EP92.おまけ テスト後の「魔」系
一週間後、GW《ゴールデンウィーク》明けの中間テストを終えて順位発表の日の話だ。
俺、
なんやかんやでこいつと一緒に来たのは今日で初めてだったりするんだよな。
「あ〜…下がっちまったか」
【一位:白河 小夜 497】
【二位:江波戸 蓮 495】
さすがにGW遊びすぎたみたいだな…
ま、それまでに積み上げて来たものが俺よりも多いかったのだろう。
ん?あぁ、センスとか才能とかそういうのに甘えるつもりは無いさ…そもそも、それがあっても実力は実力だ。
「…これで下がっているのか。君たちは相変わらず上を行くなあ…」
492点で三位の零がそんな事を言ってくるがな…お前も人のこと言えねえよな?
四位のやつ…誰かわからんが、こいつで482点だった。
四位との差を結構広げてるのだから人のことは言えるはずがねえ。
で、勿論一位になった小夜はかなり賞賛されていた。
「姫様これで何連続!?」
「もう数えるのを辞めるレベルだよね〜」
…学年末の一位が俺だったのを何故か忘れているようだ。
「魔王様も凄いよね〜!」
「白河さんのザ・ライバルって感じだよね黒神くん!これからも頑張って!」
「…ははっ、零も賞賛されてるし…やっぱ悲しくなるもんだよな、これ」
「影が薄いにしても、蓮は悪くないだろう。そう落ち込むな、君は頑張っている」
「おう…さんきゅ…」
なんやかんやで零もいい友だ…この後行われる席替えで離れる気しかしないけどな。
「兄ちゃんすげー!」
そんなことを思っていると、急に後ろからそんな声が聞こえてきた。
零と似た声だが、若干高い。
後ろを振り向くと、零の弟である
「来斗じゃないか。何故ここに?」
「俺テストの順位30位以内になれなくてさ〜?兄ちゃんは入ってるって言ってたから気になって見に来たら、三位だったからビックリしたよ!」
零と違って来斗は少し勉強が苦手らしい…
…いや、この口ぶりだと特待クラスには入ってるから苦手ではない…のか?
「僕よりも白河や蓮の方が凄いさ。ウチの学年はこの二人がトップ争いをしている」
「へ?…497!?白河さんって、確かあの金髪の綺麗な人だよね?」
覚えてたんだな…いや、流石にあの小夜の見た目だと覚えるか。
「まあな。ちなみに、蓮は隣にいるぞ?」
「蓮さん?たしか背の高くて中性顔の…いないんだけど?」
一応覚えといてくれたんだけど、ここで叫ぶのかよ勘弁してくれよ。
いやまあ叫んだけどよ…周りから大注目だぜ?悪い意味でな!
「!? …こんにちは」
「二回目なのにすげえ冷静だな来斗」
一瞬目を見開きながらも、すぐさま微笑んで頭を下げてくる来斗。
「初回のを思い出しまして。ご無沙汰しております」
一回で順応したとはとてつもないやつだ…
で、一応後輩だから咎めはしないけど、敬語ってなんかむず痒いな。
この人生、小夜にしかほとんど敬語使われてなかったからな〜…
「蓮さんって勉強できたんですね」
「逆に出来ないと思われてたの?俺」
「そういう訳では無いんですけど、まさか二位だとは驚きました」
「ちなみに、蓮は学年末一位だったぞ」
「え!?凄いですね!」
なんで兄貴が言った瞬間、そんなはしゃぎはじめるだ…?
俺嫌われてんのかな…
…まあ気にしたら負けか。
で、来斗が来たことによって視線がすげえすげえ。
こいつらって美男兄弟だから、特に女子からの視線が熱い。
「…あら?少し騒がしいと思ったら、黒神兄弟じゃないの」
聞いているだけで寒くなってくる鋭さを感じる声だ、久しぶりに聞いたな。
振り向くと、腰まで伸びた髪を靡かせながら「魔女」様、
「雪野先輩、お久しぶりです」
「…なんだ来斗。雪野と知り合いなのか?」
おい、笑ってはいるが少しだけ頬が引き攣ってるぞ、零。
紫苑の事そんな苦手なのかよ。
「文芸部の見学に入学直後来てくれてね。
そういう行事がないし、部員少ないしで助かったけど、見学に来るのが他の子より早すぎて覚えちゃったわ」
代わりに紫苑が答えたが…来斗、お前って文芸部に興味があるのか。
ちなみに、紫苑が言った通り部活に活発でない我が校は新入生見学行事はない。
一応掲示板に宣伝のチラシを貼ることは可能だが、それくらいだ。
「あの時はお世話になりました。また来て、いずれか入部するかもです」
「ええ、テストも終わったことだし今はいつでも歓迎するわ。私は風紀委員で居ない時がたまにあるけどね」
「了解です」
なんだか紫苑の声も柔らかいし、来斗の事は少し気に入っているらしいな。
紫苑の印象的にそこにツッコんだらなんとなく殺されそうだけどな…
…そもそも空気的に俺気づかれてないけど…さっき叫んだよな?俺。
「そういえばだけど、江波戸蓮も少し点数を下げたわね…調子が悪かったのかしら」
なんか丁度話題に上がったぞ、おい。
てかなんでフルネームで呼ぶんだ?
「蓮、腕だせ」
「ん?ほい」
零からそんなこと言われたので、素直に腕を出したらガシッと掴まれる。
は?…と思ったのもつかの間、二本の指が俺の前腕を襲った。
「いってぇ!!?」
急にしっぺされた。
なんでデコピンの次はしっぺなんだよ。
「あら、江波戸蓮じゃない。こんにちは」
「…うぃっす」
痛いのを我慢して挨拶を返すが、その瞬間紫苑の眉間にシワが出来た。
…え、なに…挨拶だけしかしてないんだが…
「…ちゃんと挨拶はして欲しかったけど、まあいいわ。
それよりあなた、少し成績下がったみたいじゃない。何かあったのかしら?」
「デリカシーの欠けらも無いことをきくなあ…こんちわ。
まあ、たしかに落ちたな。少しGW遊びすぎちゃってな」
「そう?ならよかったわ。病気で勉強できなかったのか思ってたから。次から巻き返せればいいわね」
なぜに風邪?
それと、親切に心配してくれてんのか、上から目線で言ってんのかよくわからんな。
…まあ、紫苑が安心したような顔になってるし、恐らく前者だろう。
「それじゃ、私はそろそろ行くわね」
「あっ、たしかに時間がありませんね。俺も失礼します」
そう言って二人とも帰ったので、俺と零も帰ることにした。
帰った後、何故か小夜が頬を膨らませてこちらを睨んでいた気がするが…どうしたんだ?あいつ。
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