EP83.妹と姫の両親と
あれから数日が経ち、多分
俺こと
なのだが…
「なんで小夜もいるんだ?」
今日は別にデートに行こうとしている訳では無いし、もう夜になりそうという時間であるので、隣にいるのは結構違和感がある。
「先日に言ったじゃありませんか。私の両親も来るんですよ。瑠愛さんと日付、時間帯が被ったみたいですね」
「すげえ偶然だなあ…」
小夜の両親か〜…母親である
そんなことを思っていると、駅舎から人がぞろぞろと出てきた。
仕事の帰りの人が多いからなのか、かなり大勢である。
「…あれ?あれって瑠愛さんでは?」
「ん?…あ、ほんとだ」
そんな中で、中学生にしては背が高く、メガネを掛けているおさげの少女がキョロキョロと見回していた。
少ししてこちらに来たかと思うと、その少女は額に手を当ててなにかつぶやく。
「…兄さんの匂いがする…」
「犬か!?」
「あ、兄さん」
匂いって何だ…気配じゃないのか?
そんなこんなで、瑠愛と無事合流することが出来た。
「よお瑠愛、久しぶりだな」
そう言って俺はトコトコと駆け寄ってきた瑠愛の頭を撫でる。
瑠愛は俺に撫でられて心地よさそうにしている…可愛い。
「相変わらずですね…」
なんか小夜に呆れられているが知ったことじゃない、妹は最高なのである。
一ヶ月という出会えなかった期間は長いんだ、ふん。
「…あれ?小夜さん以外にも金髪の人がいる」
「ん?」「はい?」
瑠愛が俺の後ろを見てそう言ったので、俺と小夜は同時に振り向いた。
…あ、いたわ…かなり背が高くてすごいスタイルしているから、髪型も相まってすげえ目立ってる。
「あら?小夜〜!」
小朝さんの登場である…いやあ、目立つなあの人。
小朝さんは小夜の方にかけよったかと思うと、小夜に抱きついた。
「むぐっ!?む…お、お母さん!?何するんですか!?」
「久しぶりねえ小夜〜、寂しかったわよ〜?」
「たった一ヶ月ぶりですよね!?」
仲睦まじい?母娘の光景に、俺は唖然としていた。
やべえ、羨ましい…小夜を抱くのすげえうらや…げふっ、げふっ。
「小朝さん、小夜が困っているじゃないか。離してあげなさい」
そんな低い声が届いたと思うと、小朝さんは「は〜い」と渋々小夜を離した。
その声を辿ると…男性にしてはかなり身長の低く、落ち着いた雰囲気のおじさんがいた。
服装がなんともダンディーで、溢れるギャップに言葉を失ってしまう。
「お父さん。お久しぶりです」
「久しぶりだね小夜。会いたかったよ」
「私もです」
「ねぇ〜!?私となんか反応違わなすぎない!?」
「お母さんは少し静かにしてください」
「むぅ〜!」
いや子供か。
小夜と小夜の父?を前に、小朝さんが可哀想になってくる雰囲気である…
「小夜、この人がお前の父親か?」
「あ、はい」
「…小夜、誰と話しているんだい?」
小夜の父?が怪訝な顔で小夜に問いかける。
小夜はアイコンタクトで俺に話しかけてきたので、やはり俺は叫ぶのだった…
「どうも!」
「うわっ!」
「あら?あらあら!?江波戸くんじゃない!久しぶりねえ〜」
やべ、面倒くさい方に捕まっちまったか。
小朝さんは俺を見て「あらあらあらあら!!」と騒がしい。
「小夜と一緒に迎えに来てくれたのお〜!?いやあできた彼氏さんねえ〜」
「いや違いますし、付き合ってないですよ?俺は妹を迎えに来ただけです」
瑠愛の腰に手を当てるとここはさすがの瑠愛、冷静にぺこりと頭を下げる。
小朝さんは「照れちゃって〜!」って言ってくるけど、どうすればいいと思う?
「小夜、父親に手綱握らせるんじゃなかったか?」
「お父さん、お願いします」
「状況は把握出来ないけど、小朝さん。とりあえず落ち着こうか」
そう言われた小朝さんは、一瞬で静かになった…すげえ、素直にすげえ。
そして小夜の父?は俺に向き直り、ご丁寧に頭を下げてきた。
「小夜の父、
「あ、江波戸蓮です。こちらこそお世話になっております」
小朝さんと違ってすごく話しやすそうな人で助かった…
「では蓮さん、今日はどうしますか?」
「ん?」
「夕飯です」
なあ小夜、それを正悟さんや小朝さんの前で言うの危険だと思わないか?
特に小朝さん、この人には絶対に言っちゃダメだろ?
「…どういう事だい江波戸くん?何やら小夜が本当にお世話になっていそうな雰囲気だけど」
「江波戸くん!?まさか…小夜と半同棲しちゃってるのかしら!?」
いや半同棲ではないけどよ、『夕飯です』だけで色々察しすぎじゃない?
なんか瑠愛も目を丸くして俺を見てるんだけど…とりあえず誤魔化すために頭を撫でておいた。
「まあ、そんな事はさておきですね。俺が振る舞いますよ」
「ありがたいけど、後で色々聞かせてもらっていいかい?」
あ、やっぱ逃げられない?
色々悟った俺は、引き攣った笑顔で頷かされたのであった…
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