異世界で亜人に 第二部

第1話 二人旅

王都を旅立ってから三日ぐらい経過…


「随分と歩いたな…」

「だねぇ…結構汗臭くなったなぁ…」

「まっ、三日も風呂入ってないからな」

「下着まで臭くなってそうだ…川があったら洗いたい」

「何時も洗濯しているのは俺なんだが…」

「わ、悪ぃ…何時も女物のまで洗ってくれて…」


冴子はそう恥ずかしそうに、ばつの悪い顔をしながら俺を見つめていた。

…正直、冴子の家事能力にはない事には元から知っており、炊事以外での家事は空っきし駄目なのであった。

だが、最近は自分でも洗う様にはなったが、それでも若干汚れが目立つからな。

その場合は俺が洗ってやってるが…


「別に気にするな。少なくとも、野営での炊事力は上がっているから安心しろ」

「といっても、大抵丸焼きぐらいだからな…」

「まっ、余計な調理器具は荷物になるからな。肉焼き器と串、あとは刃物あたりあれば問題は無い」

「そうか…まぁ、それでも焦がしてばっかだったな」

「何事も経験だ。気を落とすな…冴子」

「分かってる」


他愛の無い話から一転して、俺達二人は警戒をした。

すると、草むらからは野性のオーガの雄達が現れた。


「ぐほぅ、人間かと思ったら、ホワイトオーガの雌じゃないか」

「小柄ではあるが、俺達の性欲処理に使えるじゃないか」

「こっちのトロールは小さいが、肉がありそうだ。食ってしまおう」


オーガ達の行動を見た俺達は深い溜息をし…


『弱い』


呟いた瞬間、冴子は新調した片手剣を一瞬で引き抜き、俺は拳一つでオーガ達を血の海に沈めた。





「デュミエール達が見たら泣くだろうな」

「いや、こいつ等ははぐれ者だ。氏族に入ってない無法者までもが、加護にするつもりは無いだろう」


お互いそう言いながら、死んだオーガ達の血を抜き取りながら、肉に加工をして行った。

今先ほど俺が言ったが、オーガ達にも部族等の氏族を結成をしており、これらに属していないオーガ達をはぐれ者と呼んでおり、殆ど夜盗等の犯罪者として暮す事が多い。


しかも、これはオーガに限らず、ゴブリン、オーク、トロールにも当てはまっており、同じく流れ者でも氏族に属していない亜人属ははぐれ者として扱っていた。

ただ、俺達みたいに強力過ぎる者は極僅かで、大抵は追い剥ぎ程度の小物程度にひそひそと暮しているものが多い。


ただ、その俺達の強力過ぎると言うのが…


「むしろ、レベル上げすぎたな」

「だな。たぶん、前の西園寺達と変わらんぐらいの強さだと思う」


そう、俺達はレベルを上げすぎた…


先月のさくとの修業後に、レベルを見てみたんだが…

俺の場合は既に限界突破をして230。

体力が10万と5千。魔力が7万と破格の強さに。


冴子に到っては同じく限界突破しての175。

体力は9万5千。魔力が8万と魔力に関しては俺より上になっていた。


魔力の高さに関しては、恐らくは俺以上の力を押さえ込む為の要領なんだろう。

ソレに加えて、魔法剣等という物まで覚えてしまった。

おかげで、西園寺と同じ光剣術の紛い物を扱えるようになってしまったしな…


「この調子なら、錦治を越えるかもしれないな」

「阿呆。お前にはまだ負けん」

「言ってくれたな。今度覚えて置けよ」

「なら、夜の勝負で勝って見るか?」

「それは…ちょっと、無理だな…って、何言わせるんだよ!!」


そう言いながら、顔真っ赤にして抗議してくる冴子を見て可愛いと思い、思わず頭をよしよしと撫でていくと、照れくさそうにしながら女らしさを見せてきた。


前以上に女らしくなったと思えるのは俺ぐらいだろう。

それだけ、こいつに愛着があるし、こいつも俺に愛着があるからな…


そんな感じで、血抜きも終えたオーガの肉に塩を振りながら干していった…





干し肉作りも終わり、はぐれ者から採取した道具を見定めし終えて、再び歩いていったら…随分と日が暮れていた。


「仕方ない。今日は野宿だな」

「随分と歩いたな…近くに村は無いのか?」

「生憎無いな。地図とコンパスを見ても、どこにも表示されてない。むしろ…」

「むしろ?」

「この辺り一体は亜人族勢力圏だ。恐らく、王国からすれば未開の地なんだろう」


そう言って、俺は魔力を使って火を起こし、焚き木に火をつけていった。





暗闇に包まれる深夜…

あたりに結界を張っているとはいえ、火を消す事には命取りになる。

と言っても、それは不老不死の無い奴の事で、俺達二人には余り意味は無い。

だが…人として考えるならば、恋しくなる物だ…


そう思っていたら、冴子が鎧を外した姿で俺に擦り寄ってきた。

無論、胸を押し当てながら…


「まだ時間は早いぞ…」

「違うんだよ…ちょっと、寂しくなってな…」


そう言いながら、冴子は俺の服を嗅ぎながら、まるで子犬のように甘えてきた。

…大抵、こういう時の冴子は弱気になっている時である。


「…亜人相手でも、殺しは辛いか?」

「ああ…私はお前よりも強くはない…虫や動物なら生きる為に殺せるが…」

「人型は辛いからな…重ねてしまうんだろ?」

「ああ。あれが…もしも転生者だったらならとか考えるとな…」


そう言ってくる冴子を、俺は冴子の頭を撫でながら抱きしめた。


「慣れれば問題は無いさ…必要以上に殺さないと思う以外は何も考えるな」

「分かっているさ…でも、怖いんだ…」


そう言ってくる冴子に、俺は思いっきり胸元まで抱き寄せてやった。


「きゃ!?」

「そう言う時こそ、抱きに来い…そしたら、俺が優しく抱いてやる…」

「馬鹿野郎…そんな言葉を言い出したら…」


そう言いながら、冴子は服を肌蹴させて、俺に迫ってきた…


「わ、忘れさせろよ…旦那様」

「ああ。乱れ狂えよ…」


お互いそう言いながら、激しく口づけをした…





翌朝…

焚き木の跡に、俺達は土を被せて火消しを終えて立ち上がった。


「さて、行くとするか」

「ああ。今日は何が起こるか…」


そんな感じで、今日も当てもなく前に進んでいった…





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