第8話 発情日
翌日…
ヘルツの元屋敷から一晩過ごした今日、ついに恐れていた事が起きた…
「発情日か…」
そう、今度は俺自身が発情状態になっていたのだ。
元々亜人族の中で、ゴブリンやオーク、オーガやトロールの種族は、月に一回は発情状態になって、同種族や別種族の亜人の雌や人間の女に犯してくるのだ。
無論、人間からの転生者も例外はなく、月に一回は発情してムラムラし続けて、女を抱かないとずっとイライラしてしまい、結果として乱暴に襲ってしまう。
…実際に、この異世界に来てから一回だけ発情状態になった事があり、その時はずっと冴子と交わっていたが…やり過ぎて泣かせてしまったからな。
無論、本人と相思相愛だったから問題はなかったんだが…
そんな事を考えていたら、冴子とエミーも起きてきた。
「おはよー、錦治…って、凄い膨らんでいるんだが…」
「しかも、昨日以上に大きいです…」
「…すまん。俺の発情日だ」
そう言った時、冴子の顔から「うげっ…」と言わんばかりの表情をされていた。
ぶっちゃけると、今の俺の目に血走ってるのが目に見えてるからだろう。
「ついに恐れていたことか…」
「そう言うことだ…前回は獣の様にお前を襲ってしまったが…」
「うん、言いたい事は分かる。あれは正直怖いんだよ…」
「だからだ…今は自制してるから大丈夫だが、気を緩むと二人を同時に襲いたいぐらいに衝動が抑えられないんだ…」
そう言って震えている俺を見てた二人であったが…
何かに観念にしたのか、二人とも着ていた服を乱し始めてきた。
「お、お前ら…?」
「錦治。何時も抱いて貰ってる礼だ。今日は乱暴にしないなら好きにしていい」
「むしろ、何時もは私達がリードしてましたからね…」
そう言ってきた二人を、俺は血走りながら見ていた。
「後悔しても知らんぞ?」
「だ、だから…優しくしてね?」
「と、というより…怖いです」
「もう…抑えが利かないんだよ!!」
そう言って、俺は二人を押し倒して…一気に襲い掛かった。性的に
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
大体一刻過ぎた辺り…
私達二人の女は、部屋の近くにあった布に巻いて寄り添って泣いていた。
「うぅぅ…やっぱり痛い…」
「何時もより太いから痛いですよ…」
そう言って下腹部を擦るエミーを私は優しく抱きしめていた。
正直、私も股の間からゴボゴボ音が出るぐらいに出された上に、痛い。
だけど、錦治の性欲は治まっている様子は無かった…
「休憩はいいか?まだやるぞ…」
「も、もうちょっとだけ…」
「では、エミーは…?」
「わ、私も…もうちょっと…」
「くっ…収まらない…!!くそっ…」
そう言いながら、錦治は私達に背を向けてから…自分で何とか抜こうとしてた。
ごめんよ…女として言うなら、連続でされるときついんだよ。
だけど、あいつ苦しんでいるからな…どうにかしてやりたいが。
「ん…?冴子様、ちょっとジッとして貰って良いですか?」
「ど、どうしたんだよ?エミー」
「なんか、別の吸血鬼族がこっちに向かってます…」
エミーの指摘どおり、一匹の吸血鬼がこちらに向かって飛んで来ており、錦治の前に降り立っていた。
しかも、女の吸血鬼で…
「あら?ヘルツの屋敷が壊れたと思ったら…トロールもどきが襲っていたか」
その女吸血鬼は、エミーと違って大胆な服装…というより、私から見ても痴女と言わんばかりに胸元は紐ビキニみたいな奴、スカートは下着丸見えと言っていいぐらいに短すぎたのだ。
そんな中、エミーは布を全身被ったまま、私にも布を全身に被せて耳元に囁いた。
「(あの女は、吸血鬼族カーミラのテレーズです…痴女で有名な奴で、数多くの人間の男達をエナジードレインで葬ったとされる危ない奴です)」
「(まじか…!?…って、エナジードレインだけなのか?)」
「(あっ、はい…奴はエナジードレインと吸血だけが得意奴なんです…)」
エミーが耳打ちして、私達の姿を隠した理由が分かった。
エミーの奴、今の錦治の発情状態をあの女にぶつけさせるつもりだ。
しかも、錦治と私がドレイン無効だと分かった上でだ…
「(エミー…あんたも大概悪だよな)」
「(こうでもしなければ生きていけませんよ…それに、これ以上は今の錦治様の相手なんか出来ません)」
「(確かにな…悪いけど、乱暴状態の錦治の発散はぶつけさせて貰おう)」
エミーとそう言いながら、私達は隠れる様にシーツを被り、テレーズという女の錦治とのアレとの決着見させて貰う事にした。
…正直、私よりもスタイルよくて妬ましいんだが。
「(大丈夫です。冴子様のスタイルは私が保証します)」
「(って、さり気に心読まないでよ)」
「(顔に書いてましたよ。スタイル良くて妬ましいって…)」
「(うぐっ、気をつけるわ…って、アッサリ負けたな)」
私達二人がそう言ってる合間に、例の痴女だが…錦治に接近した際に地面に投げ飛ばされた上に、地面に尻餅着いた瞬間にマウントポジションを取られるとは…
「痛いわね!何する…って、何よその大きな…っ!?や、止めて!入らない!!入らないから!!幾らなんでもそんな凶器が入らなひぎぃぃぃいぃぃぃぃ!?」
あっ、やべっ。
今の錦治、完全に暴走状態だ。
ああなったら、流石の私でも無理だわ。
一度発情状態のあいつをフルで相手した事があるから、分かるが…ああなったら最後だからな…
「いやぁ!何か言ってひぎぃ!?ら、らんぼうはらめぇえぇ!!」
ああ、もう無言モードになってる…
ああなったら体力尽きるまで動き続けるからな…
とりあえず、私は目の前の女吸血鬼に合掌するしかなかった。
そんな事を考えながら、私はエミーと共に震えながら寄り添っていた…
大体半日ぐらい過ぎて、日が沈み始めたのが部屋の中でも分かった頃…
「うぅ…うぅぅ…」
痴女ながらも美人顔だった吸血鬼は、涙と鼻水でグチャグチャに汚れてながら…
破けた服を隠す様に近くにあった大柄の布地で包まっていた…
それと同時に、錦治も体力が尽きたように倒れて、気絶するように眠っていた。
…正直、錦治のトロールの特性でこれだから、原生のトロールに遭遇した時は、発情期状態には気をつけないとな…
幾ら孕ませる心配は無いとは言え、これじゃあ永遠の慰み者にされかねない。
「よし、動くぞ。エミー」
「はい…」
そう言って私達は被ってた布を脱いで、女吸血鬼のテレーズの所まで近づいて、彼女を保護した…
「大丈夫か?…うわぁ、酷くやられたな」
「流石のテレーズも、ここまでやられるときついですね」
「ひっく…そのこえはえみー…?」
先ほどとは威厳のないテレーズの態度に、私はちょっと引いてしまった。
精神的に壊れかけてる…
と、考えていたら…エミーがテレーズを優しくあやしていた。
「エミーですよ…もう安心して良いですから…」
「ひっく…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ひたすら泣き声を上げる心の牙が折れた女吸血鬼を、私も加わって撫でていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
日が完全に落ちて、月明かりが照らす頃に…
「すまん!本当にすまない!!」
「いや…今回は軽率で迂闊な判断をした私らが悪いんだ…」
「むしろ、トロール族を含めた緑亜人達の発情を舐めてました…謝るのはこちらですから…」
俺は通りすがりの吸血鬼テレーズを含めて、三人に対して土下座をしていた。
いくら発情状態とはいえ、二人を乱暴にしてたのはおろか、男との経験の少ない彼女を乱暴してしまった事に…
「気が済むならば、この命でも…」
「いや、不老不死にそれは無理だし…」
「むしろ、そういうのよりも…責任取るしかないですね」
無論、彼女が望むのならばそうするのだが…
「うぅ…一時的に精神崩壊した上、私の武器と呼べる女の体に傷を入れた癖に…もう吸血鬼社会の上流階級へ登る事なんて出来ませんわ!!」
そう言いながら、彼女は着替えたドレスをマント化した羽で隠しながら俺を睨みつけていた…
やはり、幾ら何でも純潔を奪った事…それもトロール如きに奪われた事に対し、完全にプライドを傷つけられたのに我慢できなかったらしい。
しかも、相手が不死身だと分かってからか、八つ裂きにも出来ない歯がゆさも、彼女にとっては屈辱だったらしい。
「責任取れと言われましても、そんな貴方如きに何が出来ますが!!貴方に娶らされるぐらいなら、舌を噛み切った方が良いです!!こんな碌な女である私が!生きていく資格なんてありませんわ!!うぅぅぅ…」
そんな風に喚いて泣き続ける彼女に、手の施しようが無かった…
だが、そんな時…エミーがテレーズの前に立って行き…
