EP63.デートで姫と服屋に
俺こと
あれから十数分後に開店されたので大して時間の損失はないものの、やはり締まらないスタートで俺としては結構気にしていたりする。
『気にしないでください。早めに行動できる人は魅力的だと思いますよ』
と小夜は慰めてくれたが…やはりプライドは難儀なものらしい、くそっ…
が、『魅力的』だと言われたことについてはその時咄嗟に顔を逸らしたのは言うまでもないけどな…
というわけで、現在のんびりとウィンドウショッピング真っ最中である。
目に映る物を指して好きな子と話題を繰り広げるのは思ったより楽しいものだった。
ウィンドウショッピングのどこにいい所があるのかと昔までは思っていたが、今やその気持ちはわからなくもない。
「蓮さん。あの店に入ってもいいですか?」
そう言って小夜が指した店は服屋だった。
背の高さ的にしま〇〇しか入ったことの無い俺はあまり見覚えがない店ではあるから、評判とかそういうのは全く分からない。
が、一目見て感想を言うならば、壁や天井は白一色と清潔で看板も青と誠実な印象を放ち、悪くは無いと思った。
「いいぞ。なんか買うのか?」
「気になるものがあれば。それとお願いがあるんですが、良いのがあったら
「ん?」
すまん、ちょっと今ので嫌な予感がした。
しかし、小夜は表情を崩さずに続ける。
「それでですね、蓮さんに感想を言ってもらいたいのです」
「は?」
あの、すまんちょっとまってくれ。
好きな人の色々な服装を一気に見れる…確かにそれは魅力的だし、感想を言うくらいなら容易い。
しかしな、試着ってあれだぞ?微かな衣擦れの音を聞くことにもなるんだぞ?
それを聞いたら俺、絶対耐えられないんだが…
「ダメ、ですか?」
あーもうやめろ!俯いて上目遣いで見てくんな!
それされたら俺の選択肢が一つしかなくなっちゃうんだよ!
「わかったよ…」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
承諾した途端にこの輝く表情。
はあ…完全にこいつに弱くなってんなあ、俺。
店内に入り、小夜が服を選び始めた。
俺も今後の服装のパターンを増やすため、小夜が選んでいる合間に少し遠くにあるメンズの服装を目を凝らして見る。
まあ、サイズがないけどこれからの参考程度に…な?
「蓮さん」
「ん?」
「これ、どっちの方が似合うと思います?」
見ると、小夜は二着のスカートを持っていた。
…なんでスカートなんだ…?…まあいいか。
持っているスカートの片方は、翠色のコルセットスカートだ。
…ちょっとまってくれ、えぇっと…コルセット…コルセット………………
いやなんでコルセットスカートなんだ!?
まあ、たしかにロングの部類で露出が少ないように見えるけどな?コルセットだから全て台無しだわ!
俺はコルセットスカートを見て平然とした顔を装っているが、内心は大混乱状態真っ只中である。
いやまて、もう片方をまだ見てないだろ…慌てるのはまだ早いはずだ。
もう片方を見たら、フリフリしたレースがあしらわれた黒のフィッシュテールスカート。
小夜の体と頭の中で組み合わせるととギリギリ膝上くらいの丈で、透明感のある黒のレースが色気を増させるのが想像出来る…
選びにくいわ!!
え、何?小夜は俺が胸派か脚派か知りたいの?
そんな現実逃避をしたくなるほど選択するのには抵抗があった。
「……」
「蓮さん?」
「正直に言っていいか?」
「? はい。いいですよ」
小夜はキョトンとした顔で首を傾げるばかり。
くっ…俺が悶絶したくなってるのを知らないで…
「二つとも、いつも何かと明るい色のコーデをする小夜には新鮮だし、大人っぽさを強調させて小夜の魅力を引き立てるからとても良いと思う」
「あ、ありがとうございます…」
「けど、さすがに色々あれだからすげえ選びずらい」
「え?」
俺の言葉が方向転換した事によって、小夜はまたもやキョトンとした顔になる。
そして自分の持っているスカートを見比べて、俺の言いたいことがわかったのか徐々に顔が真っ赤になっていく。
最終的にはゆでだこのような赤さになっていた。
「あのっ…その…すみません…」
「もう勘弁してくれよ…どっちも似合ってるけどな…」
「ありがとうございます…とりあえず、試着してきます」
「は?」
え?今の会話の流れでなぜそうなる?
小夜はと言うと、顔は真っ赤なままだが口を尖らせていた。
そんな顔も可愛いな、おい。
「
その言葉を聞いて俺は一瞬フリーズした。
…え?それってどういう…
そう聞こうとしたが、小夜はスカートを抱えて駆け足で試着室に向かっていった。
「ちょ!小夜!」
俺は慌てて小夜を追いかけた。
小夜は試着室の前で待っていた。
もう顔はいつもの色に戻っているので、少し冷静になったらしい。
そんな小夜がニヤけて俺に言ってくる。
「今から着替えますが、覗かないでくださいね?」
その言葉に思わず体が跳ねそうになる。
しかし、心臓はうるさくはあるものの小夜が落ち着いているので、俺も平然を装った。
「覗かねーよ」
ぶっきらぼうな雰囲気を意識して返すと、「そうですか」と何故か小夜は頬を膨らまし、ぷいっとそっぽを向いてカーテンを閉めた。
え?何?今の反応…
俺は疑問に思って首を傾げる。
答えがわからなかったのでとりあえず近くに設置されてたベンチに腰掛けて、小夜を待つことにする。
どこかで聞いた話、男はこの待つ時間というのが苦手らしいが、伊達に妹との関係を約十年耐えた俺ではない。
これくらい容易い御用だし、小夜のことなので尚更だ。
…が。
次第に微かな衣擦れする音が聞こえてくると、やはり頭の中に小夜の姿がでてくるわけで…
頭を降って煩悩退散を試みるが、音は続くので落ち着くのは無理だった。
え待って、これ2回も続けるの?…大丈夫かな、俺…
別の意味でこの待ち時間を苦手になりつつなってた頃、小夜が着替え終わったようでカーテンが開かれた。
出てきた小夜を見ると、まずはコルセットスカートを試着したようだ。
カットソーをスカートの中に入れている姿は、やはりコルセット故に目のやり場は困る。
しかし、かなり似合っていて目が釘付けになりそうだ…俺は小夜がでてきた瞬間に…
「似合ってる」
と答えていた。
これ無意識だから言った瞬間俺は顔を逸らした。
横目に小夜を見ると、小夜はまた顔を赤く染めていた。
「ありがとうございます…そんなに早く褒めれるものなんですね」
「お、おう。実際似合ってたからな」
正直に明かすと、小夜は限界になったようでカーテンを勢いよく閉めて、さっきの状況がまたでき上がる。
この後、フィッシュテールスカートを試着するためまた同じ事を繰り返した俺と小夜は、二人とも顔を真っ赤にして店を出た。
もちろんスカートは両方買い、今は俺の手を持っている。
これは小夜には絶対に言えないことだが、フィッシュテールの方が俺好みでかなり興奮してしまったのだった…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます