EP96.おかしい姫の反応

 俺だ…江波戸蓮えばとれんだ…


 次の日…昨日は決めた後だったのでやらなかったが…今日からは文化祭の準備を放課後でやっている…

 色々と気合を入れなければ行けないので…俺も率先して作業に取り組んでいた…


「…蓮、大丈夫か?」

「…んあ…?」


 …隣で一緒に飾りを作っている黒神零くろかみれいがそう言っているが…俺別に体調は…


「おーい蓮?作業止まってるしクマできてるし、顔色なんて最悪だぞ?」


 はっ、危ない危ない…あ〜眠い…


「蓮さん、コーヒーを買ってきたのでよろしければ飲んでください」

「ああ…悪い…」


 白河小夜しらかわさよがコーヒーを持ってきたので…素直にそれ受け取ってステイオンタブを引き抜いた…

 そしてコーヒーをぐびぐびと飲み…よし、復活してきた。


「さんきゅ小夜。復活したよ」

「ああいえ…なんだか少し寝不足みたいでしたので…」


 「…それではっ」と小夜は駆け足で自分の作業に戻っていった…ふむ、いつも以上に顔が赤い。

 俺はカフェイン摂取で一時的復活を遂げ、作業に集中する。


「……蓮」

「ん?」

「…白河と何かあったか?」


 ギクッ。


「…急にどうした?」

「いや…なんか白河の反応がな?いつも以上に恋する乙女だった気がするんだ」

「いや言い方よ…」


 もうちょっと別の言い方がある気がしなくもないんだが…それにいつも以上ってなんだ。

 …いやまあ、分からなくもないんだけどよ。

 今は自信を持てているし、あの反応を見たらさらに決意が固まった。


「そんで…なんかあったのか?」

「いやな……………」

「………」

「………後夜祭誘った」

「マジか!?」


 零は立ち上がるほどに驚き、目はかなり見開かれている。

 しかしな、声がでけえよ…みんな魔王様どうしたと大注目してるぞ。


 零ははっとなり、周りに頭を下げると、再度腰を下ろした。


「(あの白河を後夜祭に誘ったのか!?)」


 急に小声になる魔王様。

 いや、気遣ってくれてるのは嬉しいけど大袈裟すぎないか?


「(あの反応を見ると承諾貰えたんだよな!?)」

「お、おう…まあな」

「(やったじゃないか!ほとんどの確率で願望が叶うぞ!)」


 俺も喜びたいけどな?お前の反応が大袈裟すぎて引き攣った笑顔を浮かべることしか出来ないんだよ。


 …でもまあ、そうなんだろうな。

 魔王様も言ってくれてるし、いけるよな…いける…はず!


「(いやあ、蓮が勝ってしまうか…勇翔はずっと好きだったのにな…)」


 ……若林勇翔わかばやしゆうと、俺より先に小夜のことを好きになった学園の「勇者」様。

 具体的には6ヶ月以上も先だ…まだ付き合った訳では無いのだが、少し申し訳なくなってくる。

 …今気づいたら俺、大分と調子に乗ってるな、気を引き締めないと。


「万が一振られた時のためにまだ油断はできねえよ…」

「(蓮はネガティブだよな…まあ、たしかにほぼではあるものの確定ではなかったな。すまない)」


 そんな感じで蓮とゆっくりと作業する。

 さてさて…楽しみであり、怖くもあるな。






 早くも一週間が経った。


「蓮さん、今日もコーヒーをどうぞ…」

「ああ…いつも・・・すまんな…さすがに金払わしてくれよ…」

「いえいいです!私が押し付けているだけですので!」


 「それではっ」と今日も・・・慌ただしく去っていく小夜の背中を…俺はコーヒーを飲みながら眺める…よし復活。

 …ん?なんか隣の零が「ほほう…?」と呟いて、顎に手を添えている…なんだそれ。


「…どんどん強くなってるな。乙女の反応」

「いやだから言い方よ。そうなの…かね?」

「…この際言うけどな。お前作業中ずっと白河に見られてるぞ?」


 は?まじで?と思って小夜の方に振り向くと…

 …マジだ、もう作業に没頭しているが顔を瞬時に逸らしたのが見えた。


「…これ自信もって、いいんだよな?」

「…まあ、いいんじゃないか?確信はするなよ」


 …そうだな…一応勇翔の事は警戒しておかないと。

 …この一週間、勇翔は小夜に猛アプローチを繰り出すみたいでずっと一緒に作業していた。


 言っていいか?羨ましすぎるんだよ!

 その席変われや!爽やかイケメンスマイルぶっぱなしていい空気にしやがってよ!?

 …まあ別に席じゃないけど。


「おーい蓮?顔が怖いぞ?なんかずっと信じていた親友が親を殺した犯人だとわかった時の顔してるぞ?」


 謎に例えが独特すぎるんだが?それと俺別に両親どうでもいいし親友ならお前じゃねえか…


「…まあ、勇翔も勇翔で頑張っているんだ。気持ちは察せるが、君の方が有利のはずだよ」

「…零、お前はどっちの味方なんだ?」

「強いて言うなら、白河の味方かな?」


 答えに困る質問してみたのに、あっさり答えやがったぞこいつ…中々やるな。

 まあ、たしかに小夜次第か…お願いします神様、俺にどうか御加護を…

 …別に神様信じてないけどさ。


「…まあ、白河の味方ってだけで二人とも俺の親友なんだ。どちらも応援させてもらうよ」

「……さんきゅ」


 少なくとも応援してくれているのは伝わったので、素直に礼をしておく。

 …勇翔、いつかその席を俺が奪ってやるからな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る