第19話 新しいオーガ達の来訪

この異世界に来てから大体一ヶ月が経過したぐらいか。

冴子も特殊進化クラスチェンジしてからは、前のオーガの時よりもすこぶると言える位に調子がよかった。

やはり、悩みを打ち上げてからは、すんなりとよくなったな。


反動で、凄くべったりになってしまったのは大変ではあるが…

まぁ、その変わりに夜が逆転して俺が攻めになって、冴子が乙女になっているのに拍車かかっていたのは、コレは言うまでも無いな。


さて、そんな冴子であるが、職業特性という欄があるように、戦士、魔術師(女は魔女)、僧侶、、盗賊、商人等の初級から、騎士、剣闘士、魔導士、司祭、義賊などの上級、その上の君主、忍、神女などの最上級の職業特性もある。


無論、これらは通常の名称で、冴子みたいに守護者ガーディアン騎士ナイトを併合した職業、守護騎士ガーディアンナイトと呼ばれる、通常の騎士よりも高スペックなランクの職業特性を持っていたため、通常のホワイトオーガよりもステータスが上になっていた。


現在はレベル1に戻ってはいるが、存在進化も兼ねている為、レベル1でありながら、体力は2000、魔力が1300と、俺の時よりも高水準でのスタートとなっていた。


しかも、冴子自身の固有スキル:王の寵愛を持っている為、これが発動中は通常のスペックよりも更に倍近くに上がる為、俺がいる時は実質単機で突撃できるほどのとんでもないスキルであった。

ただ、代償として子どもが出来ないという負の面もあったので、考えておかねばな…


そんな矢先、頭上から何かが乗っかり、視界がさえぎられていた


「きーんじっち♪おっはー♪」

「うおっ!?な、直子か!?」


あの直子が、俺の頭上に自分の胸を押し当てて、俺の視界を遮って来た。

ていうか、冴子の進化した日から次の日に、直子も存在進化していたのには、驚きを隠せなかったが…


なんで身長ではなく胸がでかくなるんだよ…

おまけに…


「ほーれ♪加奈っちもやりなよ♪」

「な、直子ちゃん…止めようよ…」


うん、ホブゴブリンになってからは、ハイオークになった加奈子と共に俺に対して余計にセクハラをやってくるのには、流石に青筋が立ちそうだ。


「おい、直子」

「あっ、姉御…」


おっ、丁度良かった。

冴子が直子をむんずと掴んで、村の藪の中へと消えていった。

まぁ、藪から直子の艶めかしい声が聞こえてくる分、冴子なりの逆襲なのだろう…南無。


一時して、惚け過ぎて顔が茹で上がった直子を加奈子に押し付けた冴子は良子達から受け取った鎧をベースに、俺と訓練を受ける事が多かった。


守護騎士の固有スキル:不屈の鉄壁は、突撃しがちな冴子にとって便利で、大剣をベースに盾に成りそうな武器防具を装備して、ガードの構えをするだけで、自身と周辺の対象に防御の加護が発動する事だ。

