第53話 想定-実力=報酬

『jfw83yt73qhgouhAW9JFKDHANVIDsvnlsq;j938yr673qr1092tgjiehgiesnfvzdkfsurh75ygpsfdkasdvas@d;g:awSMBKAIHEUvrn/aovw0edlksvDSNFSIKDJFIWEAKVNIew4jgs48eg;upawjgir9j9osrigj4so;dmf02ikfasdjfoiaq1:pfjoa;jdsljgifdsnvzlls;dJFISEFLSKNVIf;al3mkngivaw3ffji3j8wafh8wh4flkanvgiaw8fpaq310orjflxkdZHGhiuglskjg8IRSLJDI4rjo;skdvao……………………』




「し、つ……こいっ、つってんでしょーが!? まとめて吹き飛べぇえええええええええええ!!」


【スキル『同時展開』異系展開】

【スキル『火属性適正』メァド・フラム】

【スキル『音属性適正』ハーネスビート】

【スキル『圧属性適正』クラスト・プレス】

【スキル『結界術』設計結界“増倍球” 対象:同時発動スキル】


 私を中心として同心円状に全てを砕いて燃やす炎が広がる。押しかけてきていた地虫型のモンスターは音波の波に足を掬われて引っくり返り、甲殻を圧力で粉々に砕かれ、密度の高い炎で消し炭と化していった。

 即座に杖を頭上へ向けて、属性を変えてもう一発。


【スキル『同時展開』異系展開】

【スキル『氷属性適正』インフェクト・フリーズ】

【スキル『晶属性適正』クリスタルラウド】

【スキル『冥浄魔法』キューボ・グライス】

【スキル『結界術』設計結界“増倍球” 対象:同時発動スキル】


 バキバキバキバキ! と硬質な音を立てて、空気中に漂っていた悪霊の類が纏めて凍りついた。だけでなく、次から次へ寄ってくる奴らも一網打尽にして捕まえる。

 一瞬開いた隙間に躊躇いなく結界を纏ったまま突っ込んだ。もちろん背後からは後続が追いかけてくるが、なめてもらっては困る。

 氷は悪霊の類を浄化しながら広がって行っている。当然ながら効果範囲っていうのはあるし、その中に入ってきた悪霊を全部浄化しきったら普通よりちょっと冷たくて丈夫な氷に戻る。

 で。その下は轟々に燃えてる訳でさ。


――――――――――――!!


 はい、水蒸気爆発成立。

 爆風も推進力にして一気に進む。追い越して行った爆風が次々と現れる悪霊だの地虫だのを薙ぎ払うのを無視して先を見据えると、最初見つけた時は針の穴ほどだった光が、人ひとり分ぐらいに大きくなっているのが確認できた。

 空色をした壁に大穴開けて飛び込んだと思ったら次は軍隊的な人形の群れ。

 それを全滅させて天井をぶち抜いたと思ったら小型猛禽の群れ。

 それを全部叩き落として天辺のカゴを砕いたら動く死体の群れ。

 それを全部浄化して魔法を乱射したら真っ暗い中で地虫と悪霊の群れ。


「全く、本当に……」


 そして出口らしい光に飛び込んだ先に何があったかというと。


「……どうしてくれようか犯人の奴」


 がっちりと全身鎧を着こんだ、5mはありそうな高さの、人型の何かがずらりと並んでいた。おそらくゴーレムだろうというのは分かるのだが、しかしなんだ、このロボの群れVS個人というふざけた図式は。

 低い重低音が徐々に大きくなっていく。恐らくゴーレムたちが起動に入っているのだろう。ざっと見回した限り数は大よそ1千といったところか。まともに相手にできる数じゃないな。


