5歳 お披露目会⑦

披露会が無事に終わり、貴族たちはそれぞれの控室に移動して行く。


一旦控室に戻り待機していると、私、父様、ディーが国王の私室に呼び出された。


私室には座っている国王陛下と横に立っている宰相閣下。入り口付近にリードとロンザが控えている。


「よく来たな、リゼル卿。堅苦しいのはなしだ、リゼルと呼ぶぞ」

開口一番、威厳のある声で陛下が話し出す。


「陛下、もう少し自重されて下され。リゼルは神童とは言えまだ5歳ですぞ。陛下の威厳と言うものがあります…はぁ」


やれやれと言った宰相閣下。きっとこの2人のやりとりは昔から変わらないのだろう。


「良いではないか、未来の我が国を支える優秀な少年だぞ、このくらいでは動じぬわ。 どうだ?ラウル卿、リゼルよ、披露会は面白かったであろう?」

陛下は少年のような屈託のない笑顔で話しかけてくる。


「陛下、発言をお許し下さいください。 陞爵の話は聞いておりましたが男爵はいくらなんでもやり過ぎではないでしょうか?まだリゼルは5歳ですよ!? 貴族の教育も、統治の仕方も教えてはいません。」


「良いのだラウル卿。男爵と言っても王都のすぐそばの村だ、国から代官も派遣するリゼルがやることは特にないようにしてある。税収を引いた村からの収益がリゼルに入るようになってある。格段やることはないぞ?」


「しかし、いくらなんでもやり過ぎでは…他の貴族達からの反感が…」


「それば大丈夫だ。 温泉発掘の施策は国の事業として早急に行う、すぐにその効果は理解するだろう。 もっと報酬を与えろと陳情が逆に上がってくるぞ? このくらいでちょうど良いんだ。下級貴族どもがリゼルの抱え込みに走られても困るからな。寄親は俺と宰相と辺境伯だ、誰も文句言えんだろ?」


「陛下がそう言うなら良いですが、7歳までの入学までは手元で育てます。妻もリゼルがいなくなれば納得しないでしょうから。そこは認めていただけなければ困ります」


「そうだな、それで良いぞ。リゼルよ、温泉に続いて新しいアイデアを出して村で試してみると良い。多少失敗しても国から補助金は出す。二代目賢者の知恵で王国の発展に繋げてくれ。


しかし、温泉発掘は良いものだ。王城にも早速試してみた。毎日温泉に入れるのは政務の疲れも取れて良い。しかしだな、一つ疑問に思ったのだが、宮廷魔術師と魔術師団たちが1週間かかって温泉を掘り出した。お主たちは4人で一日で発掘したのであろう?一体何をしたのだ? 種明かしを所望するぞ」


「陛下発言をお許しください。この度は陞爵ありがとうございます。 温泉発掘の際に精霊魔法を使っております。精霊の力で土壌を柔らかくして掘り進んでるので結果が早かったかと。」


「なるほど、土を柔らかくして掘り進めるのか。 本当にリゼルは精霊魔法を使えるのだな。ディー殿、精霊魔法はエルフ族だけが使えると聞いておったのだが、リゼルが特別なのか??」


「え!?あ、はい。精霊魔法はエルフ族だけが使えると思ってました。でもリゼルは教えたらすぐに使えるようになったし、精霊にも愛されてる、凄い才能豊かなんです。」


オーラが出ている陛下の前で流石のディーも緊張しているようだ。いきなり話しかけられて動揺している。


「そうか、リゼルだけが特別か、流石は賢者だな、規格外すぎるな。ディー殿、長老殿に精霊魔法の使い手を数名派遣して貰えるか聞いてみて欲しい。精霊魔法使いがいることで工期が早くなるならば交渉する価値はある。長老の許可が出たら、一番先にエルフ族の里に温泉発掘のための魔術師を派遣すると、必要なものを提供すると伝えて欲しい。」


「それなら長老も許可を出しそう…閣下のところの温泉を気に入ってたから…意外に俗物なのよね、あのお爺ちゃん。普段はエルフらしくって口うるさいのに…わかりました、里に連絡を取ってみます」


「それならばうまく行きそうだな、長老や里の者たちが喜びそうなものを後で教えてくれ。


宰相よ、男爵になったなら配下も必要であろう、誰か候補はおらぬか? リゼルが成人して自分で領地を運営できるまでは給料はひとまず国から出す形にしておこう」


「先程、その件についてはクリムロード卿のところに派遣をしている2人に話をしておりました。2人ともリゼルの配下になることに合意しております。 知らぬ中ではないので問題はないかと、あと秘書がわりに優秀な部下を1人ほどつけましょう。3人おればしばらくは大丈夫かと、足りなければ後々から増やしていけば問題ないかと思います」


「そうか、それで良い、細かいことは任せた。さぁリゼルよ、これから領地で何かやりたいことはあるか?」

陛下からの問いかけがやってきた。



”私の物語に男爵陞爵が追加される”

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