第4話 吸血”少女”
あの山から西に進んだ俺達は、荒れた道から綺麗に舗装された街道へと出て、その街道を歩いていった。
「ここを真っ直ぐ行くと、シャルトーゼとは別の貴族の領になるみたい」
「久々の人の町になるか…どうなるかだな」
そう言いながら、俺達はその町へと進んでいった。
だが、街道の途中から畑を見ていったら、だんだん怪しい雲行きになっていた。
ここの畑は、最初の村よりも肥沃で、植物的には栄養豊富で育ってはいたが…
人の手入れが数ヶ月も入っておらず、雑草が生い茂って手荒れ放題になってた。
まるで、集団で夜逃げしたような後みたいに…
「嫌な予感がするな」
「ああ、気をつけるよ」
そう言いながら、俺達は目の前に見える屋敷が立っている町に入っていった…
町の中は音沙汰も無いぐらいに無人の空間に包まれていた…
この町の中心にある屋敷やその周りにある民家は、人の手入れがされてるほど朽ちては居なかったが…全くと言っていいほど人の気配が無い。
まるで、神隠しされたかの様に人間だけがいないのだ…
「全くと言っていいほど人がいないな…」
「ゴーストタウンとは正にこの事だな。もしかしたら、幽霊として後ろに…」
「ちょっと!止めてよ錦治!!私はお化けが苦手だって!?」
「はははっ、冴子は怖がりだな。小学校のお泊りでやった怪談話の時も…」
「あっー!やめっ!やめっ!!思い出したくない!!もぅ…」
そう言いながら女らしく起こる冴子を、俺は微笑みながらあやしてやると…
少し涙目になって拗ねてた冴子は段々と機嫌をよくしてくれた…
だが、そんな和んだ空間を、一瞬にして崩れ去った。
「冴子。走るぞ」
「あ、ああ!?」
その瞬間、俺と冴子を囲む様に黒い何かの物体が覆って行き、視界が確保をできない程に膨れ上がった。
「遅かったか…」
「どうするんだよ。錦治…」
「屋敷に誘導されてるな。大人しく従おう」
そう言いながら、俺達は黒い物体の指示通りに屋敷へと誘われていった…
屋敷に入った後、気が付いたら俺達は天上にぶら下がる鎖で拘束されていた。
無論、俺は上半身裸のズボン姿。
冴子に到ってはインナーの下着姿であった。
なので、ホワイトオーガらしい白い肌が露出しており、エロさを際立たせていた…
「全く、悪趣味であるな…」
「変態趣味が出ているな。…あんまり見ないで頂戴よ」
「相変わらず綺麗な肌をしてるからな」
「馬鹿…と、あんまりチャラケる状況じゃないな」
「どうやら来たみたいだぞ」
俺がそう言うと、石畳を歩く音と共に現れたのは年場の行かない少年であった。
ただ、その背中には蝙蝠の羽がマント状になっており、唇からは牙が出ていて、あからさまに人外の者であると人目で分かった。
悪魔族の亜人であり、アンデッドに近い種族で吸血鬼で有名なヴァンパイアだ。
そんな少年吸血鬼は俺達を拘束している牢屋の扉…といっても鍵を掛けてなく、そのまま開けて入ってきた。
「ようこそ。亜人諸君、私はこの屋敷の主、エミー・ヴァレンタインだ」
「捕虜相手に自ら名乗るとはな…俺の名は錦治」
「冴子だ。…私達を捉えて何をするつもりだ?」
「何をするつもりって…私のご飯になって貰いたいかな?」
そう言いながら、エミーと名乗ったヴァンパイアは冴子の胸を揉み出して行き、あまつさえ下着越しで吸い出してきたのだ。
「うぁ…!こ、こら…やめろ…!!」
「…んはぁ♪下着から漂う汗臭さと母性溢れる香り…元人間と見たね」
「わ、分かるのか…!?」
「ええ。こう見えても、異世界人の血も頂きましたし…さて、次は…」
そう言いながら、エミーは俺の傍に近づき…マント状の羽を俺の下半身ごと隠しながら、ズボンを下ろしてきたのだ!?
「お、おい!お前、男だろ!?」
「こう見えても、私は両刀なんですから…♪…ん♪」
「うっ…!?ああああああ…」
あろう事か…うん、俺のアレを咥えて来た…
何をしているか言えないが、間違いなくマントで隠された世界ではそんな感じ。
…ある意味屈辱であったが、快楽には勝てなかった。
だが、その時である。
同時に腹近くの肉を噛んできたのだ。
「くっ…!お前…!!うっ…」
エミーが血を吸いだすと同時に、あれも飲み込んでいく感触が伝わってきた…
正直、泣きそうであった…
それと同時に、飲み干して恍惚で妖艶な顔をした少年は目を潤ませて俺を見ていた…
「最高だよ!トロールと人間の混ざった様な血だと思っていたが、なんだろ…物凄く甘美で…白いアレの味と合わさって至高にして究極の味にな…うっ!?」
その瞬間、エミーの奴は体を震わせながら地面にへたり込んでしまい…
内股座りをしながら、紳士服越しで足元に水溜りを漏らし始めていた。
「な、なんで…体が火照って止まらない…!!」
「そうか。そいつは残念だな…!!」
そう言って、俺は怪力任せで鎖を天上の根元から引っこ抜き、創生の力でもある黒い炎を使って拘束具を溶かしていった。
同時に、冴子も鎖を根元から引っこ抜き、俺の力を使って拘束具を外していった。
「な、なんで!?
「生憎だが、俺達はドレイン無効だ…」
「その上、錦治の魅了持ちの元である血と、男のアレを飲んじゃうとはね…。体、とても辛そうだな…!!」
そう言いながら、冴子はエミーのワイシャツを引っ張って脱がそうとした瞬間、エミーの体に似合わないぐらいの大きさの胸が下着ごと曝け出してしまった。
「きゃあ!?み、見ないでぇ!!」
「なっ!?お、女だったの!?」
「いや、正確には…」
俺はそう言いながら、エミーのズボンを下着だけ残す形で脱がしてやると…
そこには女性には無い膨らみがあった。
「い、一体どういう…!?」
「冴子。俺が押さえるから、膨らみの裏側の部分を触ってみろ。分かるから」
「あ、ああ…」
「止めて!触らないで!!」
エミーの抗議の声を無視しながら、俺が押さえてる合間に冴子はエミーの下を触っていった…
どうやら、気付いたようだ。
「りょ、両方ある…」
「ああ。アラクネ化した蓮と同じ両性具有だ」
「うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
どうやら、本気でプライドを傷つけたらしく…少年風吸血鬼の少女は、大声で喚きながら泣き出していた。
仕方ないので、一時の間は冴子の胸の中で泣き腫らして落ち着かせてやったら、
冷静になってくれたようだ。
だが…
「俺達を監禁して裸にした挙句、俺からは搾り取ったからな。分かってるな?」
「は、はい…分かってます」
そう言いながら、しおらしくなってしまったエミーは俺達の質問に答えていた。
彼女は悪魔国でも有名なヴァンパイアの氏族家系であったが、先刻の吸血鬼族の反乱によって、謀反の疑いに巻き込まれて氏族どころか肉親達も分かれて難民になり、何人かのヴァンパイアで集まりながら、この辺りで放棄されていた屋敷を発見して棲家にしていたそうだ。
しかし、ヴァンパイアとは言っても、能力にも差があり、彼女は一番下であり…
皆からは駒使いにされた挙句に何時も失敗ばかりした上に、眷属としようとした人間達からは、眷属のヴァンパイアにした後は忠義心もなく何処かへ飛び去ってしまい、誰にも相手をされずにおったそうだ。
そして、次第に最初の仲間達も役立たずの彼女を捨てて何処かへ消え去り、この屋敷で一人で暮しながら、旅人の人間を誘い込んでは血を吸うも、直に何処かへ消え去っていくという時を過ごしていた。
そして、この際だから亜人でも良いやと、やけになった所で、俺達二人を見つけて襲い掛かり、血とアレを吸い取ってから眷属にしようとしていたのだ。
なお、男装は威厳を保つ為に行なっていたらしい。
「それが、今回のこの様か…」
「ううぅ…どうせ私は駄目吸血鬼ですよ…もう、一思いで殺してください…」
「あのさぁ…そんな事ぐらいでへこたれてどうするんだよ?私らの人間時代は、あんた以上に苦労していたんだからな」
そう言いながら、冴子はエミーに…俺達の学生時代の三年間を全部話していた。
そして、全てを聞き終えた辺りで…
「ごめ゛ん゛な゛ざい゛ぃ゛わ゛だじがわ゛る゛がっ゛だでずぅ゛」
「はいはい、泣くな泣くな。鼻水を咬め」
エミーの奴は鼻水を垂らしながら泣いていた。
…情に脆すぎだろう。こいつ。
「して、どうすんだよ…」
「とりあえず、拘束も解けたんだし…一旦全員で身奇麗にしようか」
と、立ち上がろうとした瞬間、エミーが震えだしてきた…
「あっ…♪だ、だめぇ…♪か、からだが…♪♪」
「いかん!?魅了状態による発情だ!!」
「えっ?な、なんで分かるの!?」
「前に話しただろ!西園寺の一族の宴の…!実は、あれの宴に贄とされた女の大半は、糞親父や西園寺に魅了されて発情した女性が使われていたんだ!」
「な、なんだって!?」
「糞っ…忘れていた。今の俺が亜人種限定で発情させてしまうのを…冴子!」
「…分かっているよ。頼む」
「それもあるが…もう一つ頼みが…」
そう言って、俺はエミーが持っているもう一つの膨らみを指差した。
「…まさか」
「そうだ。手でも良いから、やってくれないか?頼む…毒を出すには…」
「…ああ!もぅ!!分かったよ!!そのかわり…!!」
「ああ。幾らでも相手してやる」
お互いそう言いながら、発情しすぎて苦しむエミーを救う為、二人係でエミーを抱いてやった…
「本当に御免なさい!!」
「いや、こっちこそ謝らねばならないから…」
「うん。気にするな」
あの後、三人で辺り一面が真っ白になるまで撒き散らした事により冷静になったエミーは、俺達二人の前で頭を下げ続けていた。
無論、俺も冴子も怒っては居らず、むしろ風呂までも提供してくれたエミーに、感謝をしていた。
なお、あの後は冴子の怒涛のアプローチで、本気で俺は干乾びそうになったが…
して、今は香草風呂…吸血鬼は真水に浸かると力抜けて発情してしまうのを防止する為であるが、俺と冴子と共に三人で湯船に浸かって癒していた最中であった。
「し、しかし…」
「もはや、お前を怒る理由も無いし、逆に気を使ってしまう」
「とりあえず、もう顔を上げて頂戴。一回は私達と顔見て話そう」
冴子の言う通りに、泣きっぱなしのヴァンパイアの少女は俺達を見つめながら、真剣に話を聞いていた。
とりあえず、エミーの今後だが…彼女は連れて行く事にした。
ずっと一人ぼっちゆえの犯行である為、一緒に連れて行けば大丈夫だろう。
幸い、彼女には思想主義は無かったので、特にトラブルは無いだろう。
あと、さっきの発情で抱いた時が…彼女の中に何回か出したので、それを含めた
責任をとる事にしていた。
うん、まぁ…やってしまったなら、男として責任を取るのが普通だしな…
そもそも、浮気自体がいけないんだけど…
だが、それを踏まえても、彼女の家事スキルは半端なく、一人で屋敷内を掃除、及び裁縫から炊事など、給仕どころか執事スキルすらもマスターしている勢いであったのだ。
はっきり言えば、貴重な人材でもあった。
