EP66.感想を姫と語ろう
「面白かったな…」
「ふふ。そうですね」
映画が無事終わり、俺こと
最後は、ヒロインが病気でこの世を去ったと聞いて泣き崩れた主人公だが、ヒロインの最期を見ていたヒロインの父親に話しかけられた。
用件としては、ヒロインから主人公に対しての遺言があるとのことで、録音機を手渡されていた。
その後、録音を聞いた主人公は泣いてしまうも、ちゃんとヒロインの死を受け入れ、前に進み空を見上げてエンド…と、やはりどこかベタではあるが面白い。
録音を聞いていく中で回想シーンが流れた時は、俺も思わず涙腺が崩壊していた。
つまり俺は、今は流れる涙を拭いながら小夜の隣を歩いているというなんとも情けない格好だ。
そんな俺を見て、小夜は苦笑していた。
「泣きすぎですよ、蓮さん」
「だってよ…さすがにあれは泣くだろ……」
「もう、仕方ない人ですね」
何故か上機嫌らしい小夜は、バッグからハンカチを取り出して俺の涙を吹いてくれた。
とても失礼ではあるが、どこぞのカップルのやり取りみたいで少し気恥ずかしくなった。
「……悪い。もう大丈夫だ」
「そうですか。それなら良かったです」
小夜は笑って俺を見てきた。
その笑顔は今の俺にはとても直視できるものではなく、心臓がうるさい。
「すげえ面白かったわ。誘ってくれてありがとよ」
「いえいえ。私が観たかっただけですので」
「そうか。でもどうする?またカフェに行くか?」
感想を後から語り合いたいとの事だが、場所自体は決めていない。
が、感想を語り合うならばやはりカフェが定番だろう。
これまたラブコメからの知識なので、完全に偏見ではあるが。
小夜は唇に人差し指を当てて、どうするか考えて、時期に頷いた。
「そうですね。さすがにポップコーンを食べた後に何か料理を食べるのはできませんので、何かを飲みながら感想を言い合いましょう」
「わかった」
という事なので、俺たちはエスカレーターに乗ってカフェに向かった。
感想を語り合い、俺たちはカフェからでてきた。
「いや〜、ブラックコーヒーなのに甘すぎたな」
「どれだけ余韻に浸っているんですか」
小夜は映画のことだと思って苦笑しているが、勘違いを咎めるつもりは無い。
映画を観る前と観てる時の小夜との出来事の余韻は暫く抜けそうにないのは、さすがに小夜に言えそうになかった。
だって仕方ないだろ?好きな人とあんな出来事の連続とか俺はこれまで経験したことは無いんだからな…
「で、もう少しだけ時間があるがどうする?」
今は16時と少しだけ時間がある。
帰るのもありだが、できるだけ小夜との時間がいい俺はどこかに寄ることを望んでいた。
小夜は「そうですね…」とまたもや唇に人差し指を当てるという可愛らしい仕草をして、周囲を見渡す。
キョロキョロとした仕草もまた可愛いなと思っていると、小夜が「あっ」ととある場所に視線を向けた。
小夜の視線の先を追うと、そこは本屋だった。
少し目を凝らすと、入口付近にはさっき観た映画の原作が目立つように並んでいた。
「私、原作を読んだことないので、少し寄っていってもいいですか?」
「いいぞ。俺も今月の新刊を丁度買いたかった頃だし、ついでに買ってくわ」
今月のラノベの新刊って結構気になるもの多いんだよな。
そろそろ持ってる本全部読み終わりそうだし、その部分でもちょうどいい。
「なら、一緒に見に行きましょうか」
「いいのか?」
「もちろんですよ。ライトノベルは蓮さんの影響で、私も読むようになってるのです」
驚いた、初耳である。
今度読んだ本を聞いて、俺も読んでたら感想を語り合うのも良いかもな。
また楽しみが増えた俺と小夜は、本屋に入って色んな本を買っていった。
「おっも」
さすがに買いすぎた。
小夜が読んでみたい本も結構あり、それが俺の興味も引き付けたので結構な量になった。
いい時間になったので今は小夜と一緒に帰路に就いている所である。
「少し持ちますよ?」
「ああ、悪い。じゃあ服の方だけ持ってくれ」
ここは素直に甘えておく。
本の方が服より重いので、服の方を小夜に渡す。
「それにしても、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「俺も楽しかったよ。さんきゅ」
少し情けないところを見せてしまったので、残念がっていないか密かに心配になっていたが、小夜は楽しかったらしい。
俺はほっと胸をなでおろす。
「蓮さんの見たことが無い顔も沢山見れて、とても面白くもありました」
「どんな顔だよ…」
「さあ?でも、可愛かったですよ?」
「そんなこと言うなら、小夜の新しい顔も可愛かったぞ?」
「ふぇっ!?」
小夜は顔を真っ赤にして固まった…俺、なんか変なこと言ったか?
首を傾げていると、小夜が俯いて震え出した。
「あの、ありがとうございます」
「お、おう?」
「蓮さんに『可愛い』って言ってもらったのが初めてなのでとても嬉しいです…少し心配でしたので…」
あー…俺心の中ではさんざん可愛いとか言っても言葉にはしていなかったな…それで小夜は俺がつまらなく思ってないか心配になっていたらしい。
少し気恥しいので頬を掻きながら呟く。
「とても有意義な時間だったと思ってるよ…改めて、今日はありがとな」
「は、はいっ…あの、また一緒に来てくださいますか?」
「ああ…勿論だ」
俺が頷くと、小夜はぱあっと顔を輝かす。
その顔を俺は直視出来ず、「いくぞ」と小夜を置いて歩き出す。
小夜が急いで隣に来て、俺は小夜を見ると目が合った。
すると小夜は、眩しすぎるほどの満面の笑みを俺に向けてきて、俺は顔を逸らした。
心臓がうるさい、顔が熱い…小夜の事がもっと好きになっていく感覚がある。
今回の初?でーとは俺的には大成功だったと思うし、とてもいい思い出になった。
そして、この関係が崩れて欲しくないと、強く思った。
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