EP68.幸せな姫との日常
俺だ、
放課後、まだ慣れない
料理教室…という名目でやっているこの生活だが、小夜はもう十分料理は上手いのでやる意味は無い。
しかし、終わって欲しくないためそれは言える訳もない癖に、その名目関係なしにずっと続いて欲しいと思ってしまう図々しい俺である。
「なあ、小夜。少し聞いていいか?」
「はい、なんでしょう?」
隣に座っている小夜を見て言うと、小夜も俺をみてくれる。
以前(EP61)の時といい、同じ反応をするだけというこの少しな出来事でも、どこか幸せだと感じてしまう俺は重症なのだろうか…
そんな事はさておき、今日の昼休みから気になっていたことを切り出した。
「若林と何やら楽しく話していたが、去年のことはもういいのか?」
去年に小夜が学園の「勇者」様こと
勇翔自身は何もしていないのだが、原因は彼にあるため小夜は勇翔に苦手意識があるのは始業式の時に伺えた。
しかし今日、小夜は勇翔ととても楽しそうに話していたので、心配を混じらせて問う。
少し嫉妬していたのは、さすがに恥ずかしくて言えなかった。
「はい、大丈夫です。あの方達は特待クラスから通常クラスに下がったらしく、去年あったことは大丈夫だと判断したので今は特に警戒せずに過ごせています」
「そうか。それならよかったよ」
大丈夫なことに安心する自分もいれば、モヤモヤが膨らんでいる自分もいて…なんだか不思議な気分だな。
「心配してくれてありがとうございます」
「いや、始業式にあからさまに警戒してたのが見て取れたからな。心配もする」
「ふふ、そうですか」
なんだか気恥ずかしくなったので、俺は顔を背けた。
必死に読んでいた本に視線を落とすが、顔がすげて熱いな…くそっ。
「そういえば蓮さん。もうすぐ
「おいおい…まだ映画見に行ったばっかなのに気が早くないか?あと2週間後後だぞ?」
「いいじゃないですか。休日には蓮さんと何がしたいので、押さえておきたいのです」
あーもう…小夜が頬を膨らませてるが、そのセリフはなんとも勘違いしそうで鼓動が早くなるからやめて欲しい…
小夜からの好意は感じられるのだが、それは恋愛的な意味で…と断言できない、口が悪いくせにネガティブな俺がいた。
「んー、姉貴は夏休みに来ると言ってたし来ないと思うが…
瑠愛とは
地頭がよく優しくも可愛いウチの自慢の妹である。
「凄いですね…蓮さんの実家ってここからだと大体どれくらいなんですか?」
「こっから片道一時間半くらいじゃないか?隣の県だし」
「それは中々遠いですね…」
「父さんのせいでな」
まあ、逆に言えば父さんのおかげで小夜と出会えた…という捉え方もできるんだが、さすがにやり方がやり方だしでとても感謝出来そうにはない。
まあ、小夜のおかげでもう吹っ切れたけどな…詳しくはEP54をチェックだ。
小夜は「お疲れ様です…」と同情してくるが、俺は「大丈夫だ」と笑って言い退ける。
小夜のおかげで今はもう幸せな毎日だしな、言葉にすることは出来ないが…
「本当に大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。なんなら今から実家に突撃してやってもいい」
「明日も学校じゃないですか」
「まあな」
軽く冗談を言って笑い合う。
こんな時にもやはり幸せを感じれる。
「話を戻すが、とりあえず姉貴に確認を取ってみるわ」
「分かりました」
そう言って俺はスマホを取り出し、姉貴にメッセージを送る。
:くされん:←蓮
【ゴールデンウィークだが、姉貴は来ないと言っていたが瑠愛はどうなんだ?】
スマホをスリープしポケットに仕舞った途端に振動がなる。
もしかしたらと思ったのでスマホを確認するが…
:ふたりん:←姉貴
【今聞いてみたけど、四連休の時に来るみたいだよ〜】
「返信はっやいな。聞いた上でこの速さってヤバすぎるだろ」
「ふふ。返事はどうだったんです?」
「四連休の時に来るらしいぞ」
今年のGWは三連休と四連休で別れている。
正直どっちがGWなのか判断が難しいところだったりはする。
「そうですか。楽しみですね」
「おう」
俺は今分かりやすいくらいにニコニコしていることだろう。
瑠愛と会えなかった期間は一ヶ月と長いように感じてかなり短い時間だ、嬉しいに決まっている。
「そういえばだが、小夜は小夜で実家の方はどうなんだ?」
ずっと俺の実家の話をしていたので気になった俺はニコニコした顔を引っ込めて問いただす。
小夜はスマホを取り出して、予定を既に組んでいたのか画面を見ながら答えた。
「私も四連休の方に両親が来ますね。あ、そう言えば蓮さんってお母さんには会いましたけどお父さんには会っていませんでしたよね?」
「そうだったな。母が欧米人なら父親は日本人か?」
「はい。とても優しくて落ち着いた雰囲気のある父です」
「それは楽しみだ」
正直母親の方は色々と質問の嵐が耐えなかったので、俺としては落ち着いた雰囲気らしい父親がより楽しみになってきた。
「そうなると、三連休の方は暇になりますね」
「そうだな。どこか行くか?」
「そうですね。しかしもう時間ですので明日に決めましょうか」
「マジか。そうするか」
楽しく話をしているとやはり時間は早く感じてしまうものなんだな。
姉貴か従兄弟しか前までマトモに話をしてこなかったから、かなり驚いた。
「じゃあ、また明日な」
「ええ、また明日」
『また』という言葉を噛み締めて再び幸せになり、この日常がずっと続いて欲しいと思った一日だった。
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