本来ならば、片手剣と盾を装備にすれば、一気に跳ね上がりそうだが、冴子の性分で大剣を扱うようにしていた。


まぁ、大剣を地面に突き立てれば、より広範囲で堅牢な盾の結界を発動する

事が出来るから、問題は無いがな…


それと、その大剣にあわせて、蓮やギルバードさん達に剣術を学んで、ちゃんとした剣術を覚えてくれるようになった。

おかげで、冴子は最前線部隊長に出来る。


そんなわけで、俺は集団で行動する時の面子を構成していた。


冴子のホワイトオーガと直幸らのミノタウロスを中心にした前衛部隊。


トロールの美恵とサイクロプスの良子の中心にした中距離支援部隊。


ギルバートさん達リザードマンと蓮のアラクネを中心にした前衛陽動部隊。


直子のホブゴブリンメイジと次郎さんのハイオークメイジを中心にした後方支援部隊。


最後の俺、錦治のトロールキングの指揮部隊と、加奈子と花子さんのハイオークプリーストを中心にした救護部隊の下で編成していった。


無論、元からの軍隊経験を職業にしていたギルバートさんに相談してみた所、特に問題は無いそうだ。


あとは、亜人となった村人達も、それぞれの部隊に編成する事で、この村を一個師団の軍隊へと変貌する事が可能となった。


ただ、あくまでも素人部隊である為、戦い慣れが必要であるが…


そう考えると、別の一個師団の部族…原種のオークやオーガの部族との交渉がしたいところだ。


どうにかして接触はしたいものだが…


「錦治君!いる!?」

「どうしたんだ?加奈子」


加奈子が息を切らしながら俺の所までやってきたのだが、何かを見つけて慌しくここまで来たのが目に見えていた。






目先で大体400mぐらいの地点にて、三体のオーガが逃げ回りながら迫ってくる蟹の魔物数匹と戦っていた。


だが、非力なのか…通常の亜人の中でも強いオーガが三体も居るのにも関わらず、蟹の方はほぼ無傷で、むしろオーガ達の方がボロボロの姿になっていた。


身なりの装備を見れば、全員女…つまりは雌のオーガであるが、その女の装備がオーガ成りに豪華であったため、どうやら貴族か部族の娘と従者の三人で構成されているようなものだ。


「それで、どうするの?錦治君」

「どうするも何もな、放って置くのも後味も悪いし、現地のオーガ族の情報も欲しいからな。ここはあえて恩を与えておいた方が無難だ」

「して、誰と組んでいくんだ?錦治」


冴子の問いに対し、俺はニヤリと笑って返しながら言った。


「愚問だな、冴子。無論、お前と二人で組むんだよ。どれだけ力が増したか、試したいからな」

「そうだな。なら、任せて置けよ!」

「ああ。それにな、お前…アレ好きだろ?」


俺の返答に対し、冴子もニヤリと笑って、俺が指差していた蟹を見ていた。


「ああ、そうだよ。んじゃ、あのお姫様っぽいオーガ様を助けるついでに…」


冴子が馬に乗りながら言い終わる前に、俺も馬に乗って行き、二人揃って大きな声で言った。



『今夜は蟹鍋だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


その二人揃って宣言した言葉に、留守番になった面子全員がずっこけた音がしたが、気にしない方向で馬を走らせて行った。





現場近くのオーガ達が視認した俺は、オーガ三人とも相当キツイ状況なのがはっきりと分かった。

従者二人は鋏で何度も切られて肌に傷を沢山作り、同時に閉じた鋏で何度も殴られていた後も見受けられた。

その上で、姫らしきオーガも蟹達に殴られながらも、従者二人が守ってくれたおかげで、あまり傷を受けた様子は無かった。

それでも、三人とも瀕死になりかけていたのは、目に見えていた。


俺と冴子は互いに頷き合い、そして馬から素早く下りた後は、冴子は先ほどからの瀕死のオーガ達の前に立ち、俺は蟹に向かって突撃した。


「うおぉぉ!!」


新しく新調した両手斧、バトルアックスを蟹の顔面に向けて一気に振り下ろし、顔面を斧の衝撃によって叩きつぶされ、蟹は中身をぶちまけて絶命した。

その勢いで、隣に居たもう一匹の蟹にも、横払いを与えようとしたが、鋏でガードされて一撃では倒せなかった。


どうやら、鋏と背中の甲羅が一番硬いらしい。

それを見た俺は、真っ先に斧を下から上に切り上げて、蟹が引っくり返った所に、全力で振り下ろして、弱点の腹を潰していった。


一方、冴子の方は此方も順調で。

新しく覚えた『不屈の鉄壁』で守りの構えをする事で、蟹達の水圧ブレスを構えた大剣の中心に四人全員を守る事が出来、同時に構え終えた瞬間に、大剣で一気に突き出して、蟹に貫通させた後に投げ飛ばして絶命させた。


案外、その方法で倒した方が効率よく素材は入るかもな。


そんな感じで、原種のオーガ三人が苦戦していた数匹の蟹の魔物を退治終えた俺達は、狩猟した蟹達を集め終えてから、腰抜かしていた三人の元へ向かい、冴子を前に出して対面した。


