第57話 情報+解説=結論

『ダンジョン内で『******』神の使徒が顕現しました

 使徒名『******』:序列第8位:属性???:加護Lv??

 ダンジョン内で使徒名『******』との戦闘が発生しました

 戦闘者はダンジョンマスターです

 ダンジョンマスターは『******』神の加護を拒否しています

 使徒との戦闘が試練:限界突破(討打)として認識されました

 ダンジョンマスターはエクストラアビリティ【神殺し】を所持しています

 試練を達成した場合、以下が与えられます

 ・アビリティ【神殺し】の限界突破

 ・アビリティ【神殺し】の成長速度2倍

 ・上限Lvの限界突破

 ・習得中スキルの限界突破

 試練を達成できなかった場合、以下のペナルティが課せられます

 ・『******』神に対して10年間【神殺し】無効

 ・『******』神の使徒に対して5年間【神殺し】無効

 ・『******』神に3年間500kg/半年の魔石の献上

 試練の達成条件は、使徒名『******』に対し、

 ・3度致死ダメージを与える

 ・声・翼・腕・足を完全に破壊する

 ・所持神器『******』を再生不可能状態まで破壊する

 以上のうち、いずれかの条件を満たすか、

 ・奴隷の首輪、隷属の腕輪を着用させ、弱者の枷を翼に嵌める

 ・一度も致死ダメージを与えず、特殊スキル『隷属化』を発動させる

 以上のうち、いずれかの条件を達成する必要があります』




『――――という事で、マスターの目的を考えるに、狙うならば神器の破壊もしくは『隷属化』の発動デショウか。首輪はともかく腕輪と枷は実物がありマセンし、致死ダメージや体の破壊では逃げられマスから』


 どうやら魔法型だったらしい堕天使風使徒と、魔法の乱射合戦を繰り広げながらショウヨウの解説に耳を傾ける。使徒というのはやはり化け物で、お知らせ画面を見ている暇なんて欠片も無いのだ。

 ふむ……神器っていうのはやっぱりあのレイピアかな? あれだけ黒の度合いが濃い気がするし。


『恐らくは。デスが、第8位ということは複数の神器を持っている事もあり得マスので……個人的には、ペンダントか何かを神官服の内側に着けていたり、髪の間に編み込んでいたり、という可能性もあるかと思いマス』


 なるほど……。

 ところで特殊スキルの発動条件って何だっけ?


『対象の行動不能状態デスね。ただこれほどの相手を行動不能にしようと思うと、前述の条件2、声・腕・足・翼の破壊という事になりマス。もしくは死亡状態デスが、致死ダメージを与えた時点で条件達成不可になりマスので……』


 そりゃダメだな。

 まぁこんな病んだヒト貰っても困るから、リリースできる神器破壊で行こう。


『病んだ……、とは、どういう意味なのデショウか?』


 あー、目の前にいるこういうヒトみたいな状態を言うんだけどな……。

 盲目的っつーか、自分の目的の為なら世界どころか相手の意思すら無視して過激な方向に行動するようになっちゃう状態の事みたいな感じ。

 精神を病んでいる、の意味ね。大体。一番わかりやすいのは、貴方を殺して私も死ぬ、そうすればこれからずっと一緒だね、みたいな?


『あぁなるほど……。手におえない状態という事デスか』


 まぁ大体そういう事。ちゃんとした定義がある筈なんだけど覚えてないや。ごめんね。


『いえ、大丈夫デス。ともかく、とれる手段は神器の破壊一択という結論デスね。ただ…………』


 ただ?


『その使徒の方、鳥のように羽毛に覆われた翼が2対4枚、背中に存在しているのデスよね。確かその特徴、生命神様が生み出された白翼人、という種族だった筈デス。神が隠れられた古代種はともかく、神に手ずから生み出された種族が他の神の信徒、ましてや使徒になるなど、滅多に無い筈なのデスが……』


 ハクヨクジン、ん? てことは何か、このヒト本来は白い翼なのか。


『ただしくは虹の光沢が薄っすら浮かぶようデス。世界でも稀にみるほど温和な種族で、魔法適性が高いものの治癒特化に進むことが多く……』


 こんな風に攻撃魔法の乱射なんてできたとしてもやる筈がない、と。


『デスので、神器さえ破壊してしまえば洗脳、もとい刷り込みも解除されるのではないかと思いマス。それ故に達成条件に表示されているのではないかと』


 あぁ、普通は無いんだ。


『今回初めて見マシタ』


 なるほど。

 んー、魔法適性が高いって事は、魔法耐性も高いって事だよね……。

 つーことは、大技かましても大丈夫かな? 『隷属化』使う訳じゃないから2回までならうっかり加減間違えても大丈夫っぽいし。


《クウゲンさんとれーちゃ、精霊神さんに呼ばれてきましたー。生命神ですー。マスターさん、聞こえますかー?》


 おぉう生命神様!?

 あ、すみません。割と本気で魔法合戦してます。


《いえー、いいんですー。それで、その子なんですけどー……私の子供たちの1人で間違いありませんー。ご迷惑おかけしますー》


 いえいえお気になさらず。

 っていうか、悪いのは彼女を洗脳して使徒にしてこっちに差し向けた黒幕でしょうに。


《うぅ……ちょっと忙しくて、どちらかというと放ったらかしちゃった責任という物がありますしー。第一、宿り木があるのに察知できなかったのはー、お兄様からお説教コースなんですー》


 神様も大変ですね……。


《そんな訳で、少しばかりお手伝いしますねー。その子から感じる神器の数は2つでー、1つは武器、もう1つは髪飾り、威力の増幅と、ダメージの軽減のようですー。マスターさんなら、力技でキャパシティオーバーを起こして破壊できると思いますー》


 それは何よりの情報です。ありがとうございます!

 さてと。お墨付きももらったし、切り札行ってみますかねー。


「――その煌きは彼方より、時を越えて輝き続く」


 待機させておいた魔法を消費し、無詠唱で乱射を続けながら、大仕掛けを起動するためのオリジナル詠唱を口ずさむ。


「あまりの彼方、それは限りある者ではたどり着く事叶わぬ場所」


 使徒さんは様子がおかしい事に気づいたようだ。攻撃の密度が上がるが、逆に威力は下がったので相殺するのに問題ない。


「近寄る事は叶わず、しかし近寄ってはいけない」


 あぁ、やっと気づいたかな?


「彼方の距離を越え、時すらも越え、なお届く煌き」


 周囲にある魔晶の柱、それらが一定の周期で振動を繰り返している事に。


「彼方の距離があるからこそ美しく、過去の物ゆえに儚い光」


 その波紋が、巨大な魔方陣を描いている事に。


「もし近くで見たのなら、もし今の光が見えたなら」


 更に攻撃の密度が上がるが……殻に結局防がれてるから届かないな。


「何もかもを薙ぎ払い、辺り一帯ただでは済まない」


 躍起になってる躍起になってる。届いてないけど。


「煌く光が降り注ぐ、その時は脇目も振らずに逃げるといい」


 逃がすつもりはないけどな?


「煌き輝くのは、防ぐ事も耐える事も叶わない、滅びの光」


 つい、と杖を向けるのはキラキラとまがい物の星が瞬く、疑似的な夜空。その杖に応えるように、キラリ、と星が1つ輝きを増して、


「降り爆ぜろ――『メトラーシュート』」


 ひゅっ、と振り下ろした動作に合わせ、文字通り降ってきた。


 実はあのキラキラしてる星、ただのエフェクトじゃないんだよな。実は内部に攻撃魔法の中でも特大の奴を封入した、80㎝四方ぐらいの丸い魔晶の塊。つまりは特大の魔法爆弾。

 落下するのを受け止めれば特大の魔晶が手に入るけど、時限式でもあるから中の魔法の起動を止めるか魔法陣の消去をしないとそのまま発動する超危険物。暇なときにコツコツ作り溜めておいたんだー。

