第27話 難題×実力=超成長

『―――――――――――――――――――――――』




 で、OHANASHIした結果……え、暴力なんてふるってないよ、ただ正座で向かい合ってこんこんと事情を聴いただけだよ! ……ある程度なら配下契約を交わした相手はポイントを使える事が発覚。

 もちろんお小遣いみたいに上限が決まっているのだが、ダンジョンマスターたる私が気絶という非常事態だったため、その制限が外れていたらしい。なので大量侵入者によるポイント大量ゲットを見込んで、少々大盤振る舞いをしたのだとか。


「具体的には?」

「えー、えーと、内装(クリームカーペット)、ジオラマ付き監視室、水場(上級)、お手伝い妖精さん(1ダース)、服自動生成タンス、良いベッド(1人用)、俺の部屋……かな?」

「うん。クラウドの部屋の中身は?」

「…………トクニナニモイジッテナイヨ」

「分かった。この進攻が終ったらログで確認してみる」

「ごめんなさい、色々趣味に走りました」


 まぁ、随分やらかしてしまったようだ。後で確認して上限をその分下げさせてもらおう。ったく、ポイントは貴重なんだぞ……!

 そしてやっと本題であるオークションシステムの話へ。

 何でも商売神の神殿には特殊な部屋があり、『オークション予定』というのが発表されているんだそうだ。その部屋はダンジョンのような異空間になっていて、自分が入った事のあるダンジョンの情報しか見れないんだとか。

 で、目当てのアイテムのオークション開催日に予約(有料)を入れて、後日再び商売神の神殿へ。異空間が会場仕様になっているので、そこで現金をやり取りするんだとか。


「即金って辺りがミソだね。権威にゴリ押しされないし」

「それでも金持ちの方が強いのは間違いないんだけどなー」


 ちなみにこちらの世界の通貨単位はE、エルと読むんだそうだ。銅・銀・金貨が流通していて、それぞれ1000枚ごとにランクアップするらしい。


「不便じゃない? 銅貨ばっか何百枚とかかさ張るっしょ」

「大判貨っていうのがあって、10枚、100枚単位の2段階があるんだよ」


 ちなみにこの3段階分けのせいで、小銅貨、銅貨、大銅貨、という感じで呼ばれているんだとか。もはや一番小さい通貨が基準の大きさであることを知っている人はそうそういないらしい。

 なお、通貨の両替に関しては商売神印の貯金箱or財布に入れておけば自動的に商売神が適当な貨幣に交換してくれるんだとか。アイテムボックスにも同じ機能が付いていて、コレクターでもない限りざらざらと硬貨を持ち歩いている奴はそうそういないという話だった。

 一般庶民が普通の買い物で使うのはだいたい小銀貨まで、という事から考えるに、1E=10円くらいの貨幣価値のようだ。となると、5桁Eの品物は結構な高級品という事か。


「でも主の場合、鉛ガチャまでっていうのはいい判断だと思うよ。というか、一回放出してみて値段を見て驚いたらいいんだ」

「何その微妙に投げやりな理由。いや、やってみるけど。今から」

「最低額は500E位でいいんじゃないかな。理想価格はその5倍で」

「理想価格?」

「うーんとね、理想価格までは落札金額全部が主の手元に来るんだけど、それ以上は商売神への手数料として4割引きになるんだ。ただ、商売神も儲ける為に金額つり上げと空気の盛り上げを頑張るから、ここが微妙なところだね」

「4割引きなら別に十分な手取りはあると思うけどなぁ……だって商売神は自分の取り分が大きい程熱を入れて金額が付くように持って行ってくれる訳っしょ?」

「いやまぁ、大丈夫だよ、主の場合5倍でも。元々の値段がこれでもかなり低いんだし」


 なんてことを言いつつ、錫ガチャの品物は最低500E、鉛ガチャは1000Eに設定し10品ほどオークションに出してみた。右側の横長の枠に設定した品物が並び、『オークション:1週間後』という表示が付く。


「これで後は放っとけば、勝手に入金までされるから」

「オークションが始まったら吊り上り具合も見てみるかな……」

「うん。そして主は自分の扱っているものの非常識具合をぜひ知って」

「規格外だの非常識だのと誰も彼も…………」


 むぅ、と不機嫌にもなる。ちなみに今の服装は黒尽くめだ。

 あの服の趣味は結局誰だったかと言うと、どうやらお手伝い妖精さんの中の数名だったようで、電車で黒尽くめに着替えて戻ると、カタンカタンと何やら音がした。何事? と思って引き出しを開けてみれば、シンプルで使いやすそうな服の並びに切り替わっていたので、まぁ間違いないだろう。