「どうやら、無事のようだな」

「そうだね、錦治。…ん、お怪我は無かったですかね?オーガのお姫様」


あまり見せない冴子の丁重な姿勢に、思わず吹きそうであったが、そこはまぁ置いておくとして…下手に別種族であるトロールキングの俺よりも、同じ種族のホワイトオーガの冴子を出す事で、警戒心を解こうと試みた。


「あ…ああ、助かった。姫様の護衛として礼を言う」

「良かった…私は冴子。そこのトロールキング、錦治の騎士で妻の一人だ」

「お前、言うようになったな、冴子」

「人がかっこつけてる時に茶化すなよ」


そんな俺と冴子のやり取りに、従者二人の手助けで起き上がったオーガの姫は服に付いた泥をはたいた後、ゆっくりと冴子の前に立った。


「サエコ様ですね…私は、デュミエール。今私達が敵対している王国の王都の東に位置するオーガの隠れ里のオーガキングの娘でした」

「オーガの国があったのか…この人間が多い国に」

「いえ、国というより、数多くのオーガの一族を束ねる大部族でした。姫はあくまでもオーガプリンセスと呼ばれる、通常のオーガの上位種族でした。申し遅れました…姫の従者の一人、オーガナイトのジュラです」

「同じく、オーガナイトでデュラと申します」


デュミエールと呼ばれるプリンセスに、ジュラとデュラと名乗るナイトの二人を合わせた三人は、俺を差し置いて冴子の手を握って迫ってきた。


「お願い致します!白きオーガの騎士様!!どうか、その勇ましい力を…ぜひ私達にオーガ族の為に使い、あの人間達をこの地を追い出す為の力になっては頂けませんか!?そして、同じオーガの種族の隠れ里の再建の手伝いをお願いいたします!!」


どうやら、俺の見当外れだった。

このお姫さん達、今のこの国の情勢を見誤ってる。

自分達の都合でしか物事をしか見ていない。

それに、俺を無視して冴子しか見てない所を考えると、他のオークやゴブリン達を蔑ろにしている傾向が強い。


無論、冴子もそれは理解していたのか、三人のオーガの手を静かに払った。


「悪い。その考えの元での力では協力は出来ん。それに、私は錦治の妻だ。錦治を蔑ろにしてる時点で、そんな連中と協力するのは無理だ。諦めてくれ。…コレで良いんだろ?錦治」

「ああ。…だが、怪我人を放っては置けんからな。村まで連れて行こう」

「だな。一先ずは、村に帰還してからだな。迎えが来たぞ」


そう言いながら、俺は迎えに来た直子の竜車へと歩き、離れた場所で置いた馬達も回収して、狩猟した蟹とオーガ三人乗せて村に戻っていった。





村に戻ったら、皆から様々な反応を貰っていた。


まずは蟹の魔物。

陸蟹と呼ばれるこいつは、羽鳥の数倍ランク上の魔物だったらしく、殻の固さで剣士殺しと呼ばれていたが…こいつのから単品だけで防具が出来るほどの優秀な素材である為、剥いだ甲殻と爪は全部良子に渡した。

