8歳 ロード辺境伯⑥


トーマスさんの耳打ちから空気が変わる。


「すまない、晩餐会は終了だ。師団長は幹部クラスを至急集めろ。緊急事態だ」


慌ただしい空気が流れる。


「一体、何があったのですか?お父様」


「ダンジョンから大量のモンスターが湧き出てきた。スタンピードの可能性が高い。アメリーは城の中で大人しくしてろ」


「私も戦えますわ!」


「実践経験のないやつが現場にいても邪魔になるだけだ」


アメリー嬢は納得してない顔をしているがこればかりはフロイ卿の方が正しい。


「フロイ卿、我々もお手伝いいたします。モンスターとの戦闘経験も豊富です」私は立候補する。


「今は人手が足りないから頼めるか?リゼル達なら戦力として申し分ない。賢者がいるとわかるだけで士気が高まる」


そこから慌ただしく時が過ぎる。モンスターの大群は領都を目掛けて進軍している。途中の村々で防衛戦をしているが焼け石に水のようだ。


隣国との境界線から師団を呼び寄せることも防衛のために出来ない。衛兵達は逃げてくる領民達の誘導で混乱している。


「まずは冒険者ギルドに緊急依頼を出せ!命令系統が複雑になるが頭数は必要だ。魔術師団と見習い達は城壁の上で待機、残っている部隊は門前で罠を至急準備だ!」 フロイ卿は混乱してる城内から的確な指示を飛ばす。


「トーマス!リゼルたちを安全な場所から騎士達の支援をできるようにしろ。今回はモンスターのスタンピードだ、城壁の上から数を減らすよう現場で指揮をとれ。客人には怪我をさせるなよ!」


「かしこまりました!!」

一礼してトーマスさんと部屋を出る。


城内の一室を借り、アイテムボックスから皆の分の装備と着替えを取り出し、動きやすい格好に着替える。


「トーマスさん、お待たせしました。リゼル家一団、準備完了です」


「宿の方には連絡を致しております。従者の方は城へと避難できるよう手配済みです。では、こちらから移動致しましょう」


10メートルほどの高さの城壁の上へと階段を昇る。見習い騎士団たちはカタパルトやクロスボウの準備を慌ただしく進めている。城外では工作部隊が土壁や落とし穴、くくり罠などを仕掛けて行く。騎士団や冒険者達も杭を打ちつけながら障害物を作り続けている。幸いにして一本道なので進軍速度の低下は多少なりできそうだ。


「リゼル様、我が師団との連携はいきなりは取れないと思いますので遊軍として動いて下さい。中央からモンスターが進んでくると予想されますので、騎士団と冒険者達は左右に分かれて布陣いたします。付け焼き刃ですが中央にくるモンスターを遠距離から攻撃して数を減らし両翼の部隊が突撃する作戦です。私は城壁の上から指揮を取りますのでご不明な点がありましたらお尋ねください」


城壁下ではフロイ卿を慕っている領民達が不安そうにしながらも義勇兵として集まり始めている。


数時間の緊張が続く中での作業に神経がすり減って行く。その最中、斥候部隊が戻ってきた。モンスターのスタンピードはもうすぐ到着すると告げられる。モンスターは小型、大型問わず人型と獣型もバラバラの混成スタンピード。


フロイ卿の声が城壁の上から響き渡る。


「皆のもの、よく聞け!!これから領都はモンスターのスタンピードに襲われる。領民を守るため力を出し惜しむな!1匹でもモンスターを多く殺せ!!城壁を越えさせるな!!」


フロイ卿らしい端的な言葉で部下達、冒険者達を発奮させる。


“ウォー!!!”と至る所から勇奮する。


そんな最中、遠くから地ならしのような足音が聞こえてくる•••

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