EP52.姫の母親
俺だ、
四月に入ってはや3日、もう少しで新学期が始まるところである。
今日は久しぶりに、
そして、今日は少し小夜に用があるんだが…それがなんとも…って感じだ。
うずうずしても仕方が無いな、そう思って俺はインターホンを鳴らした。
中からドタドタと足音がなり、段々近づいてきたと思うと勢いよくドアが開いた。
「ここここんばんは、蓮さん…」
「…?…よお。ほれ」
小夜が出てきたため、とりあえずおすそ分けを出したのだが…なんだか小夜の様子がおかしい。
さりげなくこちらから部屋の中が見えずらくするような体勢になってるし、表情もどこか焦りが出ている気がする。
「あ、ありがとうございます」
「おう。それとな───」
「小夜〜?お客さ〜ん?」
今回の用件について切り出そうと思ったんだが、部屋の奥から声が聞こえてきた。
小夜より少し低いものの、女性の声で間違いはないんだが…なんとなしに小夜の様子がおかしい。
声が聞こえた途端、ビクッと体が跳ねていたのだ。
直に、奥から足音が鳴り響き、人影が姿を現す。
「お、お母さんっ…」
「あ〜…」
なるほど、母親の登場か。
訪問者の対応時に親が出てくるのは何となく恥ずかしい…というのをどこかで聞いたことがある。
まあ、ラブコメ情報だけどな、これ。
いや、恥ずかしいのは突然の親の訪問だっけ?…まあいいか。
「用件があるんだが…後にした方がいいか?」
さすが俺、小夜の気持ちを全力で理解。
でも、よくよく考えたら俺の事見えないんじゃね?小夜の母親とやらは。
まあ小夜の親だし、全く油断出来ないんだが。
「えっと…その…」
「あら…?誰もいないように見えるんだけど…」
あ、やっぱ見えないんだな…そう思うと小夜は本当に何なのだろうかね。
出てきた母親らしき人物は、小夜と同じ金髪をショートボブにした女性だ。
二重の大きい目におさめられた碧眼を持っており、まつ毛は勿論のこと長い。
肌も白く、小夜より強調された凹凸の激しいプロポーションは、モデル顔負けでありなんだか誘惑してきてる印象を持つ。
ただ、小夜と違って日本人の顔立ちではないことから、恐らく欧米人だと思われる。
「小夜?何をしてるの?」
「あの〜…えっと…」
あ〜、たしかに俺見えなかったら凄い不自然だし、誤魔化すの大変だろうな、これ。
俺の体質はやはりめんどくさいものらしい。
「なあ、俺でた方がいいのか?これは」
「いや…ん〜…………はい…お願いします」
少しの長考の後、苦渋の決断とばかりに小夜は渋々頷いた。
さてさて、夜に叫ぶのは如何なものかもしれないが…今回は仕方ないな。
「こんばんは!」
「え!?…っと…あなた、いつからそこに?」
「最初から居ましたよ。お邪魔しております」
敬語最近使ってなかったから、何ともやりずらいな。
一回礼をして、相手の様子を伺う。
「あら、失礼。こんばんは…どなた様ですか?」
「隣に住んでいます、江波戸蓮と申します。白河小夜さんにはお世話になっております」
完璧な敬語だと思う、誰か褒めて欲しい。
隣にいる小夜も目を丸くさせて俺を凝視している…ふっ。
「あらあら、江波戸くんと言うのね。私は
…日本人の名前なことに少しビックリしてしまったが、恐らく本名ではない。
いやこんな推理どうでもいいか。
馬鹿正直に「
ここは誤魔化しとくか?
アイコンタクトをしようと小夜に視線を向けると、少し眉が下がっているし、そうした方がいいかもな。
「
「あらあら!ありがとうねえ…そうだ、よかったらウチに入ります?」
「え!?」「はい!?」
なぜ急にそうなる!?
見知らぬ男を女の部屋に入れるのは…どうなんだ?
「だって、江波戸くんってお年頃の男の子じゃない?なら、小夜と仲良くなるチャンスかと思ってね?この子、昔っから友達と遊ぶことが少なかったから、心配なのよお」
…あ〜…
子供の頃の話は知らんが、小夜が友達いないとか言ってたし…何となく理由が予想できるんだよなあ…
「えっと、お母さん!?それだと蓮さんが困りますよ!?」
いや、ちょっと待てや小夜!この流れで名前呼ぶ…と…あ、もうおせえな、これ。
小朝さんは小夜の発言を聞いた途端にキョトンとした顔になり、段々と口角が上がってニヤニヤしてきていた。
あ〜もう…言わんこっちゃねえ…
「あらあら!江波戸くんのこと名前呼びなの〜!?随分と仲がいいらしいわねえ…」
「え!?いや、えっと、その…」
「あの、結構ですのでお構いなく…」
「遠慮しないの!この子今日
いや知ってんだよそれ!今日の用件それだったんだよ先に言うなよ!
はあ…どうしよ、これ。
小夜を見るが、申し訳なさそうに眉を下げている。
…はあ、もうなんとでもなれだし、俺は決定権を委ねるのように頷いた。
「じゃあ…どうぞ…」
「わかったよ…」
渋々といった感じでお邪魔させてもらう。
小朝さんのニヤニヤを必死に無視しながら…な。
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