第4話 各人の能力

”ぴんぽーんぱんぽーん♪おはよう学生諸君ー♪みんな、私の異世界へ気に入ってくれたかな?気に入ってくれてるよねー?それじゃあ、張り切っていってみよー!!あっ、最初に説明し忘れていたけどぉ、人間のままで異世界に来ちゃった子達はねぇ、実は何度も復活出来る権利が手に入ってるのぉ。だ・か・ら♪ぜひ頑張って魔王を倒してね♪残念ながらぁ、亜人怪物や魔物に変えられちゃった学生さんは、人間のままに来ちゃったクラスの子に殺されないようにねぇ?じゃないと一回死んじゃったら復活なんて出来ないからぁ♪キャハハハハハ♪”




朝っぱらからうるせぇアナウンスをする神の声に俺達皆は一斉に起き、同じ気持ちで怒鳴った。


『うるせぇんだよ!このくそったれ女神!!』


六人ではあるから、多分届いては無いだろう。

ただまぁ、ソレぐらいを言わないと気がすまなかったので…

皆で頷いて二度寝をしようとしたが…流石に腹が空いたので朝御飯用の狩りに出かける事にした。


今回ばかりは六人全員で狩りをしたい気分だったので、全員それぞれ昨日作成した獲物を手元に、例の羽鳥辺りを捜しに出た。





「ねぇ、錦治っち」

「何だ?直子」

「私ら、ずっとこのままなのかなぁ…」


直子の言葉に、皆頷きかけていた。

…少なくとも、こんな原始的な生活よりも、色んな事をしたい。

だが、現状としては…全く持ってわからないからなぁ。

直子の愚痴に、俺は直子の頭に軽くポンポン叩いた。


「ずっとこのままなのか、成長するかは俺には分からん。ただ、一歩ずつでも良いから、前に出て行けば良いと思うんだ」

「そっか…錦治っち、改めて凄いなぁ…」

「その前にだ…お前達は俺が守る。それだけだ」

「王だから?」

「いいや、皆と別れたくないからな」


俺のその言葉に、皆頷いてくれた。

一度でも死んだら、二度はない。

けど、人間のままにこっちに来た連中は何度でも蘇る。

朝の神のアナウンスに、俺達はずっと考えていた。







「こんなもんか」

「つかれたわぁ…」

「そうね…日頃体動かさなかったツケが溜まってるわ」

「…同じく」


バスの残骸に戻ってきた俺達は、沢山の獲物を携えて帰還した。

羽鳥が3羽、ゴブリン達が言わなかった兎が4羽、以上である。

あと、美恵のトロールの特性である植物の見極めを使って、繊維質に成りそうな植物と食べれそうな木の実や草を採取。

お礼を言ったら「…錦治君と皆の為♪」と言いながらウフフと笑っていた。

…正直ちょっと怖いが、本人が喜んでいるなら大丈夫か。


そんなわけで、朝食は木の実と草を使った鳥焼きに挑戦。

羽鳥の内臓を手製石ナイフで綺麗に抜き取り、別料理用に捨てずに保管。

内臓を全部抜き取った中に、とってきた草で香草っぽいのを詰め込み、棒に刺して、回転させながらグリルへ。


女子達全員が「おー」と興味心身な声を上げながら、油が滴り落ちて焼けていく鶏肉に感心していた。

焼いているのは、俺だけどね。

その間に、加奈子が兎の毛皮を剥いで、丁重に内臓と肉に分けながら、此方も香草と共に鉄板で野菜炒め風に焼いていく事にした。

料理作ってる時の加奈子の生き生きした顔を見てると、狩りよりも料理させていた方が良いかもしれないな。

あと、さり気に冴子が兎の皮を剥がれていく時に「うさちゃん…」と呟いていたが、許せ。

この世は弱肉強食、喰わねば生きていけない。

それに、バランスよく食わねばな…

なお、兎の内臓の中で、ホルモン部分は野菜質の栄養も有ると美恵が言っていたので、直子が「んじゃ、水で綺麗に洗浄してから焼いた方がいいわね」と言ったのに対し、「それならば、煮込んだ方が良いかもね。丁度、鉄の板から鍋が作れたから、此方に内臓系のお肉頂戴」と良子が言ってきた。マジ、感謝。


