ドライブイン安土 邁進6

 ぬぉっ!?まさかここまでとは!?あの透明の部屋の中で植えている物はなんだ!?何か身ができているぞ!?


 「わっはっはっ!おーい!坊さん!じゃなかった。すまん。吉之助だったな。どうだ?凄いだろう?」


 「う、うむ!本当に凄いところです」


 「名無しの権兵衛兄ちゃん!オイラ達は本当にここに住んでいいの!?」


 「あぁ。まずは尊っていうここを治めている人に挨拶してからだな」


 「おぉ。慶次坊!帰ったか!」


 「ばーか!俺ぁ〜、今は名無しの権兵衛だ!分かったか!爺ッ!」


 「なっ!誰が爺だ!!」


 「まあいい。この者等に、簡易風呂と簡易湯沸かし器を使って風呂に入れてやってくれ!臭くて叶わん!それと、誰ぞ握りも作ってやってくれ!俺ぁ〜、ドライブインに走って女を呼んで・・・」


 「あれ!?慶次さん?帰ったんだ!?それにこんな大勢まで連れて来たの!?」


 「おぉ!ちょうど良かったぜ!皆の者!こちらへ向け!このお方こそ、織田軍 武器開発及び新設部隊創設役の尊だ!俺の殿でもある!」


 「「「「おぉ〜!!」」」」


 この男がこの甲賀を!?見た事がない。それに聞かぬ名だな。何者だ?いや、まぁいい。まずは皆に溶け込んでおこう。ふんっ。何人か手の者も連れて来ている。愚民を陽動する術は心得ている。


 「いやいや、オレはそんな大した男ではありません!う〜ん・・・とりあえず、皆はこの小川さんという人に従って待機しててください!」


 本当にかなりの人数を連れて来たんだな。こんな事なら桜ちゃん達も連れてくれば良かったな。


 「(ノア?悪いけど・・・)」


 「(キャハッ♪オッケー!またあのお店に戻るんでしょ!?まっかせなさい!)」


 ハァー。またあの怖い怖い騎乗か・・・。


 バシューーーーーーーーーン


 「さぁ!我が君が言った通り、ワシに着いて来い!なーに!ちゃんと家は用意している!驚くなよ?夜でも蝋燭を使わずに明るくなる電気なる物があるぞ?使い方も教えてやるからな!がはははは!」


 オレは必死にしがみ付いきながら考えた。人手が増えたからだ。教育をするのは時間が掛かる。が、今後を考えればかなり良い事だ。カナ任せにはなってしまうが、タブレットで購入している、7割増しくらいの効能がある肥料を使えば最低限の食は確保できる。

 食が豊かになればこの時代なら心の棘も無くなる。料理人ももっと増やしてもいいな。もっと村を拡張して、一つの町を形成してもいいかもしれない。


 そして、再び店に戻り、桜ちゃんや梅ちゃんを呼び寄せ甲賀へ戻る。途中、カナとすれ違い理由を話した。カナもカナで、人手が増える事に喜んでいるようだ。

 ちなみに、桜ちゃん梅ちゃんはどうやって移動しているか・・・。まさかのノアのスピードに着いて来ているのだ。オレの配下の女性には驚かされてしまう。


 程なく再び甲賀へ到着したわけだが、ここからは女の子の番だ。まずは健康診断。これをしない事には始まらない。その後は小川さんが褌一丁で風呂の簡易風呂の入り方を教えてくれるはずだ。もちろん、シャンプー、ボディーソープとだ。

 オレはその間に源三郎さんの元へと急ぐ。


 「おぉ〜!やっと来てくれましたか!!これです!見てくだせぇ〜!」


 「源三郎さん!あけましておめでとう御座います!なんか、焙烙玉を作ったと聞きましたよ」


 「そうです!まずは訓練場に・・・」


 この訓練場とは、例の地下施設の秘密階段を上がり、甲賀村がある山を切り開いて、新たに木柵で目隠しした場所だ。ここへ来るにはあの地下から来るか、一応入り口はありはするが、常に甲賀村の誰かが見張りをしているから、そう易々とは入れない。


 「これが新たに作った焙烙玉です!麻紐を油と火薬を染み込ませ乾燥させた物です!油紙で包み、中には黒色火薬を仕込んであります。

 この火薬は、木炭、硫黄、硝酸カリウムを粉末化して混合したものです。導火線から発火すると、酸化剤である硝酸カリウムの酸素が木炭と硫黄に結びついて燃焼、最終的に二酸化炭素と窒素気体、熱を発生させて急激に膨張することで、爆発させる仕組みでございます」


