第31話 ”種”への考察、兄”弟”との決闘

アレから数日…

念の為、俺の中にある創生の力や八雷達が無事なのか調べ続けたら…

特に以上は無かった…

が、さくからはある指摘がされてしまった。


「確か、男の種を取られたと言ってましたね」

「ああ。そうだ」


部屋の一室で呼び出された柝は、一緒に出てきた若をあやしながら問いに対し、悩みながら答えていた。

力も取らず、況してや半場眷属化している厄神も引き抜かれないでの交じり合いには、互いに疑問を持たざるを得なかった。

いや、俺からあるとするなれば、同じ能力を扱えるかどうかになるぐらいだな。

だが、柝から言わせるならば、それはありえないと答えていた。

現代で言うならば、創生の力は指紋や静脈、DNAという感じに個々しか持っていないものであり、クローンでもなければ同じ能力は扱えないと。


ただ、考えられるとするならば…子に継承する事による強化かもしれないな…



「もしかすると、本当の『魔王』を産み落とす為かもしれないですね」

「うむむ…だが、アイツの所在所か不老不死とは違う不死身に近い奴をどう倒せと言いたくなるが…」

「まぁ、育つとなれば…軽く15年か20年は掛るな…」

「それにしても、父様は女性に弱いですねぇ…なんかこぅ、押されてしまえば…あとはなすがままという感じに」

「否定はしまい。俺もまた、昨今の情けない男と言えるべき奴と変わらん」

「そこまで卑下をしなくても良いですけど…まぁ、この世界を見る限りは…男は強くなる上で数の多い女を娶ると言うのも大事ですかもね。逆に言えば…そんな女達を守ると言う義務が生じているかもしれませんね」

「そうかもな…」

「まぁ、父様と交わった女性達は裏切る事は無いでしょう。これは私から言える権限です。例え父様以外の男が父様の女性を奪って交じり合った所で、嫌悪だけしか覚えず、子を成す事も無いでしょう。母様と八寵姫様達は勿論の事、昨日の西方の鬼に転じていた山城要も、父様を裏切る事は無いです。まぁ、これもまた伏雷ふすいかづち兄様の配慮が入ってますからね…」

ふすが…?何故にだ?」

「あの兄様は、神族からすればタラシの部類に入りますが…女性に対して誠実を守るお方ですからね。特に、枕元を寝取る男に対しては、不能にしてそのまま、生き地獄を味あわせるぐらいに男女の恋愛に関して鬼になります」

