第52話 伽を終えて、新たな旅路へ

朝が目を醒ました時…俺は我が目を疑った。


「…なんじゃこりゃああああああああ!?」


王女クラリッサを抱いた記憶から曖昧であったが…いつの間にか何時もの面子である六人も紛れ込んで、何も纏わぬ姿になって横になっていた。

あっ、さり気に直子の子であるあかりは、ちゃんとゆりかごの中で寝せてた。


そんな俺の悲鳴に、王女を含めて全員目を醒ました


「おはよー…キンジ」

「見事な夜だったなぁ…」

「正にハーレムというか…」

「妊娠中の加奈っちを除いて六人抜きするなんて♪」

「凄く…激しかったです♪」

「全くだわ…♪」

「あんな夜、初めてでした…♪」


「お前らぁ…!ちょっと其処に並べ!!」


俺は未だに眠ってる加奈子を除いて、全員正座させた後、事の顛末を聞いて、約四半日ほど説教をしておいた。


…どうやら、冴子の嘘がばれたらしく、俺達二人での旅路に出ると聞いた皆は俺と王女の所までやってきて、賢者状態の俺を良い事に何時もの夜伽になって皆で楽しく俺を搾っていたとの事。

しかも、途中からは加奈子の回復魔法まで掛けて復活させて搾り出させるとは、こいつは本気で怒らざるを得なかった。


「あのぉ…キンジよ」

「なんだ?王女」

「たぶん、今回の伽で…私妊娠したかも知れないから、よろしく頼むぞ♪」

「勘弁してくれ…」

「む・し・ろ。私達を置いていくなんて酷いわ…ちゃんと話して貰うからね」


致し方ないので、俺と冴子による今後の事を全員に話しておいた。




大体の説明を終えたことで、良子が少し溜息付きながら答えてきた。


「なるほど。つまりは制御の旅というわけね」

「大体一ヶ月、長くても半年ぐらいは旅をして修業をしたい所だ」

「んで、荷重である私達を長旅にはさせられない…と?」

「それもあるが、この王都を拠点にしたいからな。そうなると、復興協力をしている旅団を動かす事が出来ないからな。ならば、復興中ぐらいは、一旦皆で分かれ、各々修業するというのも大事じゃないかなと」

「言われて見れば、確かにね…私達、ずっと錦治君に頼りすぎてるわ」

「確かに、そうで御座いますね…私もアレから、創生魔法の研究をしておりませんですし…」

「確かに、私も創生魔法を使いこなしてないからね」

「そう言うことだ。特にフェイシャ、お前は蓮の剣の修業を学んでおけ」

「あっ。は、はい…」


「…なるべく早目に帰ってくるから、心配せんでくれ」

「…分かったわ。その前に、冴子」

「何だ?良子」

「錦治君を不幸にしたら、私は許さないからね」

「…安心しろ。私が絶対こいつを離さない。断言しておく」


女なりの覚悟を見せた冴子と良子はお互いに見つめた後、軽く拳を当ててきた。

…この二人なりの友情なんだろう。

そう思いながら、立ち上がろうとしたが…


「のぅ…キンジよ。まだ殿方のアレは元気じゃないか。ならば…♪」

「冴子、良子」

「あいよ」

「任せて頂戴」


俺の短い言葉に、冴子と良子は素早く王女を確保して取り押さえ、脇腹を擽りながらお仕置きをしていた。


そんなのを余所に、俺は部屋の外に出て王城のバルコニーへと向かった。




復興されていく町並みと王城を見ながらふけていたら…後ろから加奈子が歩いてやってきた。


「体の方は大丈夫か?」

「うん、大丈夫よ…錦治君こそ、大丈夫?」

「大丈夫だ…要らん心配をかけたな」

「ううん…そこじゃないの。正直に答えて、錦治君。冴子さんも含めてだけど…錦治君、私達と違う特性を手に入れたでしょ?治療していて気付いたの…」

「加奈子…」

「直子ちゃんと共に話していたけど…錦治君、本当に正直に答えて。錦治君は…不老不死になったのでしょ?」


加奈子のその指摘に、俺は深い溜息をして、バルコニーの石手擦りに腰を掛けた。


「何故分かった?」

「傷の治りが異常なのと…直子ちゃんも分析魔法で調べちゃったの」

「そっか…美恵と良子、あの二人は知らないんだな?」

「うん…直子ちゃんとの二人で秘密にしてるの」

「そうか…本当要らん心配をさせてしまったな。ああ、そうだよ。俺達はもう…死ぬ事はない。むしろ、あの神から不老不死にして貰わなければ、あと一年半で寿命尽きて死んでる」

「そう…だったの」

「ああ。それだけ、俺達に扱える代物ではなかったのだ。あの創生は」


そう告げると、加奈子は泣きそうな顔で俺を見つめていた。

そんな加奈子の頭を、俺は優しく撫でてやった。


「お前が…いや、お前達が気を負う必要はない」

「なんで…冴子さんといい、錦治君ばかりにこんな事を背負うの」

「…我儘かも知れんな、俺達は」

「我儘すぎるよ…!こんな事なら…私が…」

「加奈子。それは違う…俺はお前達を守りたかった…それだけだ。それに…」

「…ふぇ?」

「子が成せない、アイツと共にずっと傍に居させてやるのも、悪くは無いと…思ってしまったかもな…だから、お前は…いや、お前達は子を作って、後世に繋いで欲しいかな。俺の本当の我儘は、そこから来てるかもしれない」

「錦治君…」

「だから、泣いて代わりなれば良かったと言わないでくれ…」

「うん…」


俺は未だに泣き続ける加奈子をあやしながら、外の光景を眺めていた…









アレから更に半月ぐらいは経過した…


「行くのか?」

「ああ。それじゃあ、暫くの間はお願いします」

「任せて置け。フローゼはおろか、皆で待っている」


早朝の朝一番にて、俺と冴子は旅支度をして王都入り口まで立っていて、それをギルバートさんとフローゼさんが見送ってきた。


旅立つ前日は送別会で皆はしゃいでいて寝ていたが、それでいいと思ってる。

見送りに多いと、決心が鈍るからな。


「そうだ、キンジよ。コレを渡しておこう」

「これは?」

「転送石だ。魔法が一般的なこの世界では、旅人がよく持っている。魔力を送り込んだら、何時でもこの王都に戻ってこれる」

「良いのですか?こんな凄い物を」

「元々は騎士団が保有していた帰還用道具だ。遠慮なく持っていけ」

「何から何まで、ありがとうございます。ギルバートさん」

「ああ。サエコも頑張ってくれ」


そんな騎士からの言葉に、俺と冴子は感謝をし、お礼をしてから背を向けた。


「ではな、親友よ。二人に神の加護を」


ギルバートさんの祝福の言葉を受けた俺達は歩き出していった…





「さて…まずは何処に向かっていこうか?」

「そうだな。錦治に任せるよ」

「じゃあ、『原初の森』とは真逆の方角へ進んでみようか」


俺はそう言って、冴子の組んできた腕の温もりを感じながら、歩みを進めた…







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