第6話 長い旅の道連れ

あの町から更に西に進んでみた所…

「原初の森」や「鎮守の森」、この前の北の山の森とは違う、紅い木々が生える森へと辿り着いた。


「これまた変わった森だな…」

「昔、本やインターネットで見たレッドウッド公園みたいに紅いな」

「この森を地図で見ますなら、『紅衣の森』と呼ばれて、季節に問わずに紅く染められた木々が生い茂る森として知られてると有りますね」

「そうなのか?エミー」

「ええ。しかも、比較的に魔物や亜人が少ないとされる地域とされ、原生動物など数多くの野生動物が住んでるとありますね。あと、この先は海に繋がっていると…書いてあります」

「海か…という事は、ここから先が海洋に出るわけだな」

「どうするんだ?錦治」


冴子の問いに対して、俺ははっきりと決めていた。

まだ海に出る必要はないと。


「当分先に行くのは無しだな。国を回るついでに制御するのが俺達の目的だし」

「それもそうだな。むしろ、あいつ等を連れないで海を渡るなんてしたくないし」


俺と冴子の意見に、エミーも同意してくれたらしく頷いていた。

と、その時であった。

丁度全員が腹の虫を鳴り始めていた。


「飯時だな」

「そうだねぇ。それじゃあ、一旦この森を眺めながら飯にしようか」

「では、私が料理を作りますね」


そう言って、エミーは蝙蝠の眷属を呼び出し、簡易調理器具を出しながら料理を始めていった…



本日の飯は、採取したバジリスクの卵のスクランブルエッグと野菜炒め。


保存用に焼いたフランスパン。


野性のイノブタの厚切りローストであった。


本当、エミーの出来たて料理が食べれるのは嬉しい限りだ。

今度、加奈子と共に料理のレシピを教えてやったら、色々出来そうだな。

ちなみに、彼女の故郷の料理を冴子と共に食べては見たのだが…見事に血入りのものばかりであって、結構こってりとしていた。

特に、血入りのソーセージは塩分がきつくて、薄味の俺からしたらちょっとだけ苦手であった…

まぁ、ソーセージ自体が塩分を濃くしないと保存食に向かないからな。


「どうですか?今日の味付けは?」

「悪くは無い。随分進歩した方だ」

「そ、そうですか…♪ありがとうございます」


俺達二人分の飯を食い終った所で、次はエミーの食事の番だ。

そう考えながら、俺は上着のボタンの上部分だけ外し、肩を晒してやった。


「では、良いぞ」

「はい、頂きます♪」


そう言いながら、エミーは俺の肩に噛み付いて血を出させ、ゆっくりと血を啜り始めていった。

基本的に、吸血鬼族は人間や亜人と同じ通常の食事でも大丈夫であるが、大抵は少量の血を啜るだけで一食分の食事を済ませる事が出来る。

特に、食事を終えた人間や亜人の血の栄養を代用する事で自身の体を保つ事が、出来るのであるが…


「発情してきたのか…?」

「は、はい…♪申し訳ありません…♪」


対象の吸血が愛する者になると、求愛の発情を起こし始め、昼夜問わずに求めてしまうのであった。

今日のエミーの服装は、男物のズボンとシャツといったスタイルであったが…

うん、両性具有特有の膨らみが上がっていたのだ。


「仕方ないな…冴子。ちょっと俺の背中に引っ付いて、あっちを」

