EP91.二人きりで姫との勉強会
「大変反省しております…」
俺、
なんか…頬を揉むの結構癖になったけどどこか危ないラインな気がして…神に全身全霊謝罪している。
別に神なんている訳がないんだけど。
<ドン!ドン!>と結構激しくうちつけていると、急に部屋の扉が開いた。
「…何してるんですか?」
ドアを開けるなり俺を見て、頬を引きつらせている…やめろ、そんな冷たい目で見るな!
「…インターホン押してから入ってこいよ…」
「鳴らしましたけど…」
俺ヘドバンするのに必死でインターホンの音聞き逃しるとか、相当やってたんだなあ…
まあいいや、俺は立ち上がって小夜を招き入れる。
ダイニングテーブルに敷いているシートを畳み、何故かあるりんごジュースと微糖コーヒーを置く。
「んじゃ、やるか」
「そうですね。この休日、ほとんど遊んでましたので巻き返しておかないと」
あ、言い忘れていたな。
今日やるのは勉強会だ…小夜が言う通り、GW《ゴールデンウィーク》は遊んでばっかで復習を疎かにしていた部分がある。
妹達が帰って今、最終日ではあるが夕飯まで小夜と勉強する事になった。
…あのムニムニはもう思い出さないでおこう。
「…休み明け中間テストですのに、なぜ私たちこんなに遊んでいたんでしょうか?」
「しらん…」
いや、実際言うと小夜とのいる時間が幸せすぎるから俺は抗えなかっただけなんだがな…?
それ考えるとなんで小夜はやめなかったんだろうな…別に小夜のせいにするつもりは無いが。
「蓮さんと遊ぶのが楽しかったからですかねえ…」
「お前そろそろ心読むのやめてくれないか…?」
最近心読まれる頻度本当に多すぎて怖いよ…好きって気持ちだけはバレないようにしねえと…
てか、姉貴より読心術極めてんじゃね?小夜。
筆記用具と教材の準備が終わったので、俺たちはペンを走らせた。
…まあ、参考書読むだけで2位には行けるだろうが小夜には勝てねえからなあ…
読む方が効率、環境にいいとは思っていながらも…やっぱり限界があるってもんだよ。
学力テストで理科系が下がってたしこれ中心にやるか…数学は何故か満点だったのに。
「………」
「………」
なんだろ、地味に慣れないなこの空気。
小夜と勉強会するのって初めてだからか…?てか、二人きりで勉強会ってなんかアレだな。
やべえ、全然集中できねえ。
「…集中できませんね」
「また心読んだか?」
「いえ?…あ、ということは蓮さんもです?」
英語系をやってる小夜が問題集から視線を逸らさずに言ってくるが…なんとなくノーコメント。
「ふふ」と小夜から笑い声が聞こえたが無視だ無視、気にしてたら顔が赤くなる。
「二人だけで勉強会ってなんか緊張しますね」
悪戯っぽく言う小夜だが、その声はいつものワントーン高いことに気づいた俺だった。
なんかトーンでもわかるようになってきたのか、俺。
…まあ、そんな事はどうでもいい。
俺は無視を決め込んで、熱い頭をフル回転し続けたのだった。
…なんか途中からすげえ集中できたわ。
なんだったんだあの空気、なんだったんだあの煩悩。
そう言いたいほどである。
「………」
ひと休憩しようと微糖コーヒーを啜りながら、同じくりんごジュースを飲んでいる小夜を見るが…
なんか小夜、怒ってねえか?
ジト目で俺を睨んでくるし、心做しかジュースを飲んでいるはずなのに頬が膨らんでいる。
…揉みたくなった衝動を必死に抑える。
「…酷いです」
「何が?」
心当たりが全くないんだけど。
「…あれ、私も恥ずかしかったんですよ?」
あーさっきの発言か?…いや、恥ずかしいなら言うなよ。
思い出して頬が赤くなってるぞ小夜。
「…それなのに、反応もなしで無視なんて蓮さんは酷いです」
「……」
視線を逸らしながらコーヒーを啜る。
…いや、仕方なくね?だって…なあ?
可愛らしく怒る小夜を横目に、俺は湧き出てくる煩悩を必死に抑えていた。
…なんかさあ、小夜の顔が最近可愛く見えすぎてやばいのよ…我が愛しき妹の1.7倍くらい。
自分でもシスコン(妹限定)を自負してるのに、この変わり様…恋?ってすごいんだな。
初恋だからこれが恋なのか微かに疑問な点はあるけど…さすがに恋だと信じたい。
「……」
「許してくれよ…な?俺も集中したかったんだ」
…まあ、別に中間ギリギリって訳でもないから嘘にはなるんだけどさ。
「嘘ですね」
「ここで心読むの本当にやめてくれないか?」
なんかちょっとだけ警察にずっと見張られてる感覚に陥りそうになったぞ今。
「てかよ、読心術教えてくれよ」
「読心術も何もありませんよ。蓮さんは顔に出やすいだけなのです。嘘をつく時はやや右斜め上に視線を逸らします」
俺そんな嘘ついた覚えねえんだけど?
「(結構体に嘘をついていると思いますけどね…)」
「なんていった?」
「なんでもないです!」
急に顔を真っ赤にして慌てさせる小夜…本当に小夜の小声聞き取りずらいからなあ。
今度耳を良くする方法とか探してみるか、ないと思うけど。
「耳良くしちゃダメです?」
「なんでだ?」
「なんでもです」
もう心を読んでくるの突っ込まないようにするけどよ…耳は良いに越したことはないと思うけどな。
そう思いながらも、小夜がそう言うなら…と俺は再びペンを持った。
「(…別に蓮さんになら…)」
「え?」
「なんでも…」
…?…まあいいか。
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