「敵に回したくないな…」

「ちなみに、父様に一目ぼれさせた女を引っ付けさせようとしてる原因は兄様であったりします」

「おい、ちょっと呼び出させろ。説教するわ」

「お願いします、説教呼び出しだけは止めて下さい。私の胃がやられます」


そう言って土下座する柝に若は俺達二人を心配そうにして見てきたので、止めて置いとく事にした。

…どうやら、問題児の一人らしいな。





結果として、俺と交わった女性は不滅の仲としての眷属化に出来るらしい。

ある意味チートに近いものであるが…それはそれで複雑なものであろう。

但し、俺以上に力のある『王』の素質を持つ者と交わった場合は、眷属化は不可になるとか…

そう考えるならば、クラリッサが上位的だったら眷属化は不可能だった。

まぁ、見ての通りに箱入りアホ娘であったから、簡単に出来たんだが…

むしろ、本人がぞっこんになっていたからどうしようもないがな。


問題とするならば…今後はウダウダ考えていたら取られると言う可能性もあると言うわけか…

ちなみに、闇側に属してる面子は全員両性のナニ持ちだから、遠投ながらも眷族操作が出来るかもしれないな。

まぁ、それを言ったら一番最低な行為でもあるが…


とそんなモヤモヤした考えをしていたら、蓮が久しぶりに一人だけで近寄って、俺に引っ付いてきた。


「兄さん。ちょっと付き合ってくれないかな?」

「どうした?何時ものあれはまだ…」

「いや、ちょっと殺し愛に」


…ああ、そう言うことか。

そういえば、随分とストレスも溜まっていたそうだからな。

…どうせこいつも不死になった身だ。殺りあうか。


「いいぞ。場所は?」

「刀だけだから、王城のバルコニーでも」

「ならば、俺は拳だけか。無論、力は抜きでいいな?」

「うん。…久しぶりに兄貴と喧嘩したくてよぉ」

「なんなら、拳で語り合うか?」

「そいつは最終手段だぜぇ兄貴ぃ…俺ぁ今兄貴に苛ついてるんだよ」


そうか。やはりそう言うことか…

こいつなりの嫉妬だな…

ならば、フェイシャは呼ばない方が…いや…


「見物は要らんか?」

「ああ居た方が楽しいかもなぁ~。昔、兄貴と一緒にゾクの格好して、バイクで走り回りながら喧嘩する際にギャラリーが居るほうが楽しいからなぁ~…」


あっ、完全に発作出ているな。

仕方ない、アラクネ女になっても”愚弟”であることには代わりはない蓮に付き合うとするか…


「そうだな…ただ、勝負するだけでは詰まらんからな。負けたらどうする」

「俺が勝ったら、一晩中兄貴を犯すとはどうだぁ?」

「それこそ中学の時みたいにか?俺をケツを?」

「ありゃあ傑作でもあったがぁ…俺としては兄貴の口を×××で犯してやったら最高かもなぁ」

「いいだろう。じゃあ、俺が勝ったら…久しぶりにお前を全力で愛してやろう」

「いいぜぇ…好きなだけ犯されてやんよ!!んじゃ、行こうか…兄貴ぃ!!」


そう言って俺達二人はバルコニーへと駆け走っていった…





気が付いた時には、俺と蓮はお互い服を掴み組みながら顔面を拳でぶん殴りあい続けていた…

無論、蓮は刀など地面に投げてる状態でだ。


「あ、あわわわ…」

「あー…蓮の奴、地の性格が出ているな…」


声を効く限りは、エミーやクラリッサあたりは顔青ざめながら、口元を押さえて震えてるだろうし、フェイシャもまた師匠である蓮の一面を見ながら驚きを隠せないんだろうな。

一方で、冴子ら何時もの五人は連の地の性格を知っているのか、一種のガス抜きだと認識して静観をしていた。

無論、引き止め様に買ってくれたのは冴子達と…蓮の妻であるシャルトーゼ本人であった。


以外と、蓮の本質を見抜いていたんだな。彼女。


一方で、取り乱していたのは山城先輩…いや、要であった。


「一体何があったの!?ねぇ!?」

「先輩落ち着いて!あいつ等は唯の喧嘩なんだよ!!」

「喧嘩にしては派手すぎるわ!あんなに血が飛び散って…!!」


あー、言われたら確かに、互いに口の中を切って血が出てるし、顔が痣だらけになってるしな。

だが、そんなのはお構い無しでやらねばな…

それにしても、以前だったら歯や顔の骨にヒビ入りそうだが…お互い不老不死になってからは折れるどころかヒビが入る事が無いな。

ならば、一掃過激になれそうだな。


「おらぁ…蓮!もっとぶん殴ってみろ!!お前の力はその程度か?」

「ハッ!抜かせよ戯けがぁ!てめぇが何時もまでもつえぇと思ってるのか!!」


そう言って、アラクネらしくない怪力でぶん殴られた俺は、歯ごたえをかみ締めながら蓮の美顔に数倍で殴り返した。

随分と育ったな。だが、まだまだ…!!


「やるじゃねぇかよ。兄貴…今のは本気で効いたぜぇ…」

「そうか。なら倒れろよ」

「ハッ。それぐらいなら最初っから喧嘩売らねぇよ」

「何に苛ついてるんだ?俺が不甲斐無く、貞操がだらしないからか?」

「それだよ…なぁ兄貴。確かに俺達の親父は糞最低な野郎だ。平気で女を変えてヤりまくってさぁ…挙句のサンパチに俺の母さんを捨てて自殺に追い込んでよ…そんな糞男を見習ってしまったらハーレムなんか嫌悪するよなぁ…!!」

「…ああ!そうだよ!!あんな糞親父だからこそ俺は女を抱く事に戸惑うんだ!お前も元男なら分かるだろ!!」

「ああ分かるぜぇ…シャルを女として抱くまでは女を抱く事に恐怖を覚えたし、兄貴に掘られる事で女のなりになってたしな…だけどよぅ…シャルを抱き始めてやっと気付いたんだ…好きだと言ってくる女を抱いてあげて、捨てないで大事にして愛してやれば良いんだとよ…シャルが抱かれる度に行っていたんだ…自分は抱かれても良い女ではないんじゃないかってなぁ…だけどなぁ、俺は言い返してやってるんだ。男が女の容姿や性格で選んで抱くんじゃねぇ…その女が惚れてるからこそ、答えて抱いてやるんだとよ!!」