「そういえばクラウド、団体さんはまだ終わりそうにない?」

「あーそうだなー。でも兵種的にはだいたい出尽くしてきたから、そろそろ終わるんじゃないか? ちなみに、まともにフロアを移動できた奴すらゼロな」

「狙い通り踊ってくれて万々歳だね。……また眠くなってきたからもうちょっと寝る。電車で」

「え、ベッドじゃなくて」

「うーん……なんか、居心地はいいんだけどこの部屋落ち着かない」


 意外そうな声が返ったが、それには素直に答えた。そう、何か落ち着かないのだ。そりゃあふかふか布団は素晴らしいが、よほど疲れた時以外は別にいいような気がする。

 どうせ黒尽くめに着替えたので、と、クラウドに第二層へ戻ってもらい、ひとまず電車に移動。荷物が山積みになっていたのでそれを整理がてら移動させ、これは食料倉庫が別にいるなー、とか思いながら、応急処置的に『変性生成』で作った岩倉庫の中に収めた。

 そしてすっきりとほとんど何もなくなったところで、あの席で肘をつく。今度こそやってきた睡魔に逆らわず、欠伸を1つして、再び眠りの世界へ旅立ったのだった。




 で。


「気が付いたら5日経過してたとか、一体何があった……!?」

「え。主が疲れてたって事じゃないの?」


 太陽光充電池を充電するケーブルに、『雷属性適正』の雷属性付与(最低レベルの1/10)をかけた手で触る、という手間を介して充電した携帯電話のカレンダー表示を見て、あまりの時間の抜けっぷりに心底驚愕する事となった。

 さっくり発言するクラウドは呑気にしているが、ログを見てみるときっちり金鬼を沈めていた。それも第2層の広い場所で直接戦っている。戦闘の様子が録画に残っていたが、はっきりいって動きが見えなかった。両方。

 が、まぁとにかく、撃退完了である。一体何人だったのか、とログを確認してみると、


『侵入者の撃退に成功しました

 侵入者の総人数は6612人でした

 138480の職業ポイントを入手しました

 198360の経験値を入手しました

 99180のダンジョン経験値を入手しました

 以下のアイテムを入手しました

 ・香り麦の固パン×18836

 ・祈り泉の湧水×13224

 ・豊穣神の蜜果×6612

 ・飛来蜂の蜜×612

 ・猛闘牛の乳飴×12

 ・セイントブラッド国一般兵士の食事キット×6000

 ・セイントブラッド国一般兵士の懐剣×2000

 ・セイントブラッド国一般兵士の魔導指輪×2000

 ・セイントブラッド国一般兵士の手斧槍×2000

 ・セイントブラッド国士官兵士の魔法瓶×600』


 経験値と基本アイテムだけでこれだ。当然この後には称号の処理が続く。少し上にずらせば、そっちはそっちで同時突入人数が何人を越えました、アビリティを入手しました、とかいうのがずらずら続いている。

 今回もまた金鬼はインフレを起こしているが、あれだ、数ってやっぱり暴力だよね。個人を比べるのは間違っているんだろうが、この大軍の後では霞んで見える。


「……クラウドー」

「何、主」

「1年まであと時間あるけど、このセイントブラッド国の軍、また来るかな」

「あー、どうだろ。金鬼に戦いがてらちょっと情報吐かせたけど、金で買える自力蘇生アイテムのかなり大規模な買占めがあったらしいし、あと2回来てもおかしくはないけど?」


 戦いがてら情報吐かせた、という発言は何かおかしい気がしたが、それ以上にまた来る可能性がそれなりに高いという事実にため息しか出ない。


「なんて面倒な……。何? 何かこのダンジョンに因縁でもあるの? 正直言って面白くないしうざいからもう二度と来ないでください」

「理由が主だよね。ピンチだからじゃなくてうざいからって辺りが特に」

「うちのダンジョンの苦手部類の相手は一点特化の天才だよ」

「金鬼とか」

「うん。来たら相手よろしく。一応個人殺しの仕掛けも考えてるけど」

「あぁうん、さすが主。諦めずに対策立て始めてるんだ」


 ずらずら並ぶ称号だのアビリティだのを確認しながら言えば、けらけらと笑いながらクラウドは言う。何がそんなに面白いのかは分からないが、私の行動はいちいちツボに入るらしい。

