EP61.休日に姫とお約束
次の日だ、今日も俺こと
これでもまだ付き合ってないんだから、自分でも驚きだったりはしている。
が、小夜自身から恋愛的好意を感じるかと言われると、どこかまだ信じきれていないので事実にするつもりは無い。
夕飯後、ソファに座って俺は読書に励んでいた。
隣で戦国時代モノのドラマと中々渋いものを見ていた小夜が、テレビから視線を逸らさずに口を開く。
「蓮さん」
「ん?なんだ?」
俺も視線を本から逸らさずに用件を促す。
ちなみに平然を装っているが、まだまだ2日目なので心臓の音はうるさい。
「明後日の土曜日。テストも終わりましたしどこかに出かけませんか?」
ふむ、お出かけか…クリスマスに行った水族館ぶりだな。
「特に予定は無いからいいぞ。例えばどこに?」
「駅前のショッピングモールにでもいかがでしょう?」
「ショッピングモールか。いいな」
「そこで映画を見たいです」
いや水族館といいほぼデートじゃねえかよ。
…あれはデートにカウントしていいのか正直微妙だが…
まあ、あれから月日も流れてご存知の通り俺の気持ちは変わっている。
無論、この案件は願ってもいないことだ。
「いいぞ。けど、観るにしても何がいい?」
「恋愛もので興味があるものがありまして…あった。これです」
スマホでその見たい映画とやらを検索して俺に見せてきた。
いや恋愛ものて、本当にデートみたいだなおい。
あと顔近いわ!今はお互いスマホに視線いってるけど横向いたら鼻と鼻がぶつかるぞ!?
それになんかいい匂いもするし!肩思いっきり当たってるし!!
…しかし、大混乱している俺の内心は届くはずもなく、小夜は気にせずスマホを指さすだけだった。
全く、俺の気も知らないで…
「あらすじなどはこんな感じになってますね」
そう言いながらゆっくりとスマホをスクロールする小夜。
俺は「ふむ…」と顎に手を当てて呟くが、やはり近いがために内容は全く頭に入ってこない。
「いいんじゃないか?少なくとも、俺は興味があるな」
真っ赤な嘘だ。
恋愛系は好きではあるが、二人で行けるなら行きたいと無意識に思っている俺の
だから、興味があるかときかれると、
いやな?
ご褒美にこれくらい許しておくれよおつかれ理性。
で、俺が賛成すると小夜が「本当ですか!?」とこちらに振り向いた。
その顔はとんでもなく輝いている。
まずツッコミたいのは今小夜の鼻が俺の頬にカスったよな!?
それを無視してその顔する?え?
…ふう…おつかれ、理性。
「おう」
「それでは、今から予約しますね!時間は昼すぎでいいですか?」
「いいぞ」
さっきから相槌しか打ててねえな、俺。
だって眩しいんだよ、小夜の笑顔…これでもう俺の中の悪魔消え去ってるぞ?
「わかりました。席はどこ辺りにします?」
それを聞いて一瞬カップルシートが思い浮かんだが、直ぐに頭を振って没。
すまん、思いっきり悪魔いたわ。
「無難に少し遠目の真ん中で良くないか?」
「それもいいですけど…少し奮発しません?」
「うん?」
どういう意味がわからず、俺は首を傾げる。
すると小夜は段々と頬が赤らめていき、もじもじと答えを言い淀んでいる様子だ。
…すまん、それもやめてくれないか?
「あの…プレミアムシートをですね…」
俺らが行くショッピングモールの映画でのプレミアムシートとは!普通席より少し上あたりにあるソファ席の事だ。
高めに設置されているから観やすいし、座り心地も良しなのに普通席一人半くらいの値段しかしない。
そして、一人でも利用できるが二人でも座れることから、さっき俺が思い浮かんでいたカップルシートという通称があ…
…る…?え……
…………………
はあああああああああああああ!?!?
「は!?え、おまっ!!」
いやこれ前も同じみたいなのやったな俺!
あ、EP59をチェックな。
じゃなくて!いやだって仕方なくね?小夜最近色々おかしいんだよ?俺はもうどうすればいいんだ!?
「あのっ…い、嫌ならいいんですけど!!」
小夜もあたふたとしている。
その言葉を聞いて俺が吐いたのは、俺としてもとんでもないセリフだった。
「嫌じゃない!わかった!」
「………」
「………」
あの後、二人揃ってあたふたとしながらも、土曜のスケジュールを立て終え、今やっと冷静になったところだ。
あーもう!どこかに穴がないか!?そこに入らせてくれ!!と叫びたい気持ちである。
そして、気まずい…
俺も小夜もどっちも顔を逸らしていて、黙りこくっている状態だ。
俺の顔は熱く真っ赤で、それは恐らく小夜も同じだ。
「…あー、その。時間だから俺、そろそろ帰るな…」
「は、はい…」
沈黙に耐えきれなくて話題を探そうとしたが、さすがに帰る時間なので俺は一番簡単な方法に逃げた。
ここで何か話していればカッコよかったんだろうが、俺にそういうメンタルは生憎と持ち合わせていない。
玄関に向かうと、昨日のようにやはり小夜がついてきて送ってくれる。
場面は違うが、なんだかこれも新婚生活みたいだなと煩悩が脳裏に過ぎる。
直ぐに頭を振って、邪な考えを振り払う。
「じゃあ、また明日な…」
「ええ…また…」
そうしてドアを空け、部屋を出た刹那…
「今回はデートですから…」
と聞こえ、ドアを締め切った俺は自分の頬を殴り、頭を抱えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます