その4 なぜか姫様との接触が増えた
EP42.姫とのひな祭り
俺だ、江波戸蓮だ
あれから、なんやかんやで
しかし、俺の体質のお陰か、学校内で変な噂が立つようなことは無かった。
……だが、なんだか釈然としないんだよな。
決してそういう噂が立って欲しいわけではないが、なんだかなあ……
「江波戸さん」
そんな俺に、今日も今日とて前の席に席替えとなった小夜が話しかけてきた。
無論のこと、EP15で約束しているため呼び方は苗字だ。
「……なんだ、白河」
そんな小夜に、ぶっきらぼうに返しながら。
どこか満たされた気持ちになっている、そんな心境に、俺は未だに混乱していた。
はあ……これからどうなるんだろうな、俺。
「<もぐもぐ>……」
そんなこんなで時が経ち、一年生最後の月である
料理をして晩飯を作った俺は、気分転換にほれを外で食べることにした。
春が始まったばかりのベランダは、冬の名残かまだまだ肌寒い。
料理が冷めてしまうかもしれないが、この料理に関してはそちらの方が好みだ。
「ひな祭りですねえ……」
そんな俺に、冷たい夜風を浴びていたらしい小夜がそう声を掛けてきた。
さっき晩飯は差し入れたばかりのはずだが、後々食べるのか?
……まあ、日付けから察することができる通り今日はひな祭りである。
女子の健やかなる成長を願う、我が躊躇に表れている伝統行事だ。
「なんで晴れ着を着ているんだ?」
そう、小夜は着物姿だった。
以前、姉貴の
普段は肩甲骨の底くらいまで伸びている長い金髪はかんざしで纏められており、赤い花の髪飾りをつけていた。
しかし、なぜ着ているのかは疑問だったりする。
まあ、今日は確かにイベント事ではあるんだけどな?
「…今食べている料理を作った理由と、おそらく同じかと思われますが」
小夜が、俺が食べている料理…まあ、ちらし寿司なんだが、それを指で差して言った。
今日は三月三日であるので、ひな祭りのイメージがあるちらし寿司にしたんだが…ふむ。
「それだとしたら、ひな祭りで晴れ着とは随分イベント事でテンションが高めなことで」
皮肉を言ってやったつもりだが、小夜は「ふふ」と笑ってやがる。
まあ、皮肉をあしらわれるのは最近ではわりといつもの事なので、俺は気にせずちらし寿司を口に入れる。
少しだけ寒いこの立春の時期に、ホクホクの温かい料理を食うのは、個人的には結構好きだったりする。
「正月、ひな祭り、夏祭りなどでしか着物を着る機会はありませんので、少し張り切っちゃいました」
「そうかよ。けど、その着物は凛に貰ったのか?」
今は実家で惰眠を貪ってるだろう凛だが、実はEP31の時に小夜に晴れ着を貸していた。
「凛さんが押し付けて来ましたので…さすがに、いずれ返す予定ではありますが」
「なるほどな」
なんやかんやであいつもイベント事とかには騒がしいタイプだからなあ…
小さい頃もひな祭りやらハロウィンやらでかなり巻き込まれたというのはいい思い出である。
「…そういや、小夜って兄弟姉妹はいるのか?」
姉貴という話題で少し気になったので適当に聞いてみる。
今頃姉貴はくしゃみでもしてそうだな。
なんか今スマホが振動したし。
「私はいませんね。そういう蓮さんは凛さん以外にはいるんですか?」
「一応他に妹だけはいるな」
あいつも元気でやっとんのかね〜。
一年弱
「そうなんですね。兄弟姉妹がいるって羨ましいです」
「他はどうか知らんが、今のところ俺はいて良かったと思ってるな」
姉貴には色々世話になってるし、姉弟仲は良好な自信はある。
ちらし寿司を食い終えた俺はさっき震えたスマホを取り出す。
振動の正体は案の定チャットアプリの通知だったので、それを開く。
姉貴からのメッセージだ。
:ふたりん:
【なんかあたしの話してない?それと、3月下旬くらいにそっち行くと思うけど、我らの妹も連れてきていい?】
いやエスパーかよ、色々。
でもまあ…丁度いいかもな。
俺は早速承諾の返信を送る。
「なんか噂したら今月の下旬に来るらしいぞ」
「本当ですか?楽しみですね」
久しぶりに
俺は「そうだな」と素っ気なく返し、タッパーに入れたちらし寿司を取ってきて渡した後、部屋に戻った。
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