EP43.魔王様とお買い物

 ある日曜の昼前での話だ。


 …俺、江波戸蓮えばとれんは今、スマホを耳に当て、鳴り響くコールが終わるのを待っていた。

 また2コールくらいすると、短いノイズ音がなった。


「…もしもし?」

「3コールででろよ魔王様」

「地味に甘いな」


 5コールくらいででた学園の「魔王」、黒神零くろかみれいに俺は電話を掛けていた。

 実は俺からかけることは初めてだったりする。


「…で、用件はなんだ?君から電話してくるとはめずらしい」


 いつもの様にクールな口調で、今もメガネをクイッとしている所が頭に浮かぶ。

 まあそれは別にどうでもいいんだが。


「おう。少し買い出ししたくてな…相談に、魔王様に着いてきてもらおうって思ってよ」

「…ふむ。…………了解した。どこで集合するんだ?」


 雰囲気的にこちらの事情一瞬で理解したなこいつ!?

 恐怖を感じてきたわ…まあいいや、もう。


「叫ばないと俺に気づかないだろうから、人目の少ないところをお前が決めてくれ。頼んだぞ」

「そうだな…駅前の噴水とかでどうだ?」

「お前話聞いてたか?」


 駅前の噴水とか、ここらで一番待ち合わせに使われる場所なんだが?

 零は「冗談だ」と言うが、全く笑えない。


「そうだな…駅前ショッピングモールの駐車場、三階の端でどうだ?そこから直接ショッピングモールにもいけるしな」

「わかった。そこで…14時でいいか?」

「大丈夫だ。それじゃあ、また後で」


 そこで通話は終了。

 俺は立ち上がり、今日の服装を選ぶためクローゼットを覗いた。







 その後、13時過ぎ。


 正午に来た俺は、例の駐車場で待っていたんだが、直に零がやって来た。

 俺は零に近づくが…声はかけない。


 零の服装を観察する、色んな角度から、細かいところまで…

 理由?いや、普通に零が来るのが遅かったから悪戯ついでにオシャレの勉強をしてるだけだぞ?


 で、零の服装は、白のVネックロングTシャツの上に紺色のカーディガンを羽織って、ボトムスは明るいブルーのデニムパンツ。

 青系を基調とした服装だからかクールな雰囲気を感じ、性格や容姿も相まってイメージにピッタリである。

 まあ、魔王とか黒神って名前の要素は全くないが…


「…おい、いるんだろ。蓮」


 ギクッ…

 …あ、言い忘れていたが、零とは学校でも接触回数が増えて名前呼びする仲にまではいってるんだ。

 仲が深まったおかげか俺がいる''気配''だけは感じ取れるんだった…姫よりはマシだが、こいつはこいつで結構凄いな。


「おう!」


 お〜結構響くねえ…

 じゃねえよ!在来工法駐車場だからめっちゃ響くじゃねえか!


「やあ、蓮」

「やあ、じゃねえよ。在来工法駐車場だからめっちゃ響くんだが?」

「よくそんな名前知ってるな。まあ、人は少ないし許してくれ」


 はあ…しゃあねえな。

 俺がため息を履いている隙に、零は俺をマジマジとみつめてくる。


「…ふむ。蓮の私服を初めてみるが、結構似合ってるし、センスがいいじゃないか」


 言い忘れてたが、俺の服装は淡い青のドレスシャツの上に紺色のカマーベストを着て、ボトムスはダークグレーのスラックスだ。

 実はEP18の時に着ようとしてたのを、せっかくだし今回採用した。

 ふっ…ワックスであげた前髪の下から、俺の鋭い目がメガネを通してお前を貫くぜっ…


「さんきゅ、これでも一応出かけるんでな。誰も俺を見ることはないが…」

「はは、ドンマイだな。かなりカッコイイから勿体無い気持ちはある」

「まあまあ、お上手なことで」


 そんな雑談を繰り広げる。


「で、蓮。今回の詳しい用件はおそらく、ホワイトデーの贈り物選びだろ?」

「察しよすぎるだろ。怖すぎるわ」


 やっぱり察せられてたのかよ…

 明明後日のホワイトデー……に姫様に何かお返しをしないとな、一応チョコもらったし。


「はは。まあな?」


 生暖けえ、生暖けえよ…視線がよお…

 めっちゃ居心地悪いんけど…

 俺はそんな視線と遮断するためため息を吐いた。


「…ご名答だ。とりあえず3候補ほしい」

「ふむ…少し多くないか?」

「まあちょっとな」


 …流石にこの理由は教える訳には行かない。

 俺は適当に零をあしらい、二人で買い出しに向かった。

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