して、これらの材料をそろえて、全員分の料理が完成。


羽鳥の丸焼きグリル。


兎肉と香草の野菜炒め。


余った内臓系と香草の煮込み鍋。


久々に人間らしい御飯が出来たので、皆で美味しく頂いた。

…贅沢を言うならば、岩塩でも何でも良いから、塩があれば料理に味が出るんだけどね、皆そこは贅沢を言わなかった。


良子特性の食器を川の水で洗い、鍋等の調理器具も全部洗い終えた俺達は、今後の生活を考えていた。


このままサバイバル生活をし続けるか。


この森の覇者争いにかけて戦いに明け暮れるか。


それとも、森の外に出て冒険に出るか。


…恐らく、他のクラスの連中の大半は、冒険者として旅に出始めた可能性がある。

いずれにせよ、あいつ等も成長をすると考えるならば、俺達も成長を目指して動いていかねばならない。


その事を皆に話したら、反応が様々であった。


「んー…やりたい事ね…確かにずっとサバイバルは嫌かな」


直子は、やはりサバイバル生活には否定的であった。


「でもね、錦治っち。昨日の夜の話を聞いてたけどさぁ…私らはそんなに血が飛び交うような戦争的な暴力はしたくはないんだよ。そりゃあ、生きるのに必死になって、戦わなければならないんだったら、戦うけどさ…」

「分かってる。お前と冴子が、いくら喧嘩沙汰になっても、刃物などの流血沙汰にならない様に、良い感じに喧嘩の仕方をしてきたのも見てきた。だから、あえて聞いているんだ」

「うぅ…難しいなぁ…」


基本的、直子の性格からするには厳しいだろうな。

あと、加奈子もまた、戦いに慣れろと言うのはきついかも知れん。


「無理とは言わないが…この先、人間と戦う可能性もある。言いたくは無いのだが…恐らく、こっちに来た他のクラス連中の中に、”勇者”の適正を持った奴が居るかも知れん。そうなりゃあ、いくら俺達でも歯が立たないまま皆殺しされるかも知れん。そうならん為にも、レベルを上げておいた方が良いだろう」

「そう…だよね。私達…レベルがまだあまり上がってないもんね」


ゲームをよくしてる加奈子だからこそ、流石に同情してきたようだ。

出来れば、穏便な方法で上げさせてやりたい所だ。


「加奈っち…分かったよ。錦治っちに言うとおりにするよ」

「大丈夫だ、直子。今の所、付いてくるだけでもレベルが上がる事があるのも判明した。冴子、一旦目を瞑ってみてくれないか?」

「ん?あ、ああ…」


俺の言うとおりに、冴子は目を瞑って、一時して驚きの声を上げた。


「うわっ!?なんじゃこの数字は!?」

「やはりな。その数字が、今のお前のステータスとレベルだ」


実を言うと…起きてる時に一定時間目を瞑ると、自分のステータスを見る事が出来、各自の現在の能力が分かる。


「ええっと…LVと書いてる文字がレベルなんだよな?」

「そうだ。あと、HPと書いてるのが体力、MPと書いてるのが魔力等の量に該当する。多ければ多いほど、力が付いてることになる」

「へぇ…今の所、私が11だわ。あと、体力は200。魔力は100だ」


冴子の考察するに、レベルが11。

オーガとしては中々の速さであるか。


「…私は10。体力は150。魔力は100」


美恵の数値的に、レベルが10。

トロールの魔力もあることから、魔法の使い方を学んだら直ぐに使えそうだ。


「私はぁー…と、げっ。レベルが4…体力が50。魔力だけが300…」

「レアケースだな。もしかしたら、ゴブリンメイジの素質があるかもな」

「…なんか複雑だなぁ。私、勉強が苦手なのに」

「逆だ。雑学感覚で魔法覚えたら良いだろ」

「それもそっか」


以外にも、直子はレベルが低いながらもゴブリンメイジの素質の可能性が見えてきた。

もしかしたら、俺達のサポート役に買う事が出来る。


「私の場合は、レベルが20、体力は200、魔力が200って所かしら」

「意外に早く上がったな」

「恐らく、工作などでもレベルが上がるかもしれないわね」

「良いなぁ、良子っち…」

「今度、一緒に何か作る?」

「いいねぇ、色々教えてよ」


良子のレベルが予想外にも20。

戦力にも期待出来そう出し、何よりもレベルが上がる事で色々作れそうだ。


「私は…レベルは美恵さんと同じ10。体力は100、魔力が300かな」

「そうか…」

「ちょっと待って。初期スキルって文字があるの。それだと、最初から回復ヒーリング魔法が使えるって」

「へぇー、凄いなぁ。加奈子。ちょっと見せてみてよ」

「えっ?う、うん…あっ、冴子さん。さり気に怪我されてますね」

「あっ。さ、さっき…ちょっと兎に噛まれたからね」

「では、その怪我に試してみますね」


そういった加奈子が冴子の噛まれた傷に手を翳して念じ始めると…

青白く輝きながら傷が癒えていった…


「すげぇ!?サンキュー!加奈子ぉ!!」

「うわっぷ!?さ、冴子さん…苦しいぃ…」

「あっ、ごめんごめん…でも、ありがとな♪」


冴子もそうだが、初めて魔法と言うものを見た他の四人もマジマジに見つめ、感動をしていた。

恐らく、加奈子はオークプリーストの素質があるんだろう。

俺としては、加奈子自身が自分の手を血で汚す真似はさせたくなかった。

そう考えるならば、皆の手当てをする癒し担当になって貰おう。


最後の俺のが…


「…非常に言い辛いが、言うぞ。レベルが未だに1」

「うわぁ…本当に上がらないんだね」

「錦治…乙」

「が、頑張ろう…錦治君」

「…でも、体力が聞いていない」

「そちらが気になるわね」

「…体力が1000。魔力が800。どう考えても化け物だろ」


その俺のステータスに、他の皆は口をぽかんとし、良子に到っては一つ目が白い部分が見えるぐらいに開いて、目が点の状態になってた。


「錦治君…それって、チートじゃない?」

「チートってなんだ?」

「通常のバランスを超えちゃった力の事を言うのだけど、大抵のチートと言うとデータを改造しちゃって無敵状態になっちゃう事を言うの」

「よくある勇者補正とは、そのチートという言葉に言われてる事が多いな」

「でも待って、能力が高い分成長が遅いって、その事なの?」

「たぶんそうなる。恐らくは俺の種族その物が、最終進化みたいな物だから、成長が遅い代わりに高ステータスなんだろう。むしろ、他の五人も、レベルがカウンターストップの100に到達したなら、上位進化出来るかも知れない」

「…ということは、私も錦治君みたいに強くなれる?」

「たぶんな。恐らく、美恵の場合はトロールキングじゃなくて、トロールクィーンになるかな…」

「…女王なんて、恥ずかしい」


なんか、変にモジモジさせてしまったが、まぁ良いだろう。

とりあえず、皆に進化できることに説明しておくと、多少はやる気が出てきたようだ。


「分かったわ。今は皆レベル上げをしながら、他のクラスに負けない力を付けていかないとね」

「あと、武器や防具も作って行こうー」

「まっ、あの神に帰れないと言われたからな…なら、私らは私らなりで今まで通りに好き勝手に生きて行こう」

「…皆で頑張れば、何か出来そう」

「そうだね。錦治君、一緒に頑張ろう」

「だな。とりあえず、当初の目標は荷車を動かせる動物を確保…だな」


俺の目標に皆は頷いた。

やはり、何をやるにしても旅は必要。

ならば、長い旅になるかもしれない上で、最低でも馬車になるような荷車が欲しい。

そうなると、馬か牛の魔物を捕まえて、動かしていかねばな…


皆で決断していた時、廃車の外から何か出てくる音が聞こえ、俺達全員、警戒態勢に入った。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る