EP49.姫とお花見
よお、俺だ…今、俺たちは花見に来ている。
まず、メンバーを紹介しよう。
ほぼ存在しない俺、
そんな俺の双子の姉、
そして愛しの妹、
最後に学園の姫、
その四人で近くの公園…ではなく、電車に乗って一つ隣の駅近くにあるかなり大きい公園に来ていた。
まだ三分くらいだが桜が咲き誇り、地面も緑が拡がっている。
この景色故にやはり人が多い。
が、俺以外の三人はその大衆の視線を集めている。
すげえよなあ…うん。
こんなにも視線を集めるほどの女性達がいるとするならば、やはり邪魔者もノコノコと現れるわけである。
「へ〜いそこのお嬢ちゃん達?僕達とお茶しな〜い?」
「お花見パーリーしようぜ!パァリィー!」
「「「フゥ〜!!!」」」
なんか頭おかしい三人組が来たのだ、多分ナンパだと思う…ウザイなあ。
…うん?なんか背筋に悪寒が走ってきたぞ…?
恐る恐る振り返ると…まあ俺は予想出来てたんだが、背景が氷点下になっている。
その氷点下を起こしているのは…
「いや、いいから。あんた達何?どうでもいいからさっさと桜の木に登ってから飛びおりて消えて」
「姉さん姉さん!この頭おかしいお兄さん達だ〜れ〜?鬱陶しいからさっさと絶滅して欲しいよね〜!?」
「ね〜」
いや、まあ、うん、江波戸姉妹である。
EP23を見ればわかるが、小夜は基本的にこういうのには強く反抗できない。
しかし、凛と瑠愛は違う。
凛は、変な輩に対してはそのツリ目を活かし、凍える雰囲気を出して相手を罵倒し、威圧する。
罵倒の対象じゃないこちらまでもがチビってしまう…それほどの冷たさと恐ろしさが今の凛にはある。
そして瑠愛、まず瑠愛は俺たちきょうだいの中では冷静で、かなりの判断能力がある。
それで相手と状況を分析し、できる限りの力や味方を行使し、物事を解決する。
今回の瑠愛のその力は凛だ、だからといって演技上手いな、おい。
正直言うと、この二人が力を合わせたら俺でも立ち直れないと思う。
いや多分身内だからだと思うけどさ、なんか小夜も体が震えてるし…な?
「「「
「いいねぇお嬢ちゃん達…Goodだ…」
いやこいつら全員Mかよ…
ビックリして俺もドン引きしたわ…凛はもっとドン引きしてるっぽいが…
「は?キモ。いいからさっさと散りなさい」
「お兄さん達こわ〜い…警察呼ぼうかな…」
「「「OK!
「いや、一生来ないで」
何だこれ…
キモキモ三人衆が去って言くと、凛と瑠愛は表情がぱっと明るくなった。
それを見ていた周りは全員目を丸くさせていた、これもうナンパこないだろ…
「いっや〜ごめんね〜小夜ちゃん?迷惑かけちゃったね」
「い、いえ…助かりました…?」
「兄さん、褒めて褒めて!」
「あ、うん…ヨシヨシ…」
表情は控えめではあるが、テンションが高めな瑠愛を撫でる俺。
可愛いんだけどね?可愛いんだけど…恐ろしい子…
そ、そんなこんなで空いているところにレジャーシートを引き、みんなで座る。
桜が良く見えていいところだと思う、うん。
「サンドウィッチを用意してきた。召し上がりやがれ」
「「「お〜!!!」」」
サンドウィッチを真ん中に置く。
4人で食うのに足りるか不安だが…一応12枚くらい用意してるし行けるよな?
皆で手を合わす。
既にウエットティッシュで消毒済みなので衛生的問題は安心して欲しい。
そこらへんは俺への怠らない。
三人ともハムハムとサンドウィッチを頬張る。
そして全員目が輝き、直に手がとまらなくなっていた。
「その様子だと…ご満足頂けたかね?」
「おいっしいよ蓮!え、何?なんの調味料塗ってるか分からないけど、どの具材にも相性ピッタリなんだけど!」
「そこは企業秘密だ」
隠し味とか秘蔵タレ、秘蔵ソースなどはポーカーフェイスが基本、オリジナルの旨味で客にご満足頂こう。
俺全くといってシェフとか料理人とかじゃないけどな。
「美味しい…」
「ですね!桜を見ながらこれを食べるのもまた至福のひとときです…」
「そりゃあ良かったよ」
感想を受け止めながら、俺もサンドウィッチを頬張る。
ん、普通に上手いな…ソースの味見が若干甘かったと思ってたけどそんなことはないようだ。
「それにしても、もう新学期だね〜」
「ですね。そう言えばですけど凛さんってどんな学校に通ってるんです?」
「実家に近い普通校だよ。蓮に比べたらまだまだな…」
「地頭は良いんだし、頑張れば行けると思うけどな」
てか、きょうだいの中で総合的に一番能力が低いのって一応俺なんだよなあ…凛とほぼ同じだが、存在感が…
「瑠愛さんの学力ってどんな感じですか?」
「普通だと思うよ?」
「いやいやいやいや!」
凛が急に慌てだしたが、俺も気持ちは分かる。
「これから中学生だってのに、もう数検準一級と英検二級を取ってる。俺たちの中では一番能力が高い」
「えぇ!?凄いですね…」
「そうかな?ありがとう」
本当に自慢の妹である。
いつか彼氏とか夫とか出来たら俺は泣いちまうだろうな、今年何故か泣いてばっかだし余計に。
「蓮さんとまた一緒のクラスがいいですね〜」
「二分の一だし、可能性が高いのが解せない…」
うちの学校は特待生が約60人とかなりの大人数で、特待クラスが2クラスある。
俺と小夜はもちろん特待クラスだから、小夜は二分の一を祈ることになる。
「一緒のクラスになって欲しいね〜こっちとしては」
「兄さんも、小夜さんと付き合ってるなら一緒がいいんじゃないの?」
「だから付き合ってねえよ!?」
全く…勘違いが凄いものだ。
でもまあ、たしかに新学期は少なからず楽しみではある。
俺たちは桜を眺めながら、これからの生活を予想していった。
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