第22話 析からの評価、フェイシャとのひと時、神からの連絡

大体一刻ぐらいが過ぎたぐらいか…

冴子と加奈子以外の全員は息を切らして地面に倒れてへばっていた…


「初日と比べたらマシだが、息切れが激しいな…まっ、俺も似たような物だが」

「ふむ…先ほどの足手纏いになるという発言は取り消します。特にそこの臆病な女性は意外な素質を持ってましたね」


さくの指摘に、俺は真っ先に反応して答えた。


「ああ見えて、加奈子は努力家だからな。異質な面子の中にて足引きにならない様には頑張ってくれてるからな…それにしても、加奈子。お前、何かスキル隠し持っていないか?」


そんな俺の指摘に、加奈子はギクッとした顔をしていた。

…やっぱり、隠していたんだな。

念の為、分析魔法で加奈子を調べてみたら…


・自動体力回復強化、自動魔力回復強化


この二つが追加されていた…

うん、通りで付いて来れたはずだ。


「…?父様、どういう意味ですか?」

「つまりは、今の加奈子の状態は体力と魔力だけは、俺と冴子について来れてる状態になってるわけだ」

「うぅ…あまりバレて欲しくなかったのに…」

「だがまぁ…それも一つの戦略だ。敵に情報を無闇に与えないのは、相手に対し凄いプレッシャーを与えるからな」

「あまり褒められた意見じゃないけど…ありがとう。錦治君」


そんな加奈子に対して、若干プーっと膨れて不貞そうな冴子の眼差しがあった…

うん、すまん…


「そんなに拗ねるなよ。お前も頑張っているというのは知っているんだから」

「だけどなぁ…最近加奈子ばっか構ってる感じだしな…」

「現状で見るなら、加奈子が目立つからな…ただ、半分は良い事じゃないな…」

「…?どういうことだよ?」

「急成長で目立つという事は、狙われやすくなるという事だ」

「そう言うことか…相変わらず心配性だな。錦治」


冴子はそう言いながら、隣に居た加奈子の頭をポンポンと優しく叩いていた。

まぁ、冴子は冴子なりに加奈子の事を心配してるからな…


しかしまぁ…同じ様に残り七人も拗ねたような顔をしていたのは、ちょっとな…

ていうか、バランス取らせてくださいな。







あの後、柝からは「まだ駄目」という声を受けた為、俺による扱きだけで終ってしまった…

致し方ないとは言え、ある意味厳しいものであるな…


気を取り直して、夕食を取りに行く事にした。

だが、その前に気になった事があった…


「柝、お前達の飯は何時もどうしてるんだ?」

「えっ?わ、私達のご飯でですか?」


唐突な質問によって柝は驚いていたが…少し考えた後に答えてきた。


「そもそも私達全員は父様からの魔力を媒体にして活動してる身ですから、特に食べるという概念は無いですね」

「まぁ、元は俺の創生魔法から生まれた様なものだからな…」

「でもまぁ、父様がしっかりと食べた物…つまりは取り込んだ物とかは、私達も同じく味わう事が出来ますから、それで大丈夫です」

「そうか。それでいいなら、安心だ…ただ、一緒に食事できたなら楽しそうと、思っただけだからな」

「…まだその時じゃないと思いますよ。それじゃあ、私はこの辺で。たまには、若も外に出してやってください」

「善処はする」



そういって、柝は俺の中に戻って行き、元の魔力として消えていった。

…むしろ、ここまで人間味のある奴らが、魔力でしか媒体に出来ない存在という事には、不憫に見えてくる物であろう。


しかしまぁ、そう思うならば…こいつらの答えに応じていけば良いだろう。


そう思いながら、俺は皆を引き連れて戻っていた。



念の為、城下町で歩いている時に一般の亜人族たちに冷ややかな目線があるかなと思い込んでいたが…割と普通に接してくれた。

むしろ、周りからの声からは「前々から知っておりましたし、仕方ないと思っておりました」と返って来ていた。

どうやら要らぬ心配だった様だし、一部の住民からは派手な戦いの光景が好きと言う声もあったとか…正直複雑な気持ちであった。







夜…

今日は久しぶりにフェイシャを傍に置いて、ベッドの机付近に腰掛けていた。

ちなみに、蓮はシャルトーゼの所で営み中だ。

今頃、激しく責められて媚声を上げているだろうな…お互いに。

ちなみに、冴子達五人はエミーと共にクラリッサの監視。

やはり、アレは勉強をサボらせてはいけない。これ、大事な…


一方で、久しぶりに”女の子”状態になってるフェイシャを、猫の様に膝元にて転がっており、その状態のフェイシャを俺が頭を撫でていた。


…相棒のリューミャが亡くなってからは、ダークエルフとしてはずっと一人身であったからなぁ。

ただ、今では自分で…反則だけど直子の時早めの魔法によるが、赤子を産んだ事によって、多少は種族の一人ぼっち感は消えていたからな。

それでも、俺を選んだのは納得はいかないが…


「なぁ…フェイ」

「なんですか?キンジさん」

「お前は…今幸せか?」


そんな俺の投げかけに、フェイシャは少し悩んでいたが…直に俺の腰に手を掛けながら擦り寄って答えてきた。


「少なくとも、今は幸せです…そりゃあ、父さんや母さんが居て、難民先の森でひっそりと貧しいながらも仲良く暮していた頃が一番幸せでしたが…あの地獄を見た後は、悪夢の様に蘇る事があります…」

「そうか…」

「そして…妖精国で故郷を亡ぼしたあのセイレーンを、自らの手で殺した時は…恐怖に染まってました…リューミャの命を奪われた衝撃の余りに激昂し、感情を剥き出しにして殺した自分に…でも、貴方が抱きしめてくれた事で、僕は…私は救われたのです」

「いや、俺はそんな聖人君主なんかじゃない。現に、俺はこの世界に来る前は…ある意味屑であったからな。あいつ等を守るとか、面子を潰さないとかの建前で何人の人間を拳で血を染め、時には殺していたんだからな…それも、自己満足によるものでな…」


そんな俺の答えに、フェイシャは更に女らしく抱きついてきた…

しかも、ダークエルフとしてはまだ若いと言える位に華奢な体で…


「大丈夫です…よく、ハイエルフあたりが言う『エルフ族は野蛮な人間とは違う高貴な種族だ』とかありますが、ハイエルフやポズマー、ダークエルフやハーフエルフとかのエルフ族だけじゃなく、人間や他の亜種族も全員変わらないです。本質は一緒…皆、種族関係なく己の我侭で殺す事があるのです…」

「フェイ…お前…」

「少なくとも…最初に出会ってからも…王都を旅立った後の貴方を見ていたら…そう思ってくるのです…」

「そうか…本当、変わった子だ…」


俺はそう言いながら、抱きついていたフェイシャを引き寄せ、太股の上に座らせながら抱きしめてやった。

無論、フェイシャも満足そうな顔をして受け入れていた…


「まぁ…心底愛してるとか言えるのは、冴子だけにしているが…」

「分かってます。正妻はあの人だと知っておりますから…」

「すまんな…」


そう言いながら、俺は彼女の頭を撫でてやった…

が、それと同時に…フェイシャが腰深く座ってきた上に、ゆっくりと腰を左右に動かし…あっ。


「お、おい…当たっているんだが…」

「むしろ、望んでいます…それとも、こんな胸の無いエルフでは満足はしないのですか…?」


そんな風に言いながら上目遣いしてきた彼女に、俺は溜まらず胸揉んでやった。

うん、あの面子の中じゃあ一番小さいが…それでも亜人化する前の加奈子並みにあるのは間違いない。

ていうか、前よりか少し膨らんでいるな…


「フェイ、お前…産んでから少し大きくなった?」

「えっ?い、いえ…実は、キンジさんが一回旅立った時から少しずつ大きくなりまして…」


うむ…どうやら、不老不死問わずに成長はある程度まで進むみたいだな…

となると…将来的には胸でかくなる素質があるな。

そう考えながら揉んでいたら…完全にスイッチ入ったらしく、彼女に押されて、なし崩しにベッドの中でイチャついてしまった…無論、大人の営みで。

ちなみに、俺がフェイシャに掛けてやった例の呪いによる…うん、蓮と同じ棒であるが…そっちも優しく”してあげた”…


もしも、ダークエルフは勿論の事、他のエルフ族がこの王都に流れてくるなら、公共事業の一環として植林による公園作りでも提案してみようか。






翌日…


フェイシャとの営みを終え、なし崩しに何時もの面子と営み終えて寝ていた俺達全員であったが…以外な情報が流れてきた。



”はいはーい、久しぶりの神様でーす。今日は、異世界に転送されてきた全員に二つほど重要な連絡を致しまーす”


あの神から連絡がやってきたのだ。

しかも、大分久しぶりに。


だが、寝起きの皆が…しかも今回はクラリッサまでもが聞こえたらしく…全員で一斉に声を上げた。


『五月蝿いんだよ!このボケナス!!』


まっ、届いてたかどうか知らないが…引き続きアナウンスが続いていた。


”たぶん、五月蝿ぇとかボケナスとかクソッタレとかの声が聞こえてくるけど、まぁそんな細かい事は置いといて…今回の重要な連絡は大事だから聞いて頂戴。今年の転送で参加した組の勝利は…今回無しになりました。理由は二つ有って…一つは今年出現した魔王が、勇者以外の何者かに倒されました。正直、驚いては居るんだよね…クーデターみたいな内乱起きない様に、魔物達には制限をかけてやったのに…もう一つは、今年最後の勇者の生き残りであった西園寺勇助と付き人でハイエルフになった森宮菖蒲の二人が行方不明になりました。しかも、厄介極まりない事に、出身国の帝国はおろか私の監視の目すらも見れないぐらいに、忽然と情報が掴まらなくなったのよね”


魔王が討伐されたのと…西園寺達二人が行方不明に…!?

そんな事が起りえるのか…?分からん…

ただ、どっちにしても…これで今年は誰も異世界から帰れなくなったのは、確定したも同然だった。

いや、むしろ俺達は帰る気など無かったが…


”まぁ、そんなわけでぇ…今年の送還は無しになったから、諦めてね。代わりに来年度が来るまではイレギュラーな案件が起きても、神からによるペナルティは無効にしているから、今のうちに自分を育てたいという人が居たら、遠慮なく…むしろ、来年は生きて帰れるかもしれないから、頑張ってねぇ”


そう言ってブツンと通信が消えたのだが…一体何があったのだ?

逆に投げやり的断片情報では、余計に不安になるだけなのに…


あまりにも騒ぐ皆に、この事を考えるのは避けて置いとけと促していた…





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