まぁ、若干苦笑い顔と渋い顔が混ざった表情していたので、軽く抱きしめて頭撫でてやったら、それで機嫌を直してくれたから問題なかった。


一方、身は…普段が土食っている分、肺などが泥臭かったため、食えない部分を取り除いていったら、蟹味噌周りと足と爪ぐらいしかなかった。

流石に肺周りの胴体は、嗅いだ時に泥臭かったので断念せざるを得なかった。

…今度は生け捕りしてから、泥吐きさせてからそのまま煮て見ようか。


早速冴子と共に蟹の身を炙って食ってみたら、実に美味かった。


一方、蓮も負けじと…森でアラクネのサイズに近い大蜘蛛を発見したので、こっちも炙って見たんだが…中国人が蜘蛛の料理をする理由が分かった。

流石に冴子も最初は抵抗していたが…海老に似た味をすると言う事で、バリバリと食していた。

俺もどっちかと言うと、酒などの辛い物と一緒に食べた方が美味いと思うぐらいの珍味であった。


次に、村の子ども達であるが…亜人化希望の子の中で、未だになっていない四人の子がレベルを上げ、「オーガの適正」を手に入れていたこと。


これには驚いた。

15ぐらいの未成年だと侮ってはいたが、ここまで根性据えてレベルを上げ、その上でオークよりも上のオーガの適正を授かったのは褒めるに値した。

ゆえに、四人とも全員オーガに変えてやることにしていた。

…変化し終えた後が、亜人となった母親を支える事が出来ると言ってたので、餞別に彼らに剣を与えて、ギルバートさんの剣の指南を受けさせる事にした。

ふがいない父親とは違う、立派な大人になって欲しい所だ。



最後に、例のオーガの三人…デュミエール達であるが…

満場一致で全員協力しない事にした。


ギルバートさん曰く、この王国にある人間達が掲げる人間至上主義と同じく、オークやオーガにも亜人至上主義、特にデュミエール達の場合はオーガを中心にした鬼人至上主義というのもあった。

他にも、魔物の中で力の強い悪魔達が掲げる魔物至上主義やエルフなどの妖精をベースにした亜人達が掲げる妖精至上主義といった、自分達の種族以外を見下す主義があったことに驚いていた。


だが、一見考え直せば、俺達の現実の世界でも差別的な事をやっていたのに、異世界でも同じ様に差別をしていた事に、少しばかり失望した。

だから、皮肉を込めて彼女達に言ってやった。


「もしもだ、世界がオーガだけの知的生物しか居なくなったら、今度はオーガ同士で差別しあうかもな。肌の色、角の大きさと色、そして体格、勝者である奴の一族が、敗者となった奴の一族を差別するようになるだろう。それこそ、俺達が元の世界にあった、人間だげが支配する世界の連中と変わらんだろうよ」

「ちょっと、錦治君!言いすぎよ!!」

「構わん、良子。コレくらいの事を言ってやらんと理解せん」


流石に良子に制止させられそうになったが、俺は俺なりで彼女達を批判をせざるを得なかった。

…ぶっちゃけると、今の彼女達から言わせるならば、俺達E組を馬鹿にしていた連中と変わらん価値観を持っていた事に、俺は彼女らを軽蔑をしていた。


「…分かりました。サエコ様の旦那様がそう仰いますならば、私らはこれ以上何も言いません。明日には、ここから立ち去りましょう」

「ひ、姫!?よ、宜しいのですか!?」

「たかがトロール族の言葉ですよ!しかも元人間から変化したと言われる、私達からすれば混じり物ですよ!!?その様な純潔でない者など…」


従者二人の言葉に、冴子すらも青筋立てて立ち上がろうとしていたが、デュミエールは違ってはいたようだ。


「黙りなさい!ジュラ!デュラ!…サエコ様の旦那様、今貴方が仰いました人間同士の至上主義があると申しましたね?あんな人間達にどんな差別がございますでしょうか?」

「…ふん。一言では例えられんが、覚えてる分だけで言うならば、国、土地、性、宗教、民族、文化、言葉、肌の色から体の大きさ、あとは才、金の有無…掘り下げれば掘り下げるほど、人間は隙あれば何かしらと差別をしようと他人を追い落として自分から這い上がろうとし、追い落とした人間を二度と上がれんように追い討ちをかける。どうだ?人間達の掲げる人間至上主義や魔物達が掲げる魔物至上主義と同じではないだろうか?」

「くっ…胸が焼けるぐらいに忌々しいですが、正論ですね…」

「というわけだ。今の所、”オーガ”だけしか認めようとしない貴方の主張の下では、冴子も俺も協力はしないし、他の皆も協力はしない。ギルバートさんとの協力関係も、傀儡となっている王の周りにいる貴族達を排斥をして、完全な国崩壊させない条件で手伝って貰っているのも、はっきり言えば奇跡と呼べるものだからな。…いや、本当に二人には感謝してますよ」

「正直、私は君と君のいた人間だけの世界に驚いたよ。まさか種族ではなく、単に民族や肌の色の違いだけで、国同士で差別し、貧困の格差を拡大し、そして戦争しているとは…」

「しかも、戦争といっても…今のこういった剣や魔法ではなく、人間が乗って移動して城の外壁を破壊する機械や、ボタンを指一本押すだけで、自動的に敵国の国全土を破壊の業火に変える爆弾を抱えて飛ぶ機械兵器など、簡単に人間が死ぬ時代でしたからね。それこそ、先日のベヒーモスみたいな惨劇を一瞬で何度も出来る戦争を、俺達の世界では当たり前の様にあった」


その言葉に、冴子ら五人と直幸ら五人も下に向いて黙ってしまった。

次郎さん達も大体察していたが、20年前と変わらない現状に、俯き加減になっていた。


「…ベトナム戦争、天安門事件、湾岸戦争。どれも最初は共産主義や中東の利権主義に煽られて、関係の無い人間が大量に死んだ。それに加え、現在はアメリカで起きた9・11の世界貿易センターに行なった同時多発テロから起きたアフガニスタン戦争からイラク戦争。そして、中東の各国によるアラブの春と呼ばれた革命によって、更なるテロリズムが発生。それと同時にベルリンの壁以降、今まで沈黙していた共産圏がもう一度活気付けて、国民を縛り上げようと、独自の社会主義体制で拘束するという、第二次世界大戦の起きる直前の、当時の人間達と同じ行動をしていた現状に、人間…いや、人間に似た知的生物は成長はしないところはしないんだなと実感したさ。まぁ、長ったらしくうんちくは垂らしたが、要は貴方の掲げる至上主義は、俺達の世界に居た人間達と変わらん行動の下で戦争してるに過ぎないんだよ」


そう俺が皮肉を〆た後、デュミエールは意気消沈したまま俯き、そのまま立ち上がっていった。


「…ご教授、ありがとうございました。…一度、頭を冷やしてから、本日は就寝を付かせて頂きます」

「…貴方はどう捕らえるかは知らないが、俺から言えるのはコレだけだ。あとは、貴方達がどうするかなどは一切口は出さん。それは確実だと言っておきましょう」

「お気遣いありがとう御座います…行きますよ、ジュラ、デュラ…」

「ひ、姫様!?」

「お、お待ちください!?」



トボトボと歩くデュミエールを従者の二人は追いかけ、空き家となった村長宅へ一夜を明かしに行った。


そんな中、静かにお茶を入れていた蓮は、俺にお茶を差し出してきた。


「相変わらず、兄さんは厳しく毒を吐くね」

「影ながら政治に手を出していた親父達のやってきた事を、俺なりに皮肉を入れてやったまでよ。…皆も気にするな」


そうは言っていたが、直幸達は俺に対して俯き加減の目線で見ていた。


「よくもまぁ、歴史で余り教えてくれないような事まで知っていたな、お前」

「ガキの頃は嫌でもニュースは見せられていたからな。その反面、文屋が隠していた裏ニュースも探っていれば、嫌でも人間の知りたくない情報など知るようになるさ…」

「横山君…貴方って本当に…」

「江崎ら…お前らだって知っているだろ?教師によっては、こいつはヤバイと思える様な、高校のガキですら間違っていると思わせる思想を持った奴とか。俺は、そういう大人を中学の時に腹いっぱい見せられた。A組のアイツから、離縁した一族からの嫌がらせとしてな」


その言葉に、冴子が反応してきた。


「やっぱり、あいつ等の仕業だったのか…お前をそういう性格に変えたのは?」

「…そういえば、冴子はアイツから一番キツイ言葉を言われたそうだな。アイツはそういう奴だ。人のコンプレックスを弄り、踏みつけて、常に自分を優位に立たせる。あの糞親父の遺伝を持った、極上のクソッタレをな」


特待のA組のアイツを思い出して愚痴った俺に、冴子は思わず同情の眼差しを送ってきたので、さり気に俺は冴子の頭を撫でておいた。


「だが、それはそれだ。今はこの世界の情勢を考えねばな…色んな至上主義が多すぎて把握出来ん…」



そういって、俺は皆に解散を告げて、本日の一夜を過ごしていった…




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