第44話 勇者の暴挙と六大勢力の登場…

ギルバートさんの言葉通り、目の前で火の海に包まれてる豪華だった町並には、逃げ惑う一般市民に対し、無法者の傭兵から人外の兵士達が入り乱れて虐殺しており、それに抗おうとする近衛騎士が応対しつつも、殆どが無力化されていた。

その上で、五人のハイエルフ達が詠唱を唱えながら…古代精霊魔法を使っては、町中に更なる火の海に変えては爆裂魔法で破壊していたりと、俺達からすれば、とんでもない状況になっていた。


その上で、中心地には光り輝く閃光が何度も上がり、辺り一体を閃光後の剣閃を作られていた…


無論、そのど真ん中には、あの西園寺が何かを手に持ち、血まみれになりながら立っていた…


「あれは!?国王の首…!!?サイオンジィィィィィィィィィィ!!」

「ギルバートさん!?」


激昂したギルバートさんを追いかけようと、俺と足の速い面子で追いかけようとした時、カールさんの隣にいたヘルガさんがギルバードさんの所まで追いつき、顔を掴んで地面に叩きつけ、行くのを阻止した…


「落ち着け、若造。貴様が出向いた所で、あの男は倒せん」

「ぐっ…」

「だが、貴様の怒りは、この私にも分かる…我が主よ。ご命令を」


そう言いながら、カールさんに指示を仰いだヘルガさんに、カールさんは状況を判断し、口を開いた…


「では、やって見せろ…ヘルガ。卿があの小僧を吹き飛ばす所を、私自らが一つ余さずに見届けてやろう」

「了解した、我が主よ」


カールさんの一言により、ヘルガさんはギルバートさんを解放して直ぐ、自身の中にある魔力の胎動を初め、詠唱を始めていった…


「ギルバート殿。卿も下がりたまえ。あれの創生は、凶暴だからな」

「くっ…」


その一言と同時に、ギルバートさんは俺に支えられながら後ろに後退していった。

だが、後ろに下がるという判断は間違いではなかった…

何故なら、彼女から出る魔力は、俺達よりも遥かに凌駕していた…


「”狩りの時間は始まった。我こそは獣の王者成り。汝達迷える鹿の首に牙を入れ、肉を喰らい、骨を砕こう。これこそが王者の風格、若人の憧れ成り!!”」


詠唱の途中から、ヘルガさんの目の前には巨大な銃身が出現をし…

奴…西園寺の方へ砲身が向けられていった…


「”創生…!気高き英雄ジークフリード獣の大剣バルムング!!”」


詠唱が終え、彼女の創生で生み出された巨大な大砲は、西園寺が居る場所へと砲撃され、爆音と共に巨大な火球が発射された。

そして、着弾とした同時に、着弾地点辺り一体が爆風で地形を変化させた…


「な、なんて威力なんだ…」

「うろたえるな。…私の剣を防ぐとは、やるな」


西園寺は健在であった…

むしろ、配下で自分の取り巻きであったエルフの五人による結界で、防がれて居たのだ…



無論、ヘルガさんの創生に気付いたのか…西園寺の奴は真っ先に俺達旅団へとお供と共に突撃してきた。


勿論、西園寺の猛攻を防ぐ為に俺達六人は前に出て、冴子の”不屈の鉄壁”の結界を発動させて、奴の突撃を防いでいた。



「人が気分悪く暴れまわっていた所を、不意打ちしてくるとは!錦治!貴様!よくもこの俺の憂さ晴らしを邪魔してくれたな!!」

「憂さ晴らしとは何だ!!何故王を殺した!!?」

「この王に何度も秘法を要求したのに対し、王は何も持っていないと一点張りで何もしなかったからな!あまつさえ、この俺にベヒーモスを倒せと抜かして来た上に、俺を駒扱いにさせようとした!!この土人に万死に値するわ!!」



そんな身勝手な理由で、この国の王を殺したのか…

ふざけやがって…!!


「やはり、お前みたいな屑は生かしては置けん!ここで蹴りをつけてやる!!」

「上等だ!貴様の首、今ここで刎ねてやるわ!!」


そういって、西園寺が吼えて剣を握ろうとした瞬間、無数の銃撃が西園寺の体を包んでいった。

だが、それも奴の結界で防がれてしまったが…


「全く…人間の風上に置けないな…西園寺よ。錦治の相手する前に、まずは私から相手をしてやろう」

「はっ!誰かと思えば…最近俺の周りを嗅ぎまわっていたドイツの誇りを捨てた米国人じゃないか。貴様如きに、この俺を倒せるわけが無い!!」

「自惚れるのは大概にしておく事だな。卿は何も気付いていない。大淫婦バビロンからは見捨てられ、成長もしない卿などに、魔王軍どころか愛宕陣あたごじん千方衆ちかたしゅうを倒すなど出来はしまい…」

「なんだと…!?」


煽ったと思いきや、逆に煽られてしまった西園寺の顔は、見る見る内に真っ赤にさせて、光剣術を発動させようとした。

…が、そんな西園寺の剣を、カールさんが奴が剣を抜く前に手を蹴り上げて防ぎ、短機関銃サブマシンガンの銃口を突きつけていた。


「全く持って嘆かわしい。卿は自ら努力して手に入れるという事をせずに、親の七光りだけの力を頼り、神から与えられた力だけを振るうだけとは…渇望が足り無さ過ぎる…愛が足りぬよ」

「貴様ぁ…!!」


西園寺がほざく所を、カールさんが引き金を引こうとしたその時、空からは飛行船団がやって来て、爆撃を開始してきた。


「…帝国の飛行船団だな」

「は…ははっ…遅いぞ!!俺はここだぞ!!」


そう言いながら、西園寺はカールさんを突き飛ばして体制を整え直し、剣を構えながら俺達の方へ顔を向けてきた。


「運が悪かったな!愚弟達よ!!貴様らは俺が保有する帝国軍の総攻撃の前にて消えるのだ!!亡骸すら無いと思え!!」


そう叫びながら、お供のエルフ達と共に降りてきた飛行船に乗ろうとした。

それを阻止しようと魔王軍の飛行部隊が強襲してきたのだが…魔物如きでは奴の飛行船にまで辿り着く事が出来ずに後退せざるを得なかった。


「ど、どうするのよ!?錦治っち!!?あいつ等空に逃げちゃうよ!!」


直子の大声の前に、俺はある違和感を覚えていた…

奴以上に、何かどす黒いものを持って、此方に向かってくるのを。


「カールさん…感じますか?」

「ああ。どうやら…奴らが来たみたいだな…」


カールさんがそう宣言した瞬間、奴が乗ろうとした飛行船が高速で飛来してきた何かの攻撃を受け、爆発炎上した…


「なっ!?て、敵が見えない…!?」

「奴らだな…総員!索敵を開始しろ!!」


ギルバートさんの驚愕を余所に、カールさんは冷静に指示を送り、辺り一体にある反応を全て調べようとしていた。


「始まったわね…」


同時に、国塚萌が西園寺、英雄人狼、そして俺達の前に出現してきた。

西園寺の残りの取り巻きであった四人の女悪魔達を引き連れて…


「く、国塚ぁぁあぁぁ!!お前、何処に行っていたのだ!!」

「あら、勇助様…そんなに事を荒くされては、冷静な判断が出来ませんですわ」

「五月蝿い!こんな大事な時に何処で歩いてるのだ!お前は俺の役に立つ、女であろうが!!」


西園寺のその言葉に、国塚は仲間と共にクスクスと笑いながら蔑む目で見ていた。


「嫌ですわねぇ。勇助様…私は貴方の女になった積もりはございませんですのよ。私は、主の為に貴方の世話役をやっていただけに過ぎません。それも、西園寺のご当主ではなく、私の信じる主の為に動いていたのですよ…」

「貴様らぁ…親父のスパイだったのか!?」

「今申し上げましたでしょ?元々”西園寺の一族を監視する”為に、私達は主の命を受けて動いていたのですから…まっ、それは誰なのかはトップシークレットですから、言えませんですわ」


そんな国塚のやり取りに、カールさんは前に出て、国塚に問いかけていた。


「相変わらず、卿のやり方は滑稽なものだな。大淫婦バビロンよ。卿の主とやらの采配には、何時も関心をさせられるよ」

「あらぁ…英雄ベオウルフ様。ご機嫌麗しゅうございます。まっ、見ての通りですわ。努力をせず、親の七光りだけで惰性を生きてきた男に、成長の見込みの無い事は目に見えておりました…そこに居る、錦治様の方が輝いておりますでしょう?」

「うむ。彼こそが私の好敵手ともなりえる男でもある。と、同時に…彼は永遠の友人として楽しむ事が出来そうだ。その点を言わせて貰うならば、礼を言わせて貰おう」

「御礼などは必要ありませんわ。もっとも、私としては、今の魔王軍どころか、あの二大勢力に立ち向かえる力を、英雄様と錦治様の力が欲しいのですから」


…どうやら、国塚達の大淫婦と呼ばれる勢力は、愛宕陣と千方衆に対してかなり警戒をしていたようだ。


「カールさん、それと国塚…そんなにその二大勢力は強いのか?」

「それは勿の論で御座います、錦治様。そこで愕然としている勇助様もごらんになってくださいな。空を飛んでいる者達が…今、絶望に包まれますから」



国塚が指摘した通りに、後続で飛んでいた飛行船団が次々に撃破されていき…

魔王軍が保有する大型の飛行魔物もなすすべも無く落ちていった…


その瞬間、空から爆音と共に地面に落ちてきて、俺達の前に現してきた。




まず、その場に居た連中が落ちて来た怪物を見たら…溜まらず逃げ出したくなるであろう…


その怪物は、鴉の顔をしておりながらも肉体は筋骨で隆起しており、腕には人を簡単に薙ぎ払って斬りそうな位の漆黒の羽に覆われた翼を持っていた。

しかも、大きさは人間の八倍以上の巨大さであり、俺達を意とも簡単に殺せる位に獰猛な息遣いをしていた。


それと同時に、空から無数の…背中に羽を生やしたハーピーと似つかない魔物の姿をした連中が一声に降り立ち、その怪物の前に持っていた銃を掲げて敬礼をし、待機していた。


そして…その怪物の背中に鎮座していた…漆黒の羽を背中から生やし、修験者と軍服を混ぜた服を着こなした女が立ち上がった。


「誰かと思えば、淫婦に人狼ではないか。次に会う時は皆八つ裂きにすると約束していたのだが」


その女の目は…全ての生き物を威圧させる位に殺気に満ちていながらも、強者の余裕と呼べるぐらいに優雅に満ちていた…


間違いない、こいつが…こいつこそが『王』の素質を持つものだ。


「久しぶりであるな…天風愛宕あまかぜあたご。卿にやられた者達のが、皆餓えた目で見つめて居る。今すぐにでも、卿を八つ裂きにしたいと…」

「口減らしにもほどがあるな。今すぐにでも貴様ら犬どもを始末をしたいが…、生憎今の私は別件でこの地にやってきたからな。あの忌まわしき、天狗をコケにした千方衆を討ち取りにな…」


そんな女の口から、俺は悟った…


天風愛宕…この女こそが、愛宕陣の頭領で…

天狗達を束ねる大天狗:愛宕太郎坊であると。





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