その上に…
「じ、実は…先ほどの錦治様のあれ…私、凄く虜になっちゃった上に…冴子様のお口も虜になってしまいまして…」
「うっ、私にも発情対象かー…はぁ」
完全に心を堕としてしまったようだ…
うん、よくある調教系ダーク恋愛物ならば、僅か二日でルート確定するぐらいの好感度を上げてしまった感じだ。
むしろ、隠しルートによる確定フラグに近いものだろう。
「だ、大丈夫です!ご奉仕は確りと致しますので!!」
「いや、そう言うのは普通にしてくれ…といっても」
「は、はい…実は、吸血鬼族でもヴァンパイア族は淫魔に近いのです」
「通りでな。ただ、一度忠義を尽くすと値した者には、それ以外のと交わる事に死んでも許さないぐらいにプライドが高いのだろう?」
「はい!例え灰になっても錦治様以外の男性とは交わりたくありません!!」
「そ、そうか…」
そう言いながら、湯船から立ち上がる巨乳少女の吸血鬼に、俺は呆れるばかりであった…
王都に帰ったら、間違いなく何時もの面子…特に良子と美恵の二人にこってりと説教されて搾られるだろうな。
以外と一途で嫉妬深いしな、あいつ等…
「嫉妬深いならここにもいるぞー」
「忘れてた。ていうか、お前らの基準で一体どこら辺からが浮気になるんだよ」
「んー…私はおろか、あいつ等全員忘れて愛してると言いながら寝た場合かな」
「逆にそれは無いと思うぞ。お前とあいつ等ほど、愛しいものは無いしな」
「そっか。あっ、それと…やっておきながらその子を捨てたら、半殺しな♪」
「それは絶対にない…な!」
俺はそう言いながら、エミーを引き寄せてから冴子の傍に寄って行った。
「キャ!?き、錦治様!?」
「まっ…やってしまったからには、良いか?」
「仕方ないわね、錦治だし…それに、私ったら駄目な子を見ると、妹分としてほっとけなくなるんだよね」
「そうだな…というわけで、今後は宜しく頼むぞ。エミー」
「は、はい…♪」
エミーは返事を返しながら、俺と冴子の間に挟まりながら胸元に擦り寄ってた。
ある意味、小動物だな…
一晩過ぎたあたりで…
俺達三人は荷物を持って屋敷を後にした。
そういえば、エミーの奴…吸血鬼族の中で日光に弱いヴァンパイア族なのに…
日の光を浴びて大丈夫なのか?
「実は、昨日の錦治様と冴子様の血を吸った時に、なんか私にとんでもない物が付加されちゃいまして…」
「もしかして、不老不死か?」
「はい。しかも、吸血鬼族の不死とは違い、心臓に白木の杭を打ち込まれても…たぶん消滅しないと思います」
やらかしてしまった…まさか、吸わせた血で感染するとは…
ん?なんで不老不死の適合したのだ?
そこが気になるのだが…
「あっ、でも…昨日眠ってた時に頭の中から聞こえたのですが、どうやら私は適合していたらしいので、それで成れたみたいです」
「つまり、条件があるのか…」
「もしかして、錦治。お前と私の血を使って、あいつ等を不老不死にしようと?」
「最初は考えたさ。ただ、馬鹿げてると思って止めてただけだ」
「それもそうだな…道連れを作るだけだしね」
「そう言うことだ。んじゃ、エミー…旅は道連れ、と言うわけではないが…」
「はい♪宜しくお願いします♪」
エミーは軽く返事し終えて、いかにも貴族の少女らしい黒いワンピースドレスを着こなして、ケープ上に形を変えたマントの羽の中に潜む眷族を使って、屋敷の荷物を全部持ち運びながら、俺達の旅に付き合う事にした…
さて…次はどんな出来事になるか…
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