EP80.遊園地で姫とお昼のひととき

 こちら江波戸蓮えばとれん!お化け屋敷で腰を抜かしていた白河小夜しらかわさよさんの救助成功しました!

 …じゃなくて、とりあえず俺と小夜はお化け屋敷を途中退場し、近くのベンチで休憩をとる事にした。


 ベンチに座るや否や、小夜が眉を下げた。


「すみません…ご迷惑をお掛けしました…」

「いや、悪いのはこっちだ…無理やりお化け屋敷にも入れちまったし、あの体勢で運んじまったし…」


 そう、今回の事件で悪いのは10割方俺なのだから、小夜が謝る必要は全くなかった。

 デートのはずなのにやらかしてしまった…後悔してもしきれないとはまさにこの事である。


「あーくそっ…まじですまん…」

「あの、そんなに落ち込まないでください。その…色々嬉しかったですし…」

「ん?何がだ?」

「……蓮さんのばか」

「え」


 慰められたと思ったら急に罵倒されたんだが…

 急に不機嫌になってしまった小夜のご機嫌を取ろうにも上手くいかず、話しかける度にそっぽを向かれてしまう。

 ええ…俺なんかしたっけ…?


「…とりあえず、時間が時間だし、お昼にしないか?」


 俺が腕時計を見て小夜に問いかけると、小夜は黙ったまま頷いた。

 じゃあどこかに食べに行くかってなるが、小夜の腰がまだ心配だ。


「小夜、腰はもう大丈夫なのか?」

「……あと少しダメそうです。蓮さんがお店に連れて行ってくれませんか?」

「…えなに、また運べばいいのか?」

「そ、それはさすがに恥ずかしいというか…」


 ジョークを言うと、小夜がそれにつられて顔を赤らめた。

 俺はそんな小夜を見て笑うと、小夜は頬をめいいっぱいに含ませた。


「嵌めましたね…もういいです、蓮さんなんて知りません」

「すみませんお嬢様…えーっと、その、お手をどうぞ…?」


 あと少し押せば行けると判断したが、運ぶ以外の方法だと…ってなる。

 だが、今の小夜は先程と違い引っ張るとつれていけそうなので、手を繋げば行けそうだ。


 しかし、実はこれまで俺は小夜と手を繋いだことなんて一回もないので、これで正解なのか分からずぎこちなくなってしまう。

 そんな俺の手を、小夜は微笑んでからとった。


「…はい。よろしくお願いします」


 その微笑みはとても綺麗で、思わず見とれてしまった。

 しかしそのまま見とれたままでいれるわけがなく、しっかりと小夜の手を握って歩き出した。


 初めて握る小夜の手は、細くて柔らかくて、とても気持ちのいいものだった。

 ラブコメでは小さい…というのもあったりするが、小夜は身長が160を超えていて平均より高く、そのお陰で手も大きい。

 逆に俺の手が小さいのもあるが、とても握りやすい大きさにおさまっている。


 俺はその手を優しく引っ張り、予め調べていたレストランに向かう。







 レストランについて、俺らはカウンターでメニューを見ていた。


「何がいい?」

「…さすがに今回のは折半用からお願いします」


 俺の聞き方的に奢ると分かったのか、小夜はジト目になって俺に指摘してきた。

 俺は苦笑し、自分の財布をしまう。


「バレちまったか」

「もう。蓮さんはそうやってすぐ奢ろうとする…いつか騙されますよ?」

「大丈夫だ。小夜以外には逆に奢らせてやる」

「それはそれでどうなんですか…?」


 小夜が呆れ気味に指摘してくる。

 ''小夜以外には''と言葉を仕込んだんだが気づいて貰えなかったようだ、少し悲しい。


「それで、結局どれにするよ?」

「え?あっはい。そうですね…ピザ、というのを食べてみたいんですが、いいですか?」

「お、珍しいな」

「少し興味がありましたので…んー、じゃあこのマルゲリータというのでお願いします」

「かしこまりました!」


 それから二人でそれぞれジュースを注文して、折半用の財布からお金を払う。

 また叫ぶのは嫌なので今回は小夜に頼んで注文してしもらった。

 少し思うんだがこれ小夜の独り言とか思われてないよな?







「蓮さん、あ〜ん」

「なんかこれも日常化してきてないか…?」


 ピザとジュースをテーブルに置いた途端、小夜が早速ピザの一切れを俺に差し出してきたので、思わず苦笑してしまう。

 最近、なにかとシェアやら[あ〜ん]やらが結構増えて、これがもう日常化してきているのに困惑を隠せない。

 これ結構恥ずかしいやつだよな…だよな?


「いいですから、あ〜ん」

「へいへい。ハムっ」


 遠慮する必要もなくなってきたと思うので、動揺することも無く差し出されたピザを頬張る。

 小夜がそのままピザを俺の口に入れてくるので、俺もハムハムとピザを飲み込んでいく。

 今回は流石にいつぞや(EP58)のやらかしはしない。


「それにしても、ジェットコースター面白かったですね〜」

「開口一番それか。大好きすぎだろ」


 伊達に7周してねえなって感じだ。

 小夜は嬉しそうに何度も頷く。


「やっぱり遊園地はジェットコースターだと思うんです!」

「どっかで聞いたことあんな〜」


 姉貴もそんなこと言って遊園地に来た時すげえジェットコースターに乗らされた思い出がある。

 というか、姉貴はその意欲を動物園や水族館に向けて欲しい…おかげで小夜とのお出かけ以外で行ったことがない。


 おっと、姉貴の話はもういいか。


「まあ、ジェットコースターも浮遊感があって楽しかったが、あのライドも迫力があったよな」

「でしたね!あれが目の前に来た時は心臓止まるかと思いましたけど…」

「あー、あれな。確かに怖かったよな」

「はい…」


 そんな感じでピザを食べさせあいながらも話は盛り上がり、時間があっという間にすぎて言った。

 しかし、お昼食った後にジェットコースターを3周しようと言われた時は、さすがになにか悟りを開きそうになった俺であった…

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