第20話 亜人達の取り決め、再び”試練”へ
アレから二日後…
前回の会議にて上げられていた仲裁案の解決策の案を御触れとして、王女であるクラリッサが、城下町の中央広場にて交付した。
「皆のもの、良くぞ集まってくれました。私は暫定王国の頂点であるクラリッサと申します。本日より、我が国における部族間での喧騒、及びに紛争が起りうる事を禁ずる上で…これらの部族における騒動を未然に防ぐ為の代替案を今ここで施行することを宣言いたします!」
王女からの言葉に、城下町内に在住する各亜人族の住民は騒然となっていた…
まぁ、今まで部族同士で喧嘩が起きてたが、今後は禁止すると言ってるからな。
反発するの仕方ない。
「そして、その部族間の騒動に対する代替案と言うのが…各部族からの代表者を選定し、その部族の代表者同士による決闘を許可する事を、ここに宣言する!」
王女のその宣言に、亜人族が一同に唖然と成り…一人のオークの若者が手をあげながら意見を申し出てきた。
なので、王女の隣に居た俺が、彼に指名をしてあげる事にした。
「そこのオークの青年、どうぞ」
「あのぅ…それって、部族総出による紛争は禁止するが、部族の代表同士なら、決闘をしてもいいということですか?」
「そういうことだ。但し、決闘方法は…今から俺が内容を説明をする。後日にてもう一度お触れの内容を流しておくが、決闘方法はこうである」
そこからは、王女から代わった俺が決闘方法であるルールを説明した。
・一つ、決闘を行なう場合は日時と場所を指定する事。
・一つ、決闘を行なう当日は、第三者の立会人を必ず立てる事。
・一つ、双方に不利益が出ない様、部族によっては戦う前の制限を設ける。
・一つ、双方に死者を出しては成らない。但し、事故による死者が出た場合は、第三者の審判によって原因究明をするべし。
・一つ、敗者側に永久的な隷属及び生殺与奪を与えては成らない。
・一つ、これらの上記を破った勝者はその決闘を無効にする。
・一つ、これらを破り、部族総出による乱闘を起した場合、両部族に処罰する。
・一つ、万が一事態が収拾が着かない場合…騎士団及びに、創生の力を持つ者による鎮圧する事なり。
…以上の八つの箇条におけるルールを、俺が宣言して言った。
それと同時に、オークやオーガと言った戦闘亜人族からは拍手が鳴っていた。
彼らの多くは、俺達のような法治国家みたいな裁判みたいな長期における法廷の争いが苦手であるため、この方法による決着の方が安定するだろう。
だけど、そうではない亜人族も居る為、念のために付け加えておいた。
「一応、現段階での戦闘亜人族向けでの決着方法だ。中には戦う事が出来ない、亜人族も居る。その場合は従来通りの法廷による裁判が行なわれるので、そこは誤解が無い様にして頂きたい」
「んだどもぅ…なしてこげな御触れを出されただぁ?」
別の年配のオーガの男性が俺に問いかけてきたので、今の王国の現状を城下町にいる住民に説明をしていった。
「既にご存知の方を居られるが、今この国は復興の最中である。しかし、それを良しとしない勢力として…かつての人間至上主義の貴族達に企てた魔術教団に、隣国である悪魔国の影が見受けられた。そして、その悪魔国から亡命した吸血鬼族の中にて、この国で反乱を起して自分達の国を作り、悪魔国にもう一度戦争を企てる種族、ノスフェラトゥ達との戦いがいずれ起りえる。その為にも、諸君ら亜人族の住民が一丸として纏めようする矢先に、死者が出そうな騒動を起してはどうするのだと、俺からはそう言いたいのだ。ゆえに、諸君らには今一度、この国を新しく立て直す為にも、矛先を一つに纏めて協力をして欲しいのだ」
俺のその言葉に、住民は一部を納得はしなかったものの…ある程度は納得して、了承をしてくれたようだ。
「後日、不備があると思う者は、王城か各現族長に申し出てくれ。それによって修正する事に善処する」
「戦争状態だかんなぁ。仕方あるめぇ」
「んだともっ。王女様、それにお付きのトロール様、ありがとさん」
「では、これより解散致します!皆のもの、清聴に感謝します…」
クラリッサの宣言によって、広場に集っていた亜人族の住民達は解散して行き、家路に着くもの、もしくは仕事場に向かうものへと分かれていった…
「…ふぃー、疲れましたぁ」
「お疲れ、クラリッサ。だが…もう少し、王族の言葉を減らした方が良いかも」