【スキル『同時展開』同系展開】


 だが、


【スキル『同時展開』異系展開】

【スキル『火属性適正』アッシュ・エンド】

【スキル『爆属性適正』ブロウアップ・シェード】

【スキル『結界術』設計結界“倍増球” 対象:同時発動スキル】

【スキル『魔力操作』過魔力発動 倍率:5倍 対象:同時発動スキル】


 まぁ、


【スキル『同時展開』異系展開】

【スキル『水属性適正』サブマージ・コフィン】

【スキル『氷属性適正』ホワイト・ゼロ】

【スキル『結界術』設計結界“倍増球” 対象:同時発動スキル】

【スキル『魔力操作』過魔力発動 倍率:5倍 対象:同時発動スキル】


 それなら、


【スキル『同時展開』異系展開】

【スキル『風属性適正』エアロ・アウト】

【スキル『音属性適正』ハウル・ペルマネンス】

【スキル『結界術』設計結界“倍増球” 対象:同時発動スキル】

【スキル『魔力操作』過魔力発動 倍率:5倍 対象:同時発動スキル】


 単純に、


【スキル『同時展開』異系展開】

【スキル『土属性適正』ガイア・イラ】

【スキル『木属性適正』プランター・ニィル】

【スキル『結界術』設計結界“倍増球” 対象:同時発動スキル】

【スキル『魔力操作』過魔力発動 倍率:5倍 対象:同時発動スキル】


 ――まともに相手をしなければいい話なんだけど。

 4大属性とその派生属性をそれぞれに強化した拡散型の一撃。広範囲殲滅を目的として構成した魔法は、たぶん普通の人が撃てば溜めの時点で命を持って行かれるだろう魔力量が込められている。

 起動前に攻撃するとは卑怯なり! なんて声が聞こえた気もしたが、敢えて言おう。


「知った事か」


 そもそもこっちが圧倒的に劣勢なんだ。加減なんてしてられるか。卑怯だの汚いだのというんだったらそもそも対等に戦える戦力にしておけっていう話だろうが。

 第一? 無理やり人の事をさらっておいて強引に戦闘に放り込んでおいて? それでまだ何の無理を求めるのかな?


「なぁ。人攫いの主犯格。いるんだろ、隣の部屋に」


 結界殻を張り直し、杖に魔法を待機させつつ声を放る。あぁ、ゴーレムは見るも無残な姿になって全滅してる。具体的には残骸もしくは瓦礫になった。

 【神殺し】の恩恵の1つなのか、それとも私の勘が鋭くなっただけか、はたまた鑑定系のスキルを上げていた為か、分かるんだよねー。ゴーレムの群れの向こう、神様の気配がいくつかするのが。


「何の目的でいきなり誘拐なんてしたのか、納得のいく理由はちゃんとあるんだろうね? まさか気分とか言わないよなぁあのくそ忙しい最中攫っておいて」


 再び大技を杖に溜めていく。今の魔力量と回復速度でいくと……大技は3連射が限界か。それ以上は動きが鈍くなるな。


「……あぁ、大丈夫。殺せるとは思ってないから。むしろ勝負にすらならないのはよく知ってる」

〈ほ、本当か!?〉

〈バカ、返事したら居るってばれるだロ!?〉

〈しまったぁあああ!!〉

「しまったじゃねーよ誘拐犯が。居留守なんて使うつもりだったんなら問答無用で魔法ぶち込むけど?」

〈〈ギクッ〉〉


 まぁ勝負にならないからと言って戦闘を仕掛けるかどうかは別問題だし、戦闘になるからには死ねた方がマシだと思ってもらえるように本気の全力は尽くすけどな。


〈(おい、今何か恐ろしい事を考えたような気配がしたぞ!?)〉

〈(ボクは関係ないって言ってるのに、くそ、はなセ!!)〉

〈(放してたまるか!! 盗賊の貴様、逃げ足を発動させるほどの危機感を感じていながら我1人を放り出す気か!?)〉

〈(だっから今回は戦争のの責任だロ!?)〉


 聞こえてるぞお前ら。それで小声のつもりか?

