第2話 努力=生存確率微増

『ダンジョンの属性に【異次元位相】が追加されました

 初期フロア制限が決定されました:3フロア

 初期階層制限が決定されました:1階層

初期罠設置制限が決定されました:Lv3

 初期モンスター召喚スキルレベルが決定されました:Lv2

 初期スキルスロット数が決定されました:5個

 職業【ダンジョンマスター】を習得しました。この職業は固定です

 職業【ダンジョンマスター】のポイントを入手しました:1000P

 真名が封印されました

 称号【駆け出し主】を入手しました

 称号【臆病主】を入手しました

 称号【考える者】を入手しました

 称号【生に固執する者】を入手しました

 生命神の興味を引いたようです

 精霊神の興味を引いたようです

 地脈龍の興味を引いたようです

 最初の冒険者は侵入を諦めました』




「………………なんぞこれ」


 張り紙の『だんじょんにかんするそうさはますたーぺんだんとをそうさしておこなってください』という文字に従って、いつの間にか首に下がっていた大きなペンダントの表面を軽く一回叩いてみると、途端にずらずらずらーっと目の前に文字の列が展開した。

 どこまでもゲーム的だな、と思いつつ目を通せば、気になる点がいくつか。


「……真名が封印されました。そして興味を引いたようです。進入を諦めたのは良いとして、なんぞこれ」


 ゲーム及び小説の知識で判断すれば、真名は元々の自分の名前。そして興味を引いたようです、というのは、何かのフラグだろうか。


「まぁ、生命神の興味を引けたのは素直に喜んでおいて、スキルスロット5個をどうするか」


 てん、とその項目を指で突いてみると、重なって展開する半透明の画面。そこには四角い枠が5個並んでいて、内2つは既に埋まっている。

 絵柄はそれぞれ魔法陣ととらばさみで、それぞれタッチしてみると、モンスター召喚Lv2、罠作成Lv3という表示が出た。これはいわゆる初期スキルというやつだろうか。

 今度はその隣の空白枠をタッチ。するともう一段半透明の画面が展開されて、


「おぉう……これは、また、何という数……」


 辞書か。というほどの文字が並んでいた。しかも右端にスクロールバーがついている。そこまでバーの長さが短くないのが何とか救いか。

 ためしにいくつかのスキルをタッチしてみると、そこまで詳しくない説明と共に『このスキルを習得しますか?』という確認文が浮かぶ。とりあえずその全てにいいえと答えて、スキルスロット画面を閉じた。

 最初の画面に戻って、今度は【ダンジョンマスター】をタッチ。するとまた新しい画面が展開されて、そこには、


「現在位置……。うえ、電車を壊されるのは勘弁……」


 入り口らしい魔法陣と短い通路。そしてその先に、私のいる電車の車両がすっぽり入った四角の部屋。それが線画で表されていた。左上には『名も無きダンジョン:1F全体』の文字。右側にはペイントツールのような様々なアイコンがずらり。


「階層制限は確か1階までだったから……入り口からここの間に部屋を作るしかないのか」


 アイコンを1つ1つタッチして説明を読み進めながら独り言を呟く。

 第一の目標は確かに死なない事&殺さない事だが、第二の目標は元の世界の物……今着ている服、持っていた荷物、そしてこの車両を守る事。土の上に直接寝るとか冗談じゃないし、できるだけいい状態で荷物を保存しようと思ったらこの車両は必須だ。何としても死守である。

 しかしこの世界への拉致を敢行した何者かは何故この車両を持ってきたのだろう。あれか、寝ていたからそっと運ぼうと思ったらコレごとになったのか。そんな気遣いをするなら何故拉致をした。


「いやいや、今は置いとこう」


 とりあえず当面の問題は、どうやって車両のある部屋を奥へ引っ込められるか、という事だ。そのまま色々とタッチして出来る事を確認していく。画面を戻り、また進み、戻り、寄り道して、また進みと画面の中をウロウロする。

 どれくらい時間がたったのか、さてどうするかと悩んでいると、ポン、と音がして、画面が最初に出てきた『お知らせ画面』に切り替わった。


『称号【知りたがり】を入手しました

 称号【飽きない者】を入手しました

 称号【捜索者】を入手しました

 情報神の興味を引いたようです

 虫の精霊が面白がっています

 『冒険者予報』の機能が解放されました』

「……虫の精霊が面白がっています……。いや、虫の知らせとか、そういうのをする精霊なんだ。だから多分この機能が解放されたんだ。うん、よし、よかったよかった」


 早速『冒険者予報』をタッチして呼び出してみる。


『次の冒険者

 時刻:2日後

 人数:3~6人』

「これはまた結構な大人数で……」


 感覚的に1パーティがくる感じだろうか。猶予は2日、その間に、どうにか電車を守れるようにしなければいけない。

 職業ポイント1000Pはできるだけ温存したい。そしてダンジョン経営者小説の常識破りテンプレ、自力でダンジョンを壊してフロア構築は可能。しかし今の状態では絶対間に合わない。

 ので、


「効率がいいのは直接攻撃系……でも慣れた方がいいのは魔法系……」


 スキルスロット画面に戻り、スキルを習得する事にした。辞典か辞書か、という密度の文字を慎重に目でなぞり、時々ヘルプを出して効果を確認していく。

 スロット数が増えるかどうか分からない以上、できるだけ汎用性の高いスキルがいい。スキル習得に関しては空きスロットさえあればいいみたいだし、時間は迫っているものの十分に考えるべきだ。

 全部のスキルに目を通し、その中からいくつかに絞った。鞄からノートを取り出してそのスキルをメモして、更に考える。

 そして、最終結論。


「……生産職が最終的に最強なのは異世界でも共通だと……信じるっ!」


 ていっ! と覚悟を決めて習得したスキルは『変性生成』。手に持ったものを変形・変換できるスキルで、当然ながら生産職系スキルだ。

 で、なんでこんなスキルを取ったかと言えば、とりあえず何とかなるかな、と思ったから。やっぱり直接戦闘なんてガラじゃない。けど魔法はもうちょっと落ち着いてからの方がよさそうだ。

 そんな訳でスキルを習得し、ダンジョン管理画面に移動。相変わらず車両が入り口すぐの線画を見て、シュミレーションボタンを押してから、通路を思いっきり引き延ばす。


「……長さ10倍で200P。シャレにならないな……」


 さっき歩いた感じ、通路のデフォルトの長さは10mくらい。100m伸ばして200Pだから、1m2Pの消費らしい。

 今度は通路を限界まで細く絞る。やがて一本の線に見えるくらいになった時点で再び見てみると、


「……今度は50P? 体積比だと思ったけど、計算が合わない」


 ヘルプを呼び出しても今一よく分からない説明文。しばらくぐりぐりと直線をいじってみて、


「あー、最低消費ポイントが決まってるのか」


 そう結論を出した。

 しかし最低ポイントを最大に生かす形にすると、それはそれでデフォルトの形になってしまってつまり攻略スピードが上がるって事で……。

 そこでふと思いつき、また通路をいじってみる。ぐりぐりとついでに色々追加してみて、罠一覧なんかも並行して眺めてみて、


「……これは、何とかいける……か?」


 何とか展望が見えた気がして、『実行』を押した。




 2日後。


『冒険者たちは侵入を諦めました』


 あぁうん、そりゃあほっとしたともさ!













名も無きダンジョン

属性:未定・異次元位相

レベル:1

マスターレベル:1

挑戦者:0人

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