EP20.姫と熱く語り合う
みんな〜!こんにちは〜!お魚大好きな
ぐふぉっぐふぉっ……ネタ尽きたからって、さすがにこれはキツすぎたな……
……俺と
マンションから一番近いこの水族館は、かなり凄いことが盛り沢山な所だ。
今から主な要点を載せよう。
・ジンベエザメ含む色んな水棲生物や、ペンギンなど多少の陸上動物の観察が可能
・水族館の横には何故か大きめの観覧車が経営されている
・水族館前は夜になるとイルミネーションを見ることができる
……ちょっと待て、俺ら別にデートに来たわけじゃないんだが!?
いや水族館に来てる時点で今更感だけどよ!それでも断じて!違うんだ!
……まあ、ほぼ存在できないこの体質のおかげで、周りからすれば小夜一人。
その点でいえば、難儀なこの体質含めそこそこ良いところではある。
そんなことを考えながらも、俺らはチケットを購入して早速水族館に入館する。
ちなみに、ここでも俺の体質発動……早速叫ばなければならなかったのだった。
入館して少し進むと、早々に大きい水槽が設置されている最初のエリアに到達する。
この水槽に泳いでる魚は、基本的に拳4つ分くらいの大きさだった。
少し先には小さな水槽が散りばめられているので、まずはジョブといった感じだろう。
……自分で言っておいてなんだが、ジョブってどういうことだ?
小夜はさっそく水槽の中に広がる
「わぁ……久しぶりに来ましたけど、やはり素晴らしいですっ」
どうやら、テンションもかなり上がっているらしい……子供のようである。
その後も、「可愛い」やら「面白い」など抽象的な感想を並べていく小夜。
他になにか無いのかとは思うが、やはり好きなのかいくつもの魚の名前を知っていた。
実は俺も昔から生命体に興味があり、歴史などの豆知識をある程度記憶している。
その知識を''無意識''に独り言みたく矢継ぎ早に語っていく。
小夜はそんな俺の独り言を熱心に聞き取り、興味深そうに頷く。
それを横目に見た俺は、一度独り言を止ませて嘲笑うように「はっ」とニヒルに笑う。
「魚が好きだったというのにこれくらいの事、知らなかったのか?」
「はい……そんな私に比べ、蓮さんってすごく物知りなのですね!」
……なんか最近こいつ、俺の皮肉を受け流してないか?
そんな事を考え、俺は頬を引き攣らせる。
……で、物知り……ね。
俺は儚げな表情で水槽の方に顔を向けて、水槽に手を添える。
「……実をいうと水族館に来るのは初めてなんだよ。ずっと魚に興味はあったがな」
「………」
視界の端に映る小夜は、申し訳なさそうに眉を下げて何も言えなくなる。
俺はそんな小夜に「ふっ」と笑いながら、指を向けてにやけてやる。
「だから、本来ならばお前が説明しないとダメなんだ。頼むぞ?ん?」
はっ、最高の皮肉だな!こんな皮肉を言ったのもいつぶりだろうか?
もちろん反省はしていない!ふんっ!
「はいっ!任せてください!え〜っと、あの魚はですねぇ……」
俺は絶句した……逆に小夜がテンションを上げて、魚の説明を始めたからだ。
この皮肉でさえ、もうこいつは受け流してしまうというのか……?
ちっ、晒し損だ……
俺は諦めのため息を吐き、小夜の話を仕方なく聞いてやった。
語り合ったせいで、結局最初のエリアだけで30分くらい時間を使ってしまった……
先程の事件があっては、さすがにペースが遅すぎる気がする。
それに……俺としては、次のエリアを絶対に流したくはないんだよな……
次にあるのは、小さい水槽がいくつも設置されているエリア。
ここは最初のエリアの通りの外れにあるが、俺はここが第二エリアだと認識したい。
で、俺はさっそくひとつの水槽前で屈み、中の様子を目に焼き付けていく。
「何を眺めてらっしゃるのですか?」
「ん?わかるだろ。''風景''だよ」
……小さな水槽は基本、内装がしっかりと作り込まれているものだ。
俺はそこを魚が泳ぐ、自然な世界を観察するのが実は一番楽しみだったりしていた。
しかし……
「風景?魚ではなく?」
俺は盛大にため息を吐いた。
全く、わかっていないやつめ……
俺は先程述べた、この水槽の素晴らしい魅力を小夜に熱弁してやる。
小夜は口元に緩い拳を添えて、「ふむふむ」と興味深そうに頷く。
「なるほど……」
最後にそう言って頷き、小夜は何故か俺のすぐ隣に屈む。
急な小夜の距離感に困惑して、俺は一歩遠ざかる。
そんな俺の様子を気にもせず、小夜は水槽を熱心に眺めている。
俺はため息を吐いて他の水槽に移り、それぞれの''風景''を熱心に脳に焼き付けていく。
やはりすばらしい……見ていると心が落ち着く気がするし、なんだか芸術的だ。
過大評価と言われるかもしれないが、実際俺はそのくらい感動している。
「たしかに風景を眺めるという視点になると、ある意味世界が広がって面白いですね」
「ん?そうだろ?魚それぞれの個性も良いが、俺は環境にも目を向けたいんだよ」
いつの間にか後ろにたっていた小夜に、俺はまた珍しく熱く語ってやる。
その様子を小夜は微笑んで聞いているが、俺ははっとして口を閉じる。
「うん?どうしたんですか?興味深いです。もっと聞かせてくださいよ」
こんな俺が珍しいのか、小夜が少しニマニマして俺に問いつめてきやがる……
俺はその顔に三度目の小突きをお見舞いし、言う通り熱弁してやったのだった。
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