 しかしそうか。主犯格は盗賊神に戦争神か。なるほどなるほど、攫うのは盗賊神がやって、この場を用意したのは戦争神だとすれば色々しっくりくるな。

 向こうに察せられないようにひそやかなため息を1つ。魔力の充填が終わり、完全に溜め終わった杖を気配の方に向ける。


「そうか。返事が無いならしょうがないな。気配はするから強行突破するか」

〈ま、ままま待て! 今そちらへ向かう! この先を壊されると後で空間のに絞られるのだ!!〉

〈ちょっ、待て戦争の、だからボクは関与してないって言ってるだロ!? 引きずるな巻き込むな自爆は1人で勝手にしてロ!!〉


 そんな慌て声の後、バッターン! と勢いよく壁だと思っていた場所の真ん中が両開きで開いた。扉を開けたらしい右手を真っ直ぐこちらに向けているのは全身キラキラしくも桁外れの重量と格を感じさせる鎧をまとった大男。逆立った赤い髪は炎にも見え、同じく赤い目や濃い顔と相まって仁王様のようだ。ただし、現在その顔には割と沢山の汗が浮かんでいるが。

 で、その大男さんの左手には縄が握られ、比較すると小人に見えてしまいそうな程小柄な少年がぐるぐる巻きに縛られて引きずられていた。装備の詳細は縄のせいで見えないが、猫っ毛のようにあちこち跳ねている銀髪に大きな黒い目、なんというか、全体的にラートに雰囲気が似ている。


〈やかましい盗賊の!! 貴様が実力を見たらどうだと唆したんだろうが!?〉

〈だから何でそう不利になる事をポンポン当事者の前で吐くんだ戦争ノ!! この単細胞ガ!!?〉

〈単細胞とは何だ!! このいたずら小僧が!!〉

〈お前のことだヨ!! あぁもう頭が足りないだけに性質が悪イ!!〉

〈貴様!?〉

「へぇ。お初にお目にかかる方々だね。戦争神様に盗賊神様でいいのかな? まぁ別に内輪でもめてくれても構わないけど、いつまでかかるのかなぁ……?」


 ぎゃいぎゃいとその場で言いあう2柱の神様たちに、気分は銃のトリガーに指をかけた感じで魔法を向ける。高まる魔力に流石にこちらの殺意ぐらいは気づいたらしく。ゴホン、と咳払いをした大男は、


〈うむ、我こそが戦争神である!!〉


 ゴーレムの残骸たちの向こうで、今更感のぬぐえない威厳たっぷりにそう切り出した。


〈実は冥府のから、1万にも及ぶ大軍を死者無しに返り討ちにしたと聞いたのでな! 是非ともそれは実力を見たのち加護を授けねばなるまいとこの場を設けたわけだ!〉

「ほう」

〈そして貴様は全ての試練を突破した! よって褒美として加護を授けてやろう!!〉

「うん。いらない」


 ビキリと音を立てて固まる戦争神様に、その足元で〈うわぁ予想通りかヨ〉なんてよく分からない事を呟いている推定盗賊神様。閉鎖された空間の筈だが、元ゴーレムの瓦礫の間を、ひゅるり~、と変な風が流れた気がした。


〈……う、うむ!? い、いい今、何と申した!?〉

「こっちの事情も考えず問答無用で誘拐して連れ去った挙句、同意も確認も説明も無しに試練を押し付けるようなはた迷惑な神(ひと)の加護はいりません」


 再び固まる戦争神様。その足元で〈解説が丁寧なだけに殺意が溢れすぎてるゾ……〉なんて呟く推定盗賊神様。完全に閉鎖された別空間の筈だが、あーほーあーほー、なんて鳴き声が聞こえた気がする。


〈わ、我は一応、人の世に対する影響が大きすぎるとして、中々加護を授けられぬのだ! つまり割と入手は難しいのだぞ!?〉

「ダンジョンが完全攻略不可能認定されちゃいましたし、第一こっちからどこかへ打って出る用事なんて推定とある神様以外全く無いんで使う場面が思い浮かびません。だからいりません」

