第6話 次の日
翌日。
例の五月蝿い神の声はないまま、清清しく起きれた。
ただ、女子達の姿が見当たらなかった…というか、全員外に出て、木々の茂み越しで何かを見ていた。
その遠くから観察して、俺は納得した。
ああ、うん。
次郎さんと花子さんの夫妻が男女の営み中だ。
詳しい事は言えないが、めっちゃ乱れておられる。
これには流石の成人前の女子生徒にとっては刺激が強いな。
…むしろ、俺も見に行きたいが、ここはあえて鬼にしてしばこう。
と言う感じに、後ろから俺が黒いオーラを出した瞬間に、女子五人がビクンとなって冷や汗掻きながら俺の方向に向いて、全員俺に引き摺られながら現場から去ることにした。
ついでに、五人全員に説教しておいた。
興味があるのは分かるが、自重しろ。
「錦治っちって、意外に真面目だよね」
「昨日の私のおっぱいが当たった時も、ちょっと動揺してたしな」
「というより、私達の胸が肌蹴た時も視線逸らしてたよね…」
「…初心な錦治君、可愛い」
「皆…少しは考えましょうよ。でも、錦治君が次郎さん達みたいにあんな事をしてくれるなら、ちょっとは良いかも…♪」
「お前ら少しは反省しろ!…仮にもまだ学生だぞ!」
その一喝に、皆は「…はーい」と返事をしてきたが、どうも赤らめが取れてない事に、俺は気付かないフリをした。
…たぶん、数日後には俺の貞操が危ないな。
そう考えていたら、営みを終えて賢者顔で出てきた次郎さん達が出てきた。
「あっ、おはようございます。あと、お疲れ様です」
「おはよう。…お疲れ様?…あっ!?」
流石に気付いたのか、見られていたことに気付いた夫妻は顔真っ赤になって、奥さんの花子さんは頬に手を当てて恥ずかしがっていた。
そうだよな。
元々の自分達の子供ならば見られても良いけど、俺達未成年かつ元人間から見られたとなると、結構恥ずかしいよな…
俺達は朝食を食べ終えた後、各自それぞれの行動を開始していた。
俺と冴子の二人は、ゴブリン達が言っていた牛の魔物を捜索。
直子と美恵と良子の三人は、オークメイジである次郎さんからメイジ用の魔法を教えて貰い最後の加奈子は、オークプリーストである花子さんからプリースト用の魔法を教えて貰う事にした。
お二人とも、基礎的ならば
問題は、俺と冴子の二人であるが…どうやら次郎さん達も知らない魔法の属性を持っている事が判明。
なので、今の所は魔法属性を習得しない事にした。
「というより、錦治君の場合は最上位クラスの亜人怪物だから、恐らくは魔王とかの闇属性や邪属性が使えるかもしれない」
「その発言からすると、使える種族も居ると言うことですか?」
「ああ。大抵は魔王城内や魔王城近辺の領土に住む魔物か、各地に送り込まれているボスクラスの魔物が使える。無論、それなりの魔力が使う反面、物凄い威力だから気をつけることね。以前討伐された、この地域のボスが一回使って、自分の拠点後と吹き飛ばしちゃったから」
などと言われたから、さほど凄い威力なんだろう。
気をつけねば…
「それにしても、良子の奴が作った鎧ってすげぇな…本当に異世界に世界に来たみたいだ」
「ああ、そうだな…丁度お前の胸が隠れて良い」
「な、なんだよ…気になってたのかよ?」
「いい加減、皆ボロボロの制服から脱却はしたいからな。というより、加奈子と直子の服はどうにかしないとな…それに比べて、美恵の奴がお洒落な皮服を作っていたのには驚いたな」
「アレは本当驚いたよ」
美恵の奴、良子が鎧などを作成する際に「…糸と針に出来そうな植物、見つけたから裁縫するね」と言って、蔓草を繊維にしながら編んだり、破れた服をほぐして編み直して新しい服を作っていたな。
おかげで、俺の場合は手足がでかくなって、脱ぐのに不自由だった服がもう一度蘇ったのには驚いていた。
なお、美恵の場合は、制服のスカート以外は全部手製で作成して着こなしていた。
特に、兎と羽鳥の皮をなめして自分専用の服を先に作り、後の素材で皆の服を作っていたのには驚いた。
「…そろそろ皆の着替えを作らないと、臭いが酷くなるから」と言っていたのには理解できたな。
ああ、暖かいお風呂に入りたい。
「今、暖かい風呂に入りたいと思ったろ?」
「よく分かったな」
「幼稚園と小学校の時、ずっと一緒だっただろ?幼馴染とならば、知ってて当然だろ?」
あっけらかんとした笑顔で答える冴子であった。
そんな昔から見てたとはなぁ…思わず頭を撫でて困らせてやった。
やはり、野生の馬や牛どころか、例の牛の魔物も見つからなかった。
「ちくしょー…何処に居るんだよ」