 「あ、うん。カナから座学で化学も教えられたのかな?」


 「はい!その通りです!言葉遣いも教えられました!丁寧な言葉が苦手でしたが、今では問題ないくらいには・・・」


 「いや、まぁ言葉は別にいいけど、それにしても理論まで知ってるのは凄いですね。試しに火を点けても?」


 「どうぞ!どうぞ!」


 この焙烙玉・・・。見た目は本当に焙烙玉って感じだ。だが、ちょっと大きいような気がしないでもない。できる事ならもう少し小型にして、この甲賀のオレの部隊には一人二つを標準装備とさせたいが、両手で持たないといけないくらいだからまだまだ厳しいか。まぁまずはその威力を見てみよう。


 オレは火を点けて遠くに投げてみた。


 ドォォォーーーーンッ


 「おぉ〜!!凄い!!」


 「はっ!お褒めに預かり光栄です!」


 威力は花火のアレとは全然違う。あれを至近距離でくらえば間違いなく致命傷となりそうだ。が・・・、オレは肩が弱いから、これはこれでいいけど、炮烙隊のような専門の部隊も新たに創設した方が良さそうではある。


 「これは量産できるの?」


 「はい!構造は実に簡単ですので、既に50個ほどは用意してあります!この油紙の中は例の野戦砲の弾と作りは似てますので、中に木屑や鉄屑を入れると更に殺傷能力が上がると思います!」


 「確かにね。それはそれでいつか大戦のような野戦があるなら必要かもしれないけど、今はまだいいかな。この炮烙玉を専門に扱う部隊とか作ろうと思う。とりあえず、源三郎さんは片手間でいいから偶にこれを作ってくれます?」


 「畏まりました!」


 「じゃあ、この箱の中の焙烙玉は少し借りるよ!皆にお披露目しようと思う!」


 「どうぞ!どうぞ!玩具のような物です!」


 

 湯が温かい・・・下で薪でも焚べているのか!?いや・・・これが温かいのか!?そもそもこの黒い箱はなんだ!?この紐はなんだ!?『絶対に水に濡らすな』とあのジジイが言っていたが・・・。


 「皆の者!注目!これを上から押して、出てきた液体を頭に付けて泡立てるのだ!ゴシゴシと洗え!そして、その横に入ってるやつで次は体を擦り、垢を落とせ!くれぐれも洗う前に桶に入るでないぞ!」


 「お、小川様!何故、この中で洗ってはだめなのですか!?いや、何故かこの部屋は暖かい・・・というか、暑いくらいですが、湯の中で洗う方が早い・・・」


 「黙られい!湯に入る前に身体を洗うのは礼儀だ!つべこべ言うな!洗い終えた者から次の者に変われ!外に服を置いてある!それを着るように!」


 チッ。やはり馬鹿愚民だ。この湯がどれくらい貴重なのかも分からないのか。


 ドォォォーーーーンッ


 「なっ!?なんだ!?」「今の音は!?」


 「雷か!?」


 「がっはっはっ!狼狽えるな!あれは我が君がやった事である!新しい武器の一つだ!お前達は早く健康診断を受けろ!その後は飯だ!」


 今の音はなんだ!?新しい武器だと!?なんの武器だ!?


 

 「こ、これをオラ達が食べていいのですか!?」


 「ここ、こ、こんな白い米・・・ひ、久しぶりです!(ゴグッ)」


 「がっはっはっ!そう慌てるでない!飯はいくらでもある!どうせ、まともな物は食べておらんのだろう?今日は、我が君特製の肉入り味噌だ!まさか肉は食べんなどとは言わんよのう!?無理強いするつもりはないが、食わないと損するぞ!?

 他にも謹賀の儀で余った、マスフレークなる物とマヨネーズじゃ!最高の組み合わせじゃ!今日はこの辺かのう?」

 

 「うんめぇ〜!小川様!美味いです!」


 「うむ!その心意気や良し!毒なぞ盛っておらん!皆の者!たらふく食べぃ!!」


 チッ。まさか飯が溢れているというのは誠か。しかもこのような美味な物なぞ初めてじゃ。この黄色い汁のような物がこれ程とは・・・。これは早くに行動に出ねばなるまい。


 「(おい。何を惚けて食べている!例の陽動を今夜から始める)」


 「(え!?もうですか!?敵ながらこれは見事と・・・)」


 「(毒されたか!?任務を忘れるな!今、この時も本願寺では皆が飢えているのだぞ!)」


 「(申し訳ありません。では作戦通りで?)」


 「(あぁ。元は農民共だ。此奴等が何故このような贅沢ができるのか、自分達の物にするよう仕向けるのだ。俺は例の新しい武器というのも調べる)」


 「(御意)」

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