〈ほ、ほほほ報酬無しでは色々とあちこちから締め上げられるのでな!? 何とか受け取ってくれると全て丸く収まるのだが!?〉

「理不尽な目に遭っているので丸く収めるつもり皆無ですし、むしろ1回締め上げられればいいと思いますよ?」

〈諦めろ戦争の、どう頑張っても交渉不成立だぞこれハ〉

〈元々の原因は貴様だろうが!?〉

「ちなみに確認なんですけど」


 仲が悪いのか反りが合わないのか、また喧嘩を始めかける2柱に、静かに口を挟んだ。


「誘拐の実行犯は盗賊神様で合ってますか?」

〈い、いいいいや、ボクは単に戦争のが面白い事をするって言うから見物に来ただけで、無関係だヨ?〉

「つまり私が必死に抵抗しているのを面白おかしく眺めていた、と」


 うん。こっちもどうしてくれようか。

 マフラーと帽子で顔を隠したまま思案する。うーん、このまま戦闘するにしてもハンデぐらいは欲しいしなぁ。てゆーかさっさと帰りたい。でも理不尽な目には遭わされたから何か要求してみるか……でもなぁ。欲しい物なんて特にないしなぁ……。

 盗賊神様の方は、ラートに加護をつけてくれたらそれでいいけど、戦争神様なぁ……。本気で欲しい物が無い。兵糧は農耕神様だろ? 武具は鍛冶神様だろ? 兵士はそれこそ要らない物筆頭だし、後戦争関連っていったら指揮強化とか修練場とかか?

 うちの皆は強化すると手に負えなくなるし基本皆自分の力で強くなっていく派だし、修練場なんてそれこそ使ってない階層の外れでも適当に強化加工すれば済む話だし。


「………………」


 さっきからぎゃいぎゃいと言い争いをしている戦争神様と盗賊神様を眺めつつ、一応色々考えてみる。しかし特に思いつかない。さてはてどうしたものか。


《……マスターさん~、聞こえる~? 念話みたいなものなんだけど~》


 おや、この声は精霊神様? 何かご用でしょうか。


《ううん~。ただね~、その2柱(ふたり)すごく仲が悪くてね~。いつまででも喧嘩してるから適当に口挟まないと終わらないよ~って言っておきたくて~》


 あぁ、何となくそんな気はしてました。


《あとね~。ダンジョンに戻るなら~、それなりに色々覚悟しておいた方がいいかも~。大変な事になってるから~》


 ……はい?

 えっちょ、大変な事って何事が!?


《よく分かんない~。それじゃあね~》


 さいですか…………。

 さて、出来るだけ急いで帰りたいが、まだケンカ中だなあの2柱(ふたり)。何を要求しようか。

 って、ん? ゴーレムの残骸、なんか光ってないか?


【スキル『深層眼』対象:戦争神のゴーレム(残骸)】


 何か気になってスキルを発動してみればそこにも残骸の文字。世界にもしっかり破壊済みとして認識されているようだ。数秒おいて、詳細がずらずらと並ぶ。

 ……さすが神様。遠慮なく高価な部品だの素材だのを突っ込んであるなー。

 って、ちょっと待て? この回路とこの核で、んでもってこういう構成になってるって事は…………


「……ふむ」

【スキル『雷属性適正』ブルーボルト×5】

〈〈うおぉぉお(オ)!?〉〉


 欲しい物が決まったので、いつの間にやらスキルや武器ありの大ゲンカに突入していた戦争神と盗賊神に手持ちの中で一番速い魔法をぶち込む。叫び声をあげて飛び退った後こちらを見てくれたので、


「欲しい物が決まりました」


 にっこり、と笑って、要求を告げる事にした。





















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属性:???・???

レベル:???

マスターレベル:???

挑戦者:???

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