「あいよ。今日のエミーは男装だから仕方ないね」


冴子も了承してくれて、俺の背中を引っ付きながら背を向けて、俺が行う行為に見ない様にしてくれた。

そして、俺はエミーの膨らみをゆっくり触って、優しくしてやった…






「はぁ…♪はぁ…♪」

「よし、順調に出したな…お疲れ様」

「あ、ありがとうございます…♪」


うん。彼女からアレを出させ終えた俺は、綺麗な方の手で優しく彼女の頭を撫でながらキスをしてやると、彼女も恍惚な顔ながらも笑顔になっていた。

すると、後ろから冴子が俺達二人纏めて抱きついてきた。


「錦治ぃ~…二人の所為で私も疼いてきた。抱いて」

「仕方ないな…んじゃ、二人共宜しく」

「あいよ」

「お、お願いします…♪」


そう言って、今度は二人の女を抱く事にした…




大体一刻ぐらいは過ぎた辺り、俺達は服を正して全員川の字になって寝ていた。


「スッキリしたか?」

「ああ。おかげ様で」

「私もスッキリしました」

「そうか。だが、もうちょっと横になって寝ておこうか」

「そうだね。流石の私もだるいわ」


そう言って、三人で寄り添ったところで…俺は冴子とエミーの頭を撫でていた。

そして、さり気に言ってやる事にした。


「エミー。お前の事なんだが…」

「なんでしょうか?錦治様」

「女としてなら、お前を妻の一員として抱くが…男としてのそれについてだが、もしもお前が抱きたい女が居たら、無理せずに抱いていいぞ。冴子は駄目だが」

「抱きたい女…ですか?」


俺の問いにエミーは困惑をしていたが、続けていった。


「正直に言うとな、両性具有の持つ奴は他に居てな。俺の弟でアラクネの女性になった奴なんだが…アイツも伴侶であるアラクネと付き合う前が性衝動で悩み、同じ別のアラクネの女性や亜人の女の子を襲いたいという衝動に駆られていた」

「えっ?蓮の奴、そんな現象が起きていたのか?」


冴子は驚きながら俺の話に食いついてきた。

まぁ、まだ話していなかったからな…


「ああでも、アイツはそんな無節操な奴じゃなく貞操概念が強い奴だったから、余計に辛かったんだよ。その度に、俺が抜いてあげてやったんだが…」

「シャルトーゼと引っ付いてからは、その心配は無くなった…と」

「そう言うことだ。まぁ、あの糞親父の血が影響もあってか、結局は村人の二人達も抱いてしまったんだが…あいつなりに自己責任で解決したからな」

「難しいな…して、エミーに何故それを?」


冴子の問いに、エミーは察知したのか俺に問いかけてきた。


「まさか、眷属衝動についてですか?」

「そう言うことだ。特に、子が出来難い吸血鬼族の繁殖方法として、若い女性を血を啜って性交する事で眷属にする事が出来るからな」

「ええっ!?私の眷属方法と違います!?」

「…もしかして、ただ血を啜って魔力を注ぎこんで眷属にしようとしていたか?」

「恥ずかしくも…その通りです」


そう答えながら落ち込むエミーであったが、俺は優しく頭を撫でてやった。


「要するにだ。魅了状態が完全じゃない時に眷属の牙を立てた所で相手は服従をしない。男として相手を堕とすならば、牙を突き立てた後に優しく抱きしめて、雄が雌に快楽を与えれば良いのだ。…まぁ、俺が言えた義理じゃないが」

「錦治は下手くそだもんな。皆から弄られるし」

「…否定はしまいが、むしろそっちの方が良いだろ?」

「だな。あの西園寺みたいな糞女タラシの口説きにはウンザリだが」

「アレは一番悪い例だ。女を道具としか見てない…話が脱線したが、俺や冴子、あと俺の嫁達ではお前の男は満足させる事は出来ないし、将来的には厳しい」

「だから、抱きたい女が居たら眷属にしてでも置いておけと?」

「そう言う事になる。むしろ、ちゃんと手順を踏めばお前もハーレム世帯には、持てるかも知れないし、俺達の手助けできる人手を増やせるわけだ」

「なるほど…ですが…」

「分かってる。女としてのお前は、俺だけ物だ。良いな?」

「は、はい…♪」

「とまぁ、話し終えたら疲れたわ。ちょっと寝る」


そう言って、俺はエミーの頭を撫でると同時に冴子の頭も撫でながら、眠りに就いていった…


―――――――――――――――――――――――――――――――――――



錦治様が静かに寝息を立て始めた…


私がハーレムか…


確かに、人間の女性を何人か牙を突き立てて眷族のヴァンパイアに変えたが…

錦治様の指摘通りに魅了が不十分であったために離れて、他のヴァンパイアの子達に口説かれて奪われていた事に思い出した。


やはり、交わって快楽を与えないと駄目なんだろうか…


そう悶々と考えていたら、冴子様がゆっくりと起き上がって私の横に寝てきた。


「エミー、ちょっと話があるんだ…」

「な、なんでしょう?」


そう言いながら冴子様は私の顔に近づいてきた…

だけど、その冴子様の顔からは、嫉妬や怒りと言うよりも…物寂しい感じな…

とても辛そうな顔であった。


「お前、自分のステータスやスキルは見ることは出来るか?」

「も、勿論です」

「そうか…悪いが、ちょっと慎重に見てくれ…」


そう言ってくる冴子様の言葉通り、私は静かに目を閉じてステータスを見た。


種族は…吸血鬼族らしくヴァンパイア。

容姿や状態は今と相違無し。

スキルは…不老不死…吸血吸精…エナジードレイン…眷属化…魅了持ち…

あっ、人間限定ね。あとは…蝙蝠眷属使役、異次元操作、王の寵愛。


ん?王の寵愛?


なんだろう?このスキルは。


「あっ、最後の所に『王の寵愛』と言うのが…うわっ!?」


その瞬間、私は冴子様から抱きしめられていた。

しかも、泣きながらで…


「ごめん…いらないスキルまで与えてしまった…」

「えっ?な、何故泣いているのですか…?」

「いいか…?落ち着いて聞いてくれ…それは…」


冴子様のその後に続いた言葉に、私は石で殴られたぐらいの衝撃が走った。



「つまりは…私は冴子様と同じく、錦治様に抱かれれば強くなる代わりに…子が成せない体になってしまったと?」

「そうなんだ…迂闊だった。私の血を取り込ませたばかりに」

「もしかして、錦治様が先ほど進めてきたのは…」


冴子様曰く、錦治様の言葉に違和感を覚えたのか…内緒で私に分析魔法を掛けて見たところ、自分と同じスキルである「王の寵愛」を引き継いでしまった事に、気が付いてしまったのだ。


だから、先ほどの会話で冴子様が怒られなかったのですね…

ですが…


「大丈夫です…冴子様。むしろ、錦治様の子が宿す事はできないのは残念です」

「ごめん…本当に…」

「ですが、一つ安心しました。万が一私が敵に捕えられ、無理やりに交わされ、敵の子を生むという錦治様との裏切りである不貞を作らずに済む事に…」

「エミー…お前…」

「吸血鬼族の間では珍しい事ではありません。自分の家族の女を平気で攫って、孕ませ、子を産み落として裏切らないようにする事など、ザラです。ですので、私が半分男の性を持っているのは、攻めの意味を込めて持っていたことです」

「そうだったのか…」

「ですので…私が錦治様はおろか、冴子様や他の奥様の方を穢す者や錦治様を誑かす人間の者がいたら、私が従属させてみましょう」

「…お前がそう言っても、私は」

「ええ。その代わりに、女としては…錦治様の為に奉仕します…無論、それは冴子様の為にあります」


そう言って、私は冴子様の首にキスをしていった。


「…貴方も大事にしてください。同じく錦治様の道連れであり、愛されるべき女で御座いますので」

「それは私の台詞だ…だから」

「いいえ、これ以上は貴方を女として抱きません。錦治様の盟約です。だから」


私はそう言いながら、冴子様の唇を重ね合わせた。


「これからは、女同士で…お互い誓い合いましょう」


私は改めて、冴子様に誓った。

あの冴子様の中の快楽は、確かに魅力だ。

だけど、冴子様の全ては錦治様の物。

私も、体の全ては錦治様の物だ。

だから、私は同じ者同士で、同じく愛する者の為に誓いを立て、お互いで不貞を結ばない様にし、女同士として寄り添う事にした。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――




ほんの少し仮眠してしまった。

と、思って起き上がろうとしたが、左腕で冴子とエミーが抱き合ったまま寝てたので、起さない様にソッとしておいた。

恐らく、冴子がエミーの事で聞いたのだろう。


だけど、子が出来ないとはいえ、俺の大切な人達だ。

だから、その分は全力で愛し愛でてやろう…

そう誓いながら、俺は二人ごと優しく抱きしめてやった…






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