「それは無理なんじゃ…お父様の喋りがあんな感じだったので、どうしても…」
そう言って、既に自室と化してる俺達の客室にて、クラリッサは俺の太股の枕にしながら融けて伸びていた。
…正直、これから先の政治の頂点に立つ奴が、これであってどうするんだ。
一方で、俺の上げた決闘ルールを精査していた何時もの五人、蓮、フェイシャ、エミー…そして、ギルバートさんやヘルツ、テレーズ、デュミエールを含めて、その内容に色々と考えてはいた。
「うーむ…確かに問題は無いが…」
「よくもまぁ、こんなものが思いつきますねぇ…」
「普通、決闘なんてルール無用でやる者が多いですのに…」
ギルバートさん、ヘルツ、デュミエールの三人は意見をそう述べた。
まぁ、実際には…最初は絶対守らん奴が居るだろうしな。
一方で、冴子あたりは加えなかった文を読み終えたあたりに、何か遠くへ見るような目で俺を見ていた。
「錦治…これ、あっちの世界でやってた決闘方法じゃん…」
「ああ、そうだが?」
「よくもまぁ…こんなのが思い出したわね…」
冴子と良子に呆れられながらも、「まぁ、錦治だし」という感じで諦めて開き直っていた。
というより、あの頃は細かく設定しておかねば、集団で来ていたからなぁ…
一番酷い時は、暴走族数十人を使ってきた他校の不良と決闘したぐらいだしな。
と言っても、何時もは良子が作った手製の罠や爆発物を投げて混乱させて、俺と冴子の二人でボコって居たからな。
残りの三人は後始末と言うか、警察が来ないかを監視させてたぐらいだし。
ちなみに、普通は決闘罪で逮捕される事があるから…まず相手にばれない様に、場所を指定するのが大変だったわ。
「それ以前に、貴方達の元いた世界が怖いですわ…」
「一応言っておくが、これは俺達ぐらいだからな。普通の奴らはまずしない」
「ていうか、不良同士の喧嘩なら良くあるだろ」
「そもそも…学生同士で何をやっているんだ…」
そんな元学生だった俺達に、ギルバートさんは頭を抱えていた…
いやぁ、あの時代は喧嘩三昧でしたからね…
そんな議論も終えた後、昼食を食べてからは鍛錬を再開する事にした…
と言うわけで、早速創生の力を出すことにした。
「数日振りに呼び出すなぁ…”御出でませ…
詠唱終えたと同時に、
少し不機嫌な顔をしていた。
何かあったのだろうか?
「父様…なんですか。あの様は…」
「正直、すまんかった…というよりも、あのお袋の創生の力は一体何なのだ?」
そんな俺の質問に、柝は少し考えながら…すぐさま答えを返してきた。
「恐らくは、呪殺類の力だと思いますが…何かちょっと違うのですよね」
「例えば?」
「何か、妬み辛みがあって、わざと押さえつけてくる感じですね…しかも…」
「ちょっと待って、あの時の呪いを諸に受けた私から言うなら…何かの怨念を押し付けてくる感じを与えてきたんだけど…なんて言うか、子どもみたいな…そんな感じのこの悲鳴も混じってたんだよね」
冴子の指摘に、柝は「あっ!?」という顔をして思い出し、俺達に告げてきた。
「思い出した!あれ、どう見ても
「なんだと…?」
「うん、間違いない…あれは、大人になる前や生まれて直に死んだ子ども達の怨念によって形成されている。だから、そんな怨念を羨ましいや妬ましい等の相手に対する嫉妬の感情を持った者に、目に見えない怨霊と化した子ども達を流し込ませ、怨霊達に創生の力の源である魔力を奪わせ、死んでもなお味わい続ける苦痛を相手に流し込ませる…それが、あの女の創生の力かもしれない」
年場の行かない死んだ子どもや赤子の…怨念を流し込むだと?
いや、あの糞お袋ならやりかねんな。
むしろ、あの悪魔の姿は…もしかすると、生贄を使用した転生儀式を行なったかもしれん。
いずれにせよ、力の原理は分かっても…現状では打破できないな。
しかし、お袋の力をあれこれ考えてはいけないな。
まずは、俺自身の創生の力…そして、冴子を含めた残りの九人の創生の力を、どうにかしていかないとな。
でないと、いずれ起りえる”乱の時”に耐える事が出来ないと思うからな。
「では、柝…一から鍛え直す形で、頼むよ」
「畏まり、父様」
そう言って、柝が戦う意思を表した所で、何時もの鬼の様な鍛錬が始まった。
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