第6話 俺、この子達がレベル999になったら結婚するんだ
訓練場に微妙な空気が漂う。
剣や鎧、弓などが並べられた木のテーブルと、その傍らで冒険者証にお手をしているチワワ。
それからチワワを前にほっこりする少年とドン引きしている女性。
シュールなことこの上ない。
だがペット愛に溢れる少年はこの微妙な空気に気付かない。
本人にとっては楽しくてしょうがないのだ。
チーちゃんが強いということは、他の子達も期待できる。
春太はいそいそとプーミンの手をとった。
「これが『猫の手を借りる』、なんちって」
もはやスベることも気にせずプーミンのステータスを確認した。
プーミンのステータス
レベル:472 種族:シンガプーラ
攻撃力:2916 防御力:2928 素早さ:2944 魔力:2996
HP:4333 MP:4265
スキル:ショック、サンダー、サンダーボルト、ライトニングショット、ライトニングフォール、ヘルサンダー、ボルケイニックサンダー、ジュピターサンダー
これを見てフーラが顔を青くした。
「あわわ……これ、壊れてたりするのかな? だってこんな小さな猫ちゃんが……」
「フーラさん、まだ最後が残ってますよ? そんなんじゃ腰を抜かしてしまうんじゃないかなあ。それじゃあウチのエース、セリーナ姉さんお願いしやす!」
春太が冒険者証を差し出すと、セリーナは自分で手を乗せた。
セリーナのステータス
レベル:491 種族:ボルゾイ
攻撃力:3403 防御力:3050 素早さ:6200 魔力:1752
HP:4422 MP:996
スキル:二段攻撃、タックル、ファイアバイト、アイスバイト、ウインドバイト、アースバイト、ハウリング、メテオタックル、全状態異常無効
フーラが本当に腰を抜かし、地面にぺたんと座り込んでしまった。
「嘘、嘘……?! 確かにこのワンちゃんは強そうですけど、これは異常です! チ、チートでしょこれ!」
「これは想像以上だな……っていうか素早さ6200ってバグってんじゃないの?」
まさにチートだ。
春太も冒険者証の故障を疑うレベルだった。これって俺がもらうはずのチート能力がこの子達に間違って渡ったんじゃないのか?
「うう、疑惑は尽きませんが……次に、皆さんの覚える予定のスキルも確認できます」
そう言ってフーラは手の平サイズの水晶を取り出した。これに触れ、ということか。
春太が水晶に触れると、空中に光の文字が浮かび上がった。
春太がこれから覚えるスキル
レベル2:曲射
レベル5:強撃
「良いのか悪いのかよく分からないな……」
春太が呟くとフーラは元の調子を取り戻す。
「これこれ、これが普通なんですよ! 二個先まで覚える予定のスキルが確認できますので、『強撃』まで覚えたらまた確認すると良いと思います。この水晶は役場か、もしくは街の周辺にあるダンジョンの入口に設置してあります」
「まあいいや。それじゃあチーちゃんのは……」
春太はチーちゃんの手をとって水晶にタッチさせた。
チーちゃんがこれから覚えるスキル
レベル900:人語習得
レベル999:人化
春太は固まった。な、なんだと……?! 人語習得……? 人化……?
チーちゃんが人の言葉を話す未来を想像する。
隣でフーラが目を剥いて絶句しているので、春太は次にプーミンを試した。
プーミンがこれから覚えるスキル
レベル900:人語習得
レベル999:人化
同じだ。
これはもしや……と思い、セリーナも試した。
セリーナがこれから覚えるスキル
レベル900:人語習得
レベル999:人化
「そ、そんな……! 人語習得とか人化は本当に限られた神話クラスの召喚獣しか覚えられないのに……! それが三体も?!」
あまりに衝撃的なことなのか、フーラの手が震えている。
一方、春太は別の意味で手を震わせていた。
この子達が人の言葉を操る未来。
この子達が人の姿になる未来。
なんてバラ色な人生なんだ!
春太は目に涙を浮かべながら力強く言った。
「俺、この子達がレベル999になったら結婚するんだ……」
「え、えええええぇー?!」
フーラが恐ろしいものを見てしまったとばかりに十歩分くらい距離をとった。
その後、その距離が埋まることなく簡単に弓の訓練を受けて講習は終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます