第95話 仕掛け/裏側=独り言
『―――――――――――――――――――――――』
さて、ボス部屋・表面で説明をやり遂げたダンジョンマスターです。軍の関係者からの殺気が恐ろしいったらないね!!
「相性悪いままに突っ込んでくる方が悪いんじゃん。もうちょっと練度上げるとか、ダンジョン用の部隊を作るとか、そういう工夫や努力をしてから文句言え」
ボス部屋・裏面中央の、結晶もとい魔晶で出来た塔? の頂上に設置した、まぁ、玉座だな。そこに戻ってぐったりしながらお知らせ画面からもう1つのダンジョンの様子を眺める。無いとは思うが、あちらもゴールまで辿り着いたら出動しなきゃだからな。
え、裏面挑戦組? あぁ、もう罠に引っ掛かって全員落ちてるよ。使徒組と兄貴さん達は割と頑張ったけど、まぁ足を引っ張る奴らがいたからね。
でまぁ、神としての異空間であるダンジョンの攻略状況だが。
「ははは。言ったぞ私は。ちゃんと、「神域のお披露目」って」
まー何というか、ヒトの話はちゃんと聞こうなー? っていうか。覚悟はちゃんと決めてきたかー? っていうか。準備は万全に整えたかー? っていうか。
ぶっちゃけ、暇。
そんな感想が零れる程度には、一方的だった。
「制限解除アイテムはばら撒いたし、温情措置でそれ自体に罠を仕掛ける事はしてないじゃないか。序盤の難易度も【檻迎の迷宮】レベルに下げたぞ。ただまぁ……死んだら脱出できる「とは限らない」けどなぁ?」
さてここで新しいダンジョン……名称:星神の試練を一言で説明すると、宇宙だ。具体的に言うと、太陽系みたいな惑星系をモデルとして、星1つが1階層として扱われる。目立つ大きな惑星は配下もとい使徒の数と一緒で、中央の恒星に当たる星で半身(半神)であるソールが待機している。
惑星の間には細かい隕石やその欠片、変形軌道で動く彗星や小さな惑星が並び、外周のどこかからランダムスタートしたあと、飛び石のように星を渡って中央の星へ辿り着くことが目標となる。
え、私? あぁ、まぁ、居るには居るってか、挑戦者が辿り着いたら強制召喚される場所はある。でないと「星神の」試練にならないから。ただ辿り着けるかどうかって言うと……。
「そこへのルート出現条件が“あの場所で待ち構える”ソールの正面からの撃破だからな。ルート自体は【確殺回廊】レベルの罠ルートで、辿り着いたとしても私はソールと一緒に戦うし」
つまり、完全版星神、という訳である。勝てるもんなら勝ってみろ。
だから星神の加護を貰うだけなら、仕掛け突破とソールとの戦闘で十分だ。勝てとも言わない。神域でブーストがかかった状態かつ本気の金色を相手にして10分も粘れば満点をあげよう。ソールのとこまで辿り着けた時点で及第点も出す。
さて話を戻すと、この星神の試練だが……実は、脱出するのにもギミックがある。だから単に死んでも、最初に突入した星のどこかにランダムワープするだけだ。死体で? いいえ。ギミック絡みでちゃんと蘇生した状態です。
「だから、試練だけなら実は自力蘇生アイテムは要らなかったりするんだよなぁ」
ま、それでも持ち込んでおいた方が良いとは思うけど。
さてその肝心のギミックとは何か、というと。「宇宙から脱出するにはどうすればいいか」という事だ。具体的には
「非常に広大な閉じた空間そのものから脱出するには? ──最低限、空間を超える為の門と鍵が必要だよな」
ここで思い出してほしい。私がばら撒いたと明言した、侵入制限緩和アイテムの形を。
……そう。「鍵」だ。それも「星神の印が入った」ものだ。
「ばら撒くとは言った。制限解除に使えるアイテムだと説明した。けど……別に「ばら撒きは今回だけ」とも「他の用途は無い」とも、言ってないよなぁ。それに自力蘇生アイテムの代わりにはならないとは言ったが……「試練では不要なアイテム」とも言ってないぞ?」
むしろ、必須だ。
というか、手に入らなければ詰むまである。
「だって、生身のまま星から星へ移動できるわけないだろ」
つまり。
全ての星に最低1つ存在する「門」を探し、手に入れた「鍵」を使って開ける。これが、本来の方法として用意した階層移動の方法であり、正規の攻略ルートだ。
まぁ一応、自力で宇宙へ飛び出して中心点である恒星を目指す事も可能だが……最低でも既存の生物を止めるか、人間時代の私並の超防御が出来るようになってからでないと、お勧めできない。
宇宙空間を模しているからな。細かい事は省くが、超過酷、とだけ言っておく。非正規ルートだから容赦なぞ無い。正規ルートを通れ。
「まぁその門がどこに通じてるかは通ってみなきゃ分からないんだけどな。場所を動かしたり行き先を入れ替えたりはしないし、脱出の為の門は脱出口だって分かりやすくっつーかほぼ明記したから大丈夫だろ」
ま、その門を見つけるところで躓いてるようじゃお話にならないって事だ。
でだ。それじゃ蘇生すればするだけ得になるかというと、
「んな訳が無いだろ。むしろデメリットは厳しめだぞ、命あっての物種って知ってるか?」
まず大前提として、星神の試練では「スコアカウント」というものが挑戦者一人一人に付与される。詳細は『瑞』のステータスから呼び出せるが、まぁ読んで字の如くだな。フロア踏破率やアイテム発見数、戦闘回数と勝率、貢献度。そういうものを数字として表示、累積するものだ。
で。脱出までに死亡した場合、そのスコアにマイナスが付く。死亡するたびにマイナスが付くから、累積すると大変な事になる。基本的にそれ以外でマイナスになる事は……ない、と思いたい。
そしてスコアカウントがマイナスになった状態で外に出ると、そのマイナス分が借金になる。返済方法は私(星神)への捧げものだ。……一応温情措置として、10回死亡したら強制退出するようにしておいた。
「まぁそれ(返済)にもあの鍵は使えるんだけど」
ちなみに、鍵10本でリスポーン一回分に相当する。つまり普通に挑戦している分には最大でも鍵100本で完済だ。なお鍵自体はさっき説明した通り、取れなきゃおかしいくらい文字通りばら撒いてある。
星1個移動するのに1本必要だから、普通に攻略していけば100本ぐらい余裕で集まると思うんだよな。集まる筈。…………たぶん。
「なーんでそんなところを心配せにゃならんのだ」
最初の挑戦者が落ちてから、まだ挑戦者の現れない裏面で、息を1つ。
難易度のせいなのかなんなのか、また嵩を増し始めた信仰由来の力を抑え込みつつ、ダンジョン内監視画面を開いて様子を見ることにするのだった。
死の修行所・獄 ※心折れ注意
属性:無・罠・境界・異次元位相
レベル:7
マスターレベル:6
挑戦者:566602人
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