EP62.休日は姫と初?デートを
早くも二日が経ち、土曜になった。
進学校に通っているからには勉強第一なのは分かっているが、やはり娯楽や休養は必要なものだ。
そんな俺、
今日は、
先日に小夜が言っていたことを思い出す。
小夜は、今日のことを『デート』だと言っていた。
まあ?俺は?ただのお出かけと思ってるし?別に意識することなんて?ん?ないからな?
…もちろん嘘だ。
ちゃんと初?デートだと思って緊張しているし、小夜が来たら絶対に意識すると思う…
バッチリ集合時間二時間前の八時半に集合場所である駅前の噴水前に到着し、俺は手鏡などを使って身だしなみを整えていた。
俺の服装はこうだ。
淡い青のドレスシャツのボタンを一番上までキッチリとめて、その上からカマーベストを着ている。
ダークグレーのスラックスを履いてベルトを巻き、全体的に紳士を彷彿とさせる服装だ。
それに初?デートだし、キッチリ着こなしてこないと失礼にあたる。
もちろんワックスで髪型はセットしているし、眼鏡も綺麗に拭いて装着している。
目つきが悪いせいで冷たい雰囲気になるかもしれないが、気遣いは積極的にするつもりだ。
手鏡で再度髪を整えていると、急に周りが騒がしくなってきた。
朝から騒がしいな…とかそう思っていたら後ろから声をかけられた。
「やはり早いですね、蓮さんは」
まだ俺が来て数分、つまり九時も過ぎていないのに小夜の声が聞こえたのだから、俺は驚いて振り返る。
そして小夜の姿を視界に捉えた瞬間、俺は顔を背けた。
「蓮さん?」
「あ〜いや…服装を見たら眩しくてな。似合ってるよ」
小夜の服装はこれまた珍しいものだ。
トップスは淡いピンクの袖ギャザーカットソー。
襟ぐりがかなり広く、ピンクのバッグがかけられている晒された生腕と、露出度がいつもより高く最初は目のやり場に困りそうだが、ゆったりとした印象を感じ、とても似合う。
ボトムスはデニムのスキニーパンツ、足のラインが多少わかり…ってトップスもボトムスも目のやり場に困るんだが!?
…こほん。
で、足は白のソックスでピンクのヒールを履き、下半身は大人びていて清楚な雰囲気を感じる。
視線を頭部に戻すと、入ってくるのは髪型。
長い金髪を一つにまとめて肩にかけ、さらに赤色のベレー帽を被り、恐らく俺がホワイトデーにプレゼントした伊達眼鏡を掛けている。
その頭部からは知的な雰囲気を感じ、トップスとボトムスを合わせて全体を見ると、知的とおっとり感を同時に感じさせる印象だ。
私服はいつも水色を基調としている小夜だが、今回はピンクを基調とした服装で、それがまた新鮮である。
そんな見たことの無いいくつかの新たな一面が眩しく、俺は顔を逸らした…というわけだ。
それにな?ネックレスとブレスレットもつけてるから、俺のプレゼントした装飾具をフル装備って訳よ…わかる?この気持ち。
顔が熱くなっちゃうね。
服装を褒めると、小夜は顔を赤らめた。
ああ死ぬわ…今気づいたけどメイクもしてるからいつもよりぐんと可愛くみえるわ…
「あの、ありがとうございます…蓮さんも、その、似合ってますよ?」
「…………」
「蓮さん?」
「あ、すまん。さんきゅ」
ちょっとばかし嬉しくてフリーズしてただけだ、心配は無用。
にしても、やっぱ小夜は目立つなあ…さっきも言った通り周りは騒がしいし、視線もこちらに固まってる。
いやまあ俺は多分認知されていないから、小夜にだけなんだろうな…いつもより気合いが入っている服装みたいだし、ナンパとかに気をつけねば。
それはそうとて…
「今日は早いんだな。まだ9時も経ってないのに」
「それはこちらのセリフです。以前水族館へ出かけた時も二時間ほど早く来たとの事でしたのでかなり早めに家を出ましたが…やはりもう居たのですね」
「あー…まあ、癖でな。学校は例外として、外出とかの約束事は二時間前行動が癖になって…」
「どんな癖ですか…」
小夜が呆れた顔で言うが俺は苦笑するしかない。
そんな俺の顔を見て「ふふ」と仕方ないなあと言ってそうな表情で笑う。
それがまたあまり見た事もない小夜なので俺は見入ってしまう。
「…蓮さん?」
「え?ああ、すまん。上映まであと4時間くらいあるし、昼飯にもさすがに早過ぎるが…何をするよ?」
「そうですね…折角ですし、少し周りましょうか。気になるものがあれば購入、という形で」
「ウィンドウショッピングってやつか。わかった」
急遽予定が決まり、さあ行こうと足を進めるが、ここである事実に気づく。
「…なあ小夜」
「はい?」
「ショッピングモールって、たしか開店時間9時だよな?」
「あっ…」
…なんとも締まらない初?デートの開幕である。
…さっき思ったんだけど、何回小夜の新たな一面を見ることになるんだろうな。
少し気まずくなってしまったが、俺の心の中は楽しみなことでいっぱいであった。
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