 しかし何せ単価がとんでもない上に、威力が文字通り桁外れで私だって結界殻が20枚以上残ってないと撃とうって気にならないのだ。文字通りの必殺技である。


 さてそんな必殺技が発動した訳で、私の杖の動きを見ていた使徒さんはとっさに視線を上に向けて、


〈……何だアレは?〉


 怪訝そうな声を出した。しかしすぐに正体を察すると、何故か私に向き直る。


〈き、ききき貴様!? 何という物を作って、いやそれ以前に、何を考えている!? どう考えても貴様もただでは済まないだろうが!!〉

「私この結界殻があるもん」

〈…………!!!〉


 そんな絶望したような顔をされても。


〈はっ、という事はつまり貴様を盾にすればいいと言うこ〉


 言い切る前に中級魔法をその足元に打ち込む。何とか相殺した使徒さんは距離が開いたのを見て、しっかりと顔を引きつらせた。

 折角なので、にっこりと笑って警告しておくことにする。


「やめといたほうがいいよ? 発動したら照準補正含めて自動制御だし。しかも一番表面から何枚か周りにダメージを受け流すタイプの結界に替えてるからね。まぁ、頑張って防げばいいんじゃないかな?」


 つまり意訳すると、「詠唱制限無くなったからさっきまでの調子で魔法は乱射できるし、近くに寄れてもむしろダメージは大きくなるだけ」だ。もちろん最後の一言は防御させる為のささいな誘導。オーバーロードしないとダメなのだから、きっちり防御してもらわないと困る。

 使徒さんはなおも何か言いかけたようだったが、残念ながら時間切れ。衝突まであと3秒。私も結界に注ぎ込む魔力量を増やして衝撃に備えた。

 ……あ、要らん事考え付いちゃった。どーするか、まぁいいや、実行しちゃえ。


【スキル『同時展開』異系展開】

【スキル『結界術』収束結界 対象:封術結晶】

【スキル『魔力操作』指向付与 対象:結界内スキル】

【スキル『魔力操作』自動照準 対象:試練対象】


 ついっと杖を振ってきた結晶に向けて、軽く魔法を発動させる。超高高度から落下してきたために相当な加速がかかっていた結晶が結界に包まれ、しかし勢いは止まらず、その内側にぶつかって爆発した。

 全方向に拡散する筈の閃光は、しかし結界の内部に思い切り収束される。構えていた使徒さんが衝撃が無い事に気づいて結晶を見上げたタイミングで、指向性を与えられたために、極太のレーザーと化した魔法が解放された。


〈ん、な、なぁああああああああああああああああああ!!?〉


 驚愕の叫びをあげながらもレイピアをレーザーに向けて障壁を張り、更に攻撃魔法を乱射する事で何とか相殺しているようだ。とっさの判断としては理想的な対応だな。

 ただなぁ。結晶の中に封じられてた魔法に限りがあるといっても基本私の本気の結界を10枚強は原型なくぶち抜いて、そこから先5枚はヒビがいくほどの威力はある訳なんだよね。

 しかも今はそれを収束した上で指向性を与えて、自動照準で無駄も無いから当分尽きないぞ。エネルギー切れを狙うんだったらもう少しアホらしいキャパシティをしてるか、無限回復状態でないと。


「…………」


 レーザーの光で視界は塗りつぶされそうだが、何とか目を細めて観察する。……んー、普通の魔法で横槍入れてもいいんだけど、流石に可哀相か……。しかし意外に耐えるな。

 というか、魔法を相殺目的で乱射しつつ発射元である収束結界を壊そうとしてるのか。もし破壊できたら収束していたエネルギーは本来通りに爆発。そうすれば耐えきるか、あの様子だと。


「……手を抜くのは良くないよなー。試練だし、使徒相手だし」


 生命神様。いじめになるけど、ごめんね?

















死の修行所・獄 ※心折れ注意

属性:無・罠・境界・異次元位相

レベル:6

マスターレベル:3

挑戦者:42180人

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