。長さを変えた鋼の楕円の板を重ねる。重さを吸収して板に分散させる。鋼が元に戻ろうとすることで弾力を出す。それで馬車本体の揺れを抑える。回る受け軸はベアリング。車輪につける。回転がスムーズになる。乗り心地良くなる。馬車の大きさ、タイヤの大きさに合わせた特注のものを俺が屋敷で作る」


「ドワーフ族の方が王都に!?はじめましてダンク馬具工房の代表をしているダンクです。この見本をお作りになられた方ですね、どうりで素晴らしい出来栄えで。これは1から馬車の構造を作り直さなければなりません。馬車の革命がうちの工房から始まる…」


「親方!やりましょう!!歴史に名を残しましょう!!」


「孫よ、これはダンク馬具工房に託された天命だ。他の仕事は一旦キャンセルしなさい」


「リゼル様。この特注の馬車は是非、ダンク馬具工房で作らせて下さい。必ずやお気に召す馬車を完成させてみせます!」


「うん、それじゃお願い。あと、完成したら陛下と閣下に見せるから内密にやってほしいかな?」


「へ…陛下と閣下にですか!?」


「良いものは国中に広めるからね。最初の馬車はお金かかっても良いから揺れの少ないものを作ってね。6人乗りの馬車を我が家用に3台お願いします。オーリさんがサスペンションとベアリング作ってくれるから試作品の作成とかサイズ調整とかは屋敷に伝えてくれて良いからね。オーリさんやる気だしてるから、あと戦馬が欲しいのだけど、知り合いに厩舎いませんか?」


「はい、見本を見ながら設計をしてみます。オーリ様は作業にご協力お願いできますか?」


「問題ない。俺は鍛冶職人。完璧なものを作る。馬車を作るのは初めてだ。楽しみだ。よろしく」


「ありがとうございます。リゼル様、知り合いの厩舎までご案内いたします。王都から一時間ほどの場所にあるのですがお時間は大丈夫ですか?」


時間は大丈夫と伝えるとダンクは貸馬の手配を急いで若い職人に走らせる。

待ってる時間にグリフを召喚して鞍の調整をしてもらう。


3ヶ月ぶりに会うダンク馬具工房の皆のことを覚えていたらしくグリフは可愛い声で鳴く。


そんなグリフを見てダンクさんたちは萌えている。お爺さんは拝み始めている。


馬車革命…移動革命…王国の流通改革につながる一日であった。

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