 ちなみに称号の方はこんな感じ。


『称号【耐えきった主】を入手しました

 称号【捌ききった主】を入手しました

 称号【返り討ちの主】を入手しました

 称号【不落のダンジョンの主】を入手しました

 称号【底無しのダンジョンの主】を入手しました

 称号【絶望するダンジョンの主】を入手しました

 称号【村潰し】を入手しました

 称号【罠スペシャリスト】を入手しました

 称号【迷宮創造者】を入手しました

 称号【謀略の哄笑者】を入手しました

 称号【手を汚さぬ者】を入手しました

 称号【殲滅者】を入手しました

 称号【5000人斬り】を入手しました

 称号【抗い続ける者】が【理不尽にすら抗う者】に変化しました

 称号【逃げ切った者】が【逆境を跳ね返した者】に変化しました

 称号【狙われる者】が【追われ続ける者】に変化しました

 称号【我が道をゆく者】が【道を諦めない者】に変化しました

 称号【道を諦めない者】が【道を貫く者】に変化しました

 称号【道を貫く者】が上位称号【己が道を突き進む者】に変化しました

 称号【村潰し】が【町潰し】に変化しました

 称号【町潰し】が【街落とし】に変化しました

 称号【街落とし】が上位称号【国落とし】に変化しました

 称号【名防城の主】が上位称号【難攻不落の主】に変化しました

 上位称号【難攻不落の主】が【不落伝説の主】に変化しました

 称号【本当の黒幕・序】の進化条件を満たしました

 称号【本当の黒幕・序】が【本当の黒幕・初】に進化しました

 称号【理不尽にすら抗う者】と【逆境を跳ね返した者】が統合されました

 上位称号【どこまでも抗う者】を入手しました

 称号【生き延びた主】と【耐えきった主】が統合されました

 上位称号【耐え忍ぶ主】を入手しました

 称号【専守防衛主】と【捌ききった主】が統合されました

 上位称号【防衛専門主】を入手しました

 称号【生かして帰さぬ主】と【返り討ちの主】が統合されました

 上位称号【見敵必殺の主】を入手しました

 上位称号【どこまでも抗う者】と【己が道を突き進む者】が統合されました

 希少称号【自分の道を歩む者】を入手しました

 上位称号【不落伝説の主】【耐え忍ぶ主】【防衛専門主】が統合されました

 希少称号【不落の守りを布く主】を入手しました』


 そして、アビリティはこんな感じ。


『アビリティ【対集団補正】を入手しました

 アビリティ【対軍隊補正】を入手しました

 アビリティ【対統率補正】を入手しました

 アビリティ【指揮範囲拡大】を入手しました

 アビリティ【支配範囲拡大】を入手しました

 アビリティ【配下補正】を入手しました

 アビリティ【部下補正】を入手しました

 アビリティ【体術の心得】を入手しました

 アビリティ【魔術の心得】を入手しました

 アビリティ【近接武器の心得】を入手しました

 アビリティ【遠隔武器の心得】を入手しました』


 あとはスキルスロットが6個増えて、限定職業が確か【防具職人】【投擲職人】【細工師】、限定スキルが【火属性適正】【土属性適正】【風属性適正】【命属性適正】【同時展開】と手札関係も増えた。

 ダンジョン限定のボーナスで行くと、


・階層フロア制限緩和:+2フロア

・屋外フロア(砂)

・屋外フロア(沼)

・屋外フロア(雪)

・演出機能

・ボーナス機能

・設定:気候

・設定:継続ダメージ地形

・施設属性:ハウス系

・施設属性:プチダンジョン

・施設属性:ミニゲーム系

・マスター能力:ダンジョン内透明化(60s/h)

・マスター能力:ダンジョン内魔法攻撃力30%→50%上昇

・マスター能力:ダンジョン内魔法防御力30%上昇

・マスター能力:ダンジョン内物理防御力20%上昇

・マスター能力:ダンジョン内魔力回復速度40%上昇

・マスター能力:ダンジョン内魔力運用効率10%上昇

・マスター能力:ダンジョン内魔術系スキル効率20%上昇


 という感じか。

 その確認も終わり、さて崖エリアの編集作業にかかろうか、と思った時点で何気なく『冒険者予報』に目をやると、


『冒険者予報

 時刻:2日後

 人数:6612人

 挑戦回数:2回目

     ↓   』


「……クラウド、やっぱ来るみたいだよ、セイントブラッド国。2日後」

「え、マジで」


『    ↑

 時刻:2日後

 人数:(カウント不可)』


「で、何か…………別の国の軍も、合わせて突入してくるみたいだよ?」

「へー……、へ!? うそ、マジ!!?」

「マジ。虫の精霊さんが教えてくれた。画面転送するから自分で確認して」

「………………う、わー、マジで。マジか。マジだな、今度はどこの国?」

「知らないよそんなの。またあの気持ち悪いのが来るのか……」

「あー、あれだ。主、ファイト」


 果たして、生きていられるだろうか。主に成長負荷の方で。

















死の修行所・獄 ※心折れ注意

属性:無・罠・境界・異次元位相

レベル:2

マスターレベル:1

挑戦者:9367人

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