何を思ったのか、テレーズの顎を持ち上げた後に唇を奪っていき、そして…
「あがっ…!?エ、エミー…!?そ、それはだ…め…」
あろう事か、テレーズの首筋に牙を突きたてて吸血していったのだ…
しかも、ある程度吸血し終えた後は…
「テレーズ、私の目を見なさい…」
「…はい。エミー…さま…」
眷属化の条件である魅了の眼力を使い、テレーズを魅了状態にしていき…
彼女を押し倒していった。
「今日から私が君の主だ…君の純潔、操の全ては私が預かり、守ろう…だから、生きていく資格が無いなんて言葉は二度と言わない事を誓約に誓いなさい」
「はい…わたしはエミーさまにみさおをささげ…せいやくにちかいます…」
エミーが誓約を交わした瞬間、テレーズの顔の前でエミーが両手を叩いて音を鳴らした。
すると、テレーズの様子は先ほどの状態に戻り、意識をハッキリさせてきた。
「え、エミー!?あ、貴女何をしたのか分かっているの!?」
「ええ。『ルスヴン卿の誓約』です。テレーズ、貴女が死のうとしていた事に私は心を痛めていた。確かに、錦治様に乱暴されてプライド傷つけられた事に嘆く気持ちは分かります。しかし、吸血鬼の女である貴女が子を成さずに死ぬなんてことは、私が許しません!今吸血鬼族全体がどういう状況なのか分かりますか!!」
そう言っていきり立ってきたエミーに、テレーズは沈黙した後に…
口を開いてきた。
「ごめんなさい…確かに、今吸血鬼族全体がそんな状態じゃないわね」
「正直、落ちこぼれで錦治様の従者と成り果てた私でさえ、吸血鬼族の全体の暗喩には危機感を覚えております。ですので、私よりも上位であるカーミラの血を引く貴女がそうであってどうするのですか?錦治様もその事で詫びておりますゆえに、まずは貴女から頭を冷やして意見を申してください」
「うん…本当に御免なさい」
「分かれば良いです…とりあえずは、純潔の保障につきましては、私が預かり申し上げますので…」
「あのぉ…エミー、お取り込み中申し訳ないんだけど…彼女、妊娠フラグが…」
冴子のその指摘が来た瞬間、俺はもう一度テレーズに向かって頭を打つぐらいに土下座をしていた。
「もぅ…過ぎた事で良いです。混種が生まれようとも…」
「あっ、言い忘れていたが…錦治の場合のあれは、母体優先になるから、たぶん種族の血は大丈夫かと…」
「あらそう。それなら大丈夫です」
そう言って立ち上がったテレーズを見た俺達三人はずっこけた。
どうやら、彼女にとってはカーミラという種族の血が混じってしまう事に恐れを抱いていたみたいだ…
「ま、まぁ…念の為、保障はするが…」
「ならば…住居が欲しいですわ。豪勢…とは贅沢は言いませぬが…」
「それならば、王都に向かったヘルツという吸血鬼の下に行けば大丈夫だ。彼に居住許可証と仕事の斡旋状を渡しているからな」
「まぁ、ヘルツったら…なら、私もお零れを貰いましょう。それとエミー…礼は及びませんが…ありがとう」
「どう致しまして…っと、その前にテレーズ。貴女は何か言いかけてなかった?ヘルツがどうとか…?」
エミーのその言葉に、テレーズはハッとなってたじろいでいた。
「あっ!?思い出しましたわ!!急いでヘルツに伝えないと!」
「彼に何か用があるのか?」
「いいえ!ストリゴイの彼に伝えないと!私達よりも上位種である吸血鬼族の…ノスフェラトゥ達がもう一度悪魔国に戦争を仕掛ける事に!!」
「なんだと!?」
「しかも、この国の人間を、何人か最下層のヴァンパイアとして眷属兵士も沢山作ってる話なのよ!!おかげで人間と交易があった他の亜人族が怒り爆発なの!」
「参ったな…どうする?錦治」
冴子のその言葉に、俺は迷わず決めていた…
「一度王都に帰還しよう…旅をしている場合ではない。テレーズ、ついでだから君も一緒に」
「無論、そのつもりで御座いますわ。こんな美人を乱暴にした分の代償はいくらでも払って貰いますから」
「うっ…」
「ま、まぁ…錦治様。ここは私も付き添いますから」
「すまん、エミー…。冴子、例の石を」
「ああ。あいよ」
そう言って、冴子は転送石を取り出して、俺達四人の中心に差し出した。
「転送石よ。帰還を命じる!」
転送石に魔力を注ぎ込めた時、石の中心に魔方陣が展開して、俺達全員を包んで転送を始めていき、一つの光として飛んで行った…
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