EP77.遊園地で姫とデート開始
俺だ、
俺と
チケットを購入してパンフレットを貰い、地図を見る。
さすがにドリームカントリーや万人向け工房ほど広くはないが、この遊園地もそこそこ広くえ充分楽しめそうだ。
「まずどこに乗りましょう?」
「そうだな…朝だし最初だしで、絶叫系は個人的に避けたいな」
「あ〜、それは同感です…結構酔いますもんね」
俺は苦笑して頷く。
先程の事故のせいで、意識があやふやってことは無いが…それでも寝起きから対して時間がたってない時から酔いたくない。
最初だから酔いたくないということを考えても、朝食を考えても…まあ、同じ意見だ。
「では…お化け屋敷とかどうでしょう?」
「話聞いてたか…?」
「ふふ、冗談です。迷路とかはいかがでしょう?」
ビックリしたわ…寝起き(ry 時から恐怖を味わいたくねえよ…
で、迷路ならばのんびりと楽しめればいいし、軽く頭を使うので俺的には大賛成だ。
「迷路なら…ここか?」
俺は地図で迷路系のアトラクションを探し、指をさす。
小夜はそれを覗き込んだ…いや近い近い、電車の時に気づかなかった甘い匂いがするからやめてくれ…
なんで女ってこんな甘い匂いするんだろうな…これだけで理性が働いてしまう。
「そう…ですね。ここに行ってみましょう。距離もさほど遠くないですし、楽しそうです」
「はいよ。その前になんかいるか?奢るぞ?」
今回はエスコートすると決めているので、小夜を喜ばせたい。
貯金はあり余っているので、相当なことがない限りは余裕だ…小夜の遠慮がちな性格的に、そんなにねだって来るとも思わないが。
そう思って提案すると、小夜は人差し指を唇に当ててどうしようか考えている様子だ。
お嬢様のような格好をしているため、とても様になっている。
「今は、いいです。しかし、後ほど何かお願いしますね?」
小夜が人差し指を唇に当てたまま首を傾げて、妖艶な微笑みを向けてそう言ってきた。
俺はそれに見とれてしまい、「お、おう…」と弱々しく頷くことしか出来なかった。
少し歩いて、目的地の迷路を営んでいる施設に俺らは来た。
ここは[迷路]といっても、謎解きしながら演出を見て進んでいく感じのポップなものだ。
列に並んで、順番を待つ。
しかし、ここで少し気になっているものがあった。
小夜が視線をかなり集めている事だ…
金髪という時点でかなり目立ちやすく、それも容姿が整っているため、普通に歩いているだけでもそこそこ視線を集めていた。
まだナンパされてないだけ奇跡と思っていたが、列に並んだ途端に人が密集しているためか視線がより増えてきた。
俺としては、デートの相手を見られていい気分では無いので少し不機嫌になっていた。
「…蓮さん?何かありましたか?」
それに気づいたのか、小夜がキョトンとした顔で覗き込んで聞いてきた。
その仕草や顔があまりにも可愛らしく、すぐに頬が緩んでしまう俺はチョロいのだろうな。
「んや、なんでもない」
「そうですか?少し不機嫌に見えたのですが…」
「それは小夜が視線を集めていたからヤキモチを妬いていただけだ。気にすんな」
「ふえっ!?」
んー少し思い切った発言だったかね…言った後に顔が暑くなってしまう、くそっ…
頭を掻いて後悔していると、小夜の顔が赤くなっているのに気づいた。
「小夜?」
「はっ、はい!?」
「……どうした?」
「ッ!?…蓮さんのばか!」
何故か急に罵倒されてしまった…何でだ?
俺は首を傾げるが、小夜はぷいっと顔を背けるだけだった。
少ししたら順番が来て、スタッフが人数を聞いてきた。
ここでも俺は叫んでしまったのはまた別の話だ…悲しいもんだよ。
俺らは簡単な謎を解き、ゆっくりと道を進む。
個人的にはとても面白い、小夜もテンションを上げて興味深げに演出を見ていてとても可愛い。
少しして、鏡がそこら中に張り巡らされていてどこに進めばいいか分からないところに来た。
こういうのって短いもんだけど、それでも結構ダルいよな…
「見てください!蓮さんがいっぱいです!」
いやお前もいっぱいいるぞ?
…まあ、隣でキャッキャと騒がしい小夜を見ると、そんな気持ちも吹っ飛ぶもんだ。
「…蓮さん」
「ん?」
「私たちって、どっちから来ましたっけ…?」
…なんか久しぶりに見たな、ポンコツ小夜。
「今、失礼なこと考えましたね?」
小夜が頬を膨らませて口を尖らせているが、そもそもとして心を読むなよ…
で、どっちから来たかって?そりゃあもちろん…
「…どっちだっけ?」
俺もポンコツだったわ。
小夜を微笑ましく見ていたら方向感覚が狂ったらしい…ちっ、可愛いはこれだから…
いや、最高なんだけどな、うん。
「どうします?」
「はは、こういうのは適当に進めばなんとかなるんだよ」
俺が笑い飛ばして歩を進める。
いや何、さすがに俺たちの影があるだろ?それが鏡にぶつかったら今どんな地形か分かる。
しばらく進んでみるとどうだろう、来た道に戻ってきてしまったぜ。
思いっきり逆だったか〜…引き返すか。
「逆だったわ。戻る──」
「え?ムグッ…」
身長の差で前が見えなかったらしく、急に立ち止まって振り向いた俺の胸にぶつかった。
まあ胸って言っても喉元あたりだ…その結果甘い匂いが再び鼻腔を擽る。
「ッ!?悪い!」
「………」
俺が慌てて謝るも、小夜は俺の喉元あたりに顔を突っ込んだまま動かない。
「小夜?」
俺は小夜の両手を掴んで引き剥がす。
すると小夜は顔を真っ赤にしてフリーズしていた。
「小夜ー?」
「ふぇっ!?は、ひゃい!?」
「いやどうした…」
小夜はビクッと肩を震わせ、取り乱す。
目は完全に泳いでいて、落ち着きがない。
「あ、えと…あの…すみません…」
「…いや、こっちこそ悪い。いきなり立ち止まって」
「い、いえ…」
小夜は首を振り、俯いた。
「(…きゅ、急なのでびっくりしました…)」
「何か言ったか?」
「い、いえ!」
何か途切れ途切れで聞こえたので聞き返すと、小夜は首を盛大に振って俺と距離を取った。
そのまま「いきましょう!」と振り返って足早に鏡の迷路を進む。
俺は首を傾げ、小夜を追いかけたのだった。
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