「んー…ここは意を決して、森の外に出てみるか?」
「良いのかよ?そんな事をして…」
冴子の言う通り、無計画で森を出るのは拙い。
レベルが2になってから、アレよりも更に強くはなったが…正直に言えば、単独で戦うのは厳しいと思う。
冴子も、あの後レベルが10も上がって、森の魔物ぐらいならば向かう敵無しだが、それでも厳しい所だろう。
その時である。
巨体らしい足音と共に、ゆっくりと進んでくる何かに気付いた俺と冴子は茂みに身を隠し、何が通るのかを息を潜んで偵察した。
「…
「んー…例えるならば、草食竜という感じだな」
目の前に現れたのは、大柄のシマウマ顔の爬虫類生物だった。
見た感じ、かなりの大きさで、力も結構強そうでもある。
その上、俺達の近くまで通っても、警戒をせずに草を食べるほどの呑気さであった。
「…なぁ、錦治。代わりとなんだが…」
「同感だ。この生き物を使わないわけがない」
俺と冴子の二人で、この大柄蜥蜴を捕獲する事にした。
「遅いねぇ、姉御と錦治っち」
「もしかしたら、遠出をしちゃったかも…」
「念のため、この森には出ないようには忠告はしたからな」
「他の勇者の学生に合ったら大変でしょうね…」
そんな直子と加奈子と、次郎さん夫妻の声が聞こえてきたが、俺と冴子は大柄蜥蜴に跨りながら茂みから飛び出してきた。
「どぅどぅどぅ…」
「本当、のんびりだな…こいつ」
本当、冴子の言う通りにのんびりした性格なのかゆっくりと歩くこの様には驚くが、案外闘牛みたいな性格じゃないだけマシかと。
そんな爬虫類生物を次郎さんはじっくり見ながら問いかけてきた。
「ほぅほぅ…まさか、草食竜を捕獲するとは」
「やはり、竜だったんですね」
「うん。昔は数が多かったんだが…どうも生息域を変えちゃって、この辺りでは中々お目にかかれなくなったかな」
「そうでしたか…良子、この子を荷車の綱に繋いでくれ」
「分かったわ」
早速、俺達はこの草食竜を荷車の綱に繋いで、引っ張れるか試してみた。
…どうやら、前のバスの重荷であったエンジンなどの部品を全部取り、車体だった部分を天井と骨組みだけ除いて鉄板を全部剥がした結果、見事に動いてくれた。
「おお、やったな」
「ああ。これならば、大丈夫だろう」
後は天幕用の布を美恵達が作ってくれてたおかげで、横の胴体に被せて縫わせるだけで、手製の馬車ならぬ竜車が完成した。
「よし、これで冒険が出来るな」
「そうだね、…所で良子。一つ聞くが…」
「何?冴子」
「その残った廃材はどうすんだ?」
冴子の指摘通り、バスにあった部品…特にまだ軽油が入った給油タンクとエンジンだけは手付かずに放置していた。
「流石にこの二つはお手上げだわ。他の部品だったブレーキ棒やクラッチ棒などの金属部分は、さっき次郎さんに教えてもらった火炎の魔法で再度溶かして叩き潰すことで一つの金属の棒にしていったけど、引火する恐れのあるその二つだけはどうしようもないわ」
「そっか…なら、諦めるか」
「あっ、ちょっと待って姉御、良子っち。さっき、別で森の中で探したら、瓢箪っぽい入れ物があったから、これに油だけ入れておくね」
直子が取り出した瓢箪みたいな木の実で出来た入れ物を幾つか取り出し、皆見せてきた。
なるほど、いざとなれば火炎瓶代わりに使えるか。
「そうだな。紙に何か吸わせておいて、後は詰めるだけで容器が破裂する恐れも無いしな。使い捨ての品物としてはありがたい」
「あとね、松明になるかもしれないかも。昔の人は石油をランプや松明の燃料にする傾向が強かったからね」
「あー、確かに松明は欲しいな。サンキュー、直子。やっぱお前は何時も頼れるわ」
「キシシッ♪姉御と皆の為なら、お任せあれ♪」
「こいつぅ♪」
何時もの二人のコンビの息に、思わず俺達から笑みが零れていた。
そして、加奈子がご飯を作っていたらしく、完成した事に皆言おうとしていた。
だが、次郎さんが何かに気付いたらしく、魔法の一つを発動させていた。
「…錦治君。どうやら喜んでは居られないかも」
「次郎さん、どうしたんですか?」
「昨日とは別の学生達がこっちに向かってきてる。しかも五人も」
どうやら、出発前に最後の仕上げが待っていた。
D組の別部隊である勇者生徒が、此方に向かってきたのを。
だが、今回はこちらも完全に装備も整い、魔法も改めて習得していた。
その事に確認し、慢心な心を伏せた俺達は戦闘準備に取り掛かった。
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