EP87.兄妹と姫と兄弟と
「……
俺だ、
妹の
犬かよ…とかいう、EP83のデジャヴを感じながら振り向くと、俺の一番仲のいい男がいた。
学園の「魔王」様、
零は白のVネックにデニムジャケット、黒のスキニーとカジュアルな格好で周りを見渡していた。
そして、零の隣には零と似た服装…ジャケットじゃなくパーカーの少年がいた。
…あいつ誰だ?メガネは掛けてないが、随分と零ににてイケメンだな…
「兄ちゃん、どうしたの?」
あ、あいつ弟いたの?初めて知ったわ。
「んにゃ、親友の匂いがしてな」
いやだから犬かよ。
…でも親友っておい、涙ちょちょ切れて来るじゃねえかお前…
「親友…
弟くん?の口から学園の「勇者」様の名前がでてきた。
あいつってそうとう零と仲がいいんだな…ノリとかそういうので大体察したけど、まさか家族も知ってるくらいの仲とは。
「勇翔じゃない。他の親友だ…ん?ああ、白河がいるじゃないか。こりゃあ確実にいるな」
おいどういう事だ零、その認識のされ方は
ちなみに小夜は瑠愛と一緒に今の目的のキリンを見ていて、零には気づいていない。
「兄ちゃん、白河って?」
「あの金髪の少女だ。僕のクラスメイトで、今俺が言っている親友のガールフレンドだ」
間違ってねえけど誤解される言い方するなよ!?
その弟くん?が小夜の目の前でそれ言ったら俺と小夜の関係壊れるだろどうしてくれんだよ!?
「へえ…綺麗な子だね。その親友の人ってイケメンくんなの?」
…すまん、釣り合ってないよな…こんな中性顔で小夜の事を異性として好いているって、烏滸がましいにも程が──
「蓮さん、どうかしましたか?」
「ん?」
「いえ、少し顔色が悪くなっていましたので…私でよければ相談に乗りますよ?」
…少しネガティブになってたらしいな。
小夜が本気で心配してくれているような顔で俺の顔を覗き込む…近いが、俺が小夜と築いた関係はここにあるんだと認識する。
関係が壊れるのは確かに怖い…だが、その先に行きたいのもまだ事実だ。
これからも小夜との関係を深めていきたいと俺は思った。
「…いや、大丈夫だ。さんきゅ」
「そうですか?それならいいんですけど」
小夜が俺の頬を触りながら、顔色を伺ってくる。
…なんか、小夜が俺の顔を触るのって初じゃね?
「イチャイチャしてるねぇ…」
「青春だわ〜うふふ」
「「何か言いましたか?」」
「いや、なにも。でも、そこでハモったのは面白いよね」
ハモったって正悟さんも使うんだな…
というか、聞こえてたがイチャイチャしてねえよ!?…ああもう!顔が熱い!
…ん?小夜、なんでお前顔が赤いんだ…?
「
あ、完全に忘れてたけど零がいるんだった。
「おーっす零」
「やあ、蓮の匂いがしたもんでね」
「さっきも思ったけど犬か?」
「匂い…親近感…」
瑠愛?そこで親近感もたれても俺が困るんだが?
俺、やっぱりそんなに匂うのかねえ…
「ん?君は?」
共感した瑠愛に、零が興味を持ったらしい。
まあたしかに、瑠愛と零って会ったことないもんな。
「江波戸瑠愛です。以後お見知りおきを」
「こりゃあまた礼儀正しいね。僕は黒神零、蓮のお世話をしています」
「された覚えねえよ!?」
犬はこっちだった説とか勘弁して欲しいんだが!?…というか、そろそろツッコミ疲れてきてるから勘弁してくれよ…
「瑠愛ちゃんは蓮の妹かな?」
「…ん?ああ、自慢の妹であり、愛しの妹だよ」
「…浮気か?」
「実の妹に対して浮気もクソもあるのか?そもそも浮気ってなんだ?」
零が視線を小夜に向ける、小夜は零にぺこりと一礼した。
いや…分かってる、分かってるけどさっきから誤解される言い方をしないでもらえないか…
「兄ちゃん、さっきからなんで女の子と話してるの?ナンパ?」
あ、弟くん?は俺のことが見えていないらしいな。
とりあえず俺は「こんにちは!」と叫んだ。
「!?…え…いつからそこに?」
「ずっと居たぞ。零が言ってた親友は恐らく俺のことだ。俺は江波戸蓮、よろしく頼む」
「え、ああはい。
「来斗は零の弟か?」
「ああ、今年から高校一年だ。同じ学校だぞ」
こりゃたまげた、まさかの初後輩か?別に部活は入ってないのになあ…
…てか、来斗って絶対下級生の中でモテるよなあ…男子の中で一、二番目にモテてる兄貴に似ているんだし。
「で、零は何でここに?」
「来斗をつれて少し遊びに来ただけだ。行きたいところを訊いたら、動物園と答えたからな」
「動物園は好きですが、最近行ってなかったので。久しぶりに行きたかったんですよ」
「気持ち、分かる」
瑠愛が食いついた。
…てか今思ったんだけど、瑠愛って客観的に見たら年齢ってどれくらいに見えるんだろうか?
「ですよね!動物たち可愛いですもんね!」
「うん。動物園は最高」
「…零、瑠愛の歳いくつだと思う?」
「来斗と同い年か、一個下くらいか?」
瑠愛は童顔だが、背の高さのせいでそこまで高く見られるんだな…
「…こいつまだ中一だぞ?」
「「中一!?」」
おぉ〜、兄弟揃ってびっくりしてんなあ。
瑠愛は、可愛らしく首を傾げていた。
「いやあ…背が高いなあ。身長いくつなんだ?」
「160丁度くらい?」
「瑠愛、そこまで高くなったのか…」
俺が出ていく頃にはまだ150代序盤だったのに…大きくなったなあ。
「…江波戸くん」
「はい?なんですか?正悟さん」
「…この男の子は誰なんだい?」
…え、ちょっと待って正悟さん。
なんでそんな怖い顔になってんすか…?
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