その言葉と同時に、蓮が渾身の一撃で俺の顔面に叩きつけて、鼻の軟骨を折ってきた。

今のは本気で効いたな。


「だからよぅ…抱けよ。本気で好きだと言って惚れてる女が居たなら抱いてやりなよ…兄貴…俺の母さんみたいな女を増やす様な真似をしないでくれよ。頼む…」

「本音がそれか…確かに、お前の言う通りだ。だがな…俺も鈍感じゃねぇんだ!確かにソイツが俺に惚れている事もある。だが…ソイツの望み通りに抱いてさ…ソイツが好きだった奴を気持ちを踏み躙って良いと思ってるのか!!」

「はっ!それは出し抜けねぇ奴が悪いんだよ!例え兄貴に惚れてても!そいつが一生懸命に答えてやれば!女は答えるんだよ!!女を舐めるな!!」

「じゃあ!男が腐ってると言う事か!!?」

「ああ!そうだよ!この世界はおろか!あっちの元の世界の男は腐ってるんだ!本音をぶつけ合えば女は惚れると言うのによ!フラれるのが嫌だとか気持ち悪いと言われるのが嫌だとか言って!告白もせずにウジウジと後ろに下がってさぁ!『俺は負け犬だ』とか抜かす男に反吐が出るんだよ!そして!今の兄貴はさぁ!そんな『負け犬』と同じ事抜かしてるんだよ!!だから!もっと男の大人になりやがれ!!」

「抜かせよ!青二才が!!お前の全てを…これでも理解してるんだ!!」


そこから更に過熱して殴り合っていった…




一時してからか…まだ互いに死んでいないのか、顔中が酷いものであった…

美顔だった蓮の顔は無数の痣で浮腫み、血だらけに染まっていた…

対する俺もまた、眼球が潰れて陥没し…血だらけに染まっていた。


「これで…ラストだな…」

「ああ…」


『歯を食いしばれやぁ!!』


見事なストレートがお互いの顔面に入り、ノックアウトした…

意外と…最後のは本気で効いたな…


「…強くなったな」

「兄貴ほどじゃねぇさ…」


その言葉を最後に、お互い意識を失った…

うん、間違いなく流血による失血死確定だな…





して、次に目が覚めたのは…何時もの一室であった。


「…冴子、蓮は?」

「隣に居るよ。もう目が覚めてる」


ベッドの隣には、既に蓮が起きて人型で立っていた。

無論、顔の傷は完全に感知した状態でだ。


「…スッキリしたか?」

「うん。男言葉も余り出なくなった。して、兄さん…さっきの答えは?」


蓮の真剣な眼差しに、俺は起き上がって答えていった。


「確かに、不甲斐無いと思っていたな。…お前の言う通りに、本気で惚れてる…いや、真意を聞いた女は…抱くよ」

「それで良いんだよ…この異世界じゃあ、日本の法律なんて関係ない。むしろ、生き残る為に…女は時として敵国の大将の男を抱いて子を成して、敵国の政権を転覆して自分の国に作り変える復讐をすることだってある。直子さんだってさ…言ってたじゃない。あの女…国塚に無価値だと言わせる為なら強い子を産んで、アイツの子どもを倒してしまえば良いんだって。そう言う復讐方法だってある。もしもアイツの子どもが娘なら、僕達の闇側が汚してやってもいい」

「そう言う事を平気で言うものではないが…やれるか?」

「兄さんが望むならば」


その蓮の真剣な眼差しに、俺は少し溜息を付いて答えた。


「分かった。だが、最後の以外のだけはお前達に任せることは任せて、お前達が許せて惚れてる女は全員抱こう。そして、責任も取ろう…」

「それでこそ兄さんだ…何も昨今の様な『後ろに下がってるだけで、女子どもに戦わせてスケベ心だけが一人前』な男とは違う。ちゃんと男を果しているんだ。だから、自信を持って…」


そうだな。

少なくとも、俺はああ言う奴等とは違う。

それを蓮が示してくれたのだ…

だから、この”愚弟”に答える”愚兄”になってやろうじゃないか。


そう思いながら、俺は蓮の頭をポンポンと叩いてやった…


あっ、そういえば。


「蓮。さっきのアレ…結局どっちが勝った事にするか?」

「えっ?ええっと…引き分けじゃあ、駄目?」

「納得できんな。そうだな、久しぶりにお前が勝った事にしてから…口で相手をしてやろうか」


そう言って、逃げようとする蓮を捕まえた俺は、蓮が着ているワンピースの中へ潜りこみ、両性具有のアレを…


「ちょ!?に、兄さん!?や、やめっ…アッー!!」


男と女の中性に近いハスキーボイスを木霊させるアラクネ女”弟”に、俺はゲス笑みをしながら楽しんでやった…




ちなみに、心配して見に来ていた他の女子はおろか、王城内の女性達全員は蓮の木霊する媚声に腰を抜かして発情していたらしい…






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