7歳 貴族学校入学前①

貴族学校からクリムロード家に使者がやってきた。


貴族学校は全寮制なのだが私が爵位のある現当主ということで寮ではなく王都の屋敷に住んで欲しいとのこと。過去にも現当主が学校に通う際は王都にある屋敷から通学していた事例があるため慣例に沿って欲しいとのこと。


「父様、私は王都に屋敷はないのですが…兄さんと同じように寮生活は無理なのでしょうか?」


「過去に当主が亡くなって跡を継いだ7歳の貴族がいるからな…その場合は当主としての扱いになるから寮生活では政務に影響あるからな。王都に屋敷を構える必要があるな、閣下に相談してみる、連れて行く人員も考えねばならぬな。賢者の扱いを学園が困ってるのが本音だと思うが…」


「やはり無理ですか…」


「そうだな、王都に行って貴族学校と閣下と検討してくる」


父様は王都へ向かった。数日後に帰宅した父様から書斎に呼ばれる。

「リゼル、王都で住む場所を決めてきた。王国で所有している屋敷の一つを貰えることになったぞ、学校から近い好物件だ。他に決まったことを説明するぞ。スタンロード家のクリス君をリゼルの従士とすることを正式に決定した、クリス君も屋敷に住んで一緒に学校に通うことになる、王国から秘書も派遣されることが決定した。王都に着いたら閣下より紹介される、優秀な人物らしいのでリゼルの政務の役に立てて欲しいと言われてる。執事は我が家からイワンを執事長として、メイド長はアリスの娘のアリシアを同行させるから安心して良い、二人共もやる気があるしリゼルも知らない人よりよいであろう? 足りない従者・下僕・メイド・門番・庭師などは王国で募集するか領地から連れて行くことになる」


「クリフ卿は納得されてるんですか?」


「王都でクリフに偶然会ったのだがクリフから言われたことだ。クリフは是非とも従士にして欲しいと、クリス君はやる気満々だったぞ。他に頼み事を言われたから近々スタンロード家に皆で行くぞ」


「はい、わかりました。イワンとアリスが一緒に来てくれるのは安心できます。他の人達はどうすれば良いですか?」


「うむ、将来のことを考えると王都で募集するほうが良いのだが、リゼルの立場を考えると貴族や商人の子息が応募してくることが考えられる。あまり干渉もされたくないからな…領内で半分、王都で半々あたりで良い気がするな。屋敷の警備関係はマクベスに任せてあるから大丈夫だ」


「はい、それで結構です。父様にお任せします」


「今後の予定はスタンロード家に行く、王都に一回行って屋敷の確認と面接を行おう」



〜 クリフ・スタンロード子爵side 〜

「クリス、来週クリムロード卿が領内に来る。ついに我が領内にも念願の温泉が…」


「父上、リゼル殿もその時はいらっしゃるのですね。久しぶりにお会いできます」


「うむ。リゼル卿も一緒に来ると手紙に書いてある。そのときにきちんと従士になることをお伝えする。そのつもりで準備をしておきなさい、ラウル殿の許可が出たらそのまま一緒に行ってもらうことになる」


「はい、わかりました。リゼル殿にお仕えできるのは僕の望みです」


翌週、クリムロード卿一団がスタンロード領都へやってくる。

リゼル卿とその家臣団による温泉発掘を見学させてもらったが圧巻だった、横で見ていたクリスは目をキラキラと輝かせていた。


リゼル卿曰く


「ここの温泉は透明感のある青い湯で青湯と言ってとても珍しい泉質です。入浴後にはしっとりとした潤いのある肌になるので女性に人気が出る温泉です。美白の湯として売り出せば観光名所になると思います」


ついに我が領内に温泉が湧き出た。晩餐会で機嫌が良くなった私は”賢者の湯”のネーミングの許可を貰った。これで我が領都への観光客も増えるだろう、クリスがこれから頑張ってリゼル卿に仕えてくれれば領民の人気も増える良いこと尽くめだ。


その日のワインはとても美味かった。

後の賢者の湯シリーズ ”美白の青”として温泉ランキングの上位常連になる。


〜 クリムロード領内side 〜


「公示を見たか!? リゼル様のお供の募集だってよ、俺ダメ元で応募してみる」


「リゼル様の侍女になれば将来お手つきの可能性も…」


「息子よ、リゼル様の下僕になるのだ!そうすれば我が商会も将来安泰だ!」


領都、第二領都でリゼルの従者の募集が公示された。主に下働きがメインの募集とは言え、領内のリゼル人気は圧倒的で募集倍率は数百倍であった…


「リゼル様の王都でのお屋敷のメイドになるのは私よ!」


「あなたにはキャリアが足りないわ、私こそメイドにふさわしい」


「アリス・メイド長と同期の私こそ一緒についていくべき」


また屋敷内でもメイド達や兵士たちの競争が始まっていた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る