ドライブイン安土 飛躍6
帰ってから、夜に皆とのミーティングが終わり、オレの部屋で清さんと考えた。そんなに甲賀に人は残っていないようだけど、あれだけの人が1年食えるだけの米は稔らないだろう。
「では、そんなに米に執着しなくてもよろしいのではないでしょうか?それに、尊さまがお渡しになった米は、未来品種のコシヒカリなる種籾なのですよね?」
「そうだね。確かここら辺では赤米のような米が多いんだよね?」
「そうですね。別に白米もそこまで珍しい訳ではありませんが、どうしても常食にするには値が張りますし、あのような脱穀はどうやってするのか分かりません」
まぁな。オレがタブレットで出す米はチート米みたいな物だもんな。
《もう少し レベルが上がりますと ラインナップが増えます》
相変わらずタブレットからナビと同じのカナが話してくる。いやまぁ、わざわざタップしなくてよくなったから操作が早くはなったけど。
そうそう。帰って直ぐに、このタイムスリップの謎を聞いてみたんだが、返ってきた言葉は・・・
《マスターの御父様は 毎朝何をされていましたか ある日来なくなった ドライブイン武田の お客様は居ませんか 私が今言えるのは ここまでです》
もうね。なんじゃこりゃ!?って訳ですよ。親父が毎朝していた事と言えば、仕込み・・・しか思い浮かばない。それに来なくなった客と言えば・・・神代さん。例の肉うどん大好きおじさんだ。
いや、この事も大事なのは大事だけど、オレが戦国時代に居て、甲賀村を任されているのは間違いないのだから、目の前の事に集中しないと。
「う〜ん。ならこれからは、イチゴを特産品として、米はオレ達がどこかで購入して渡すようにしてみようか?もしくはそのお金で各々に購入してもらうとか?それとこれを見てよ!」
オレはスマホで動画を流す。椎茸の原木栽培だ。
「黒いカーテンのような物で日差しを遮り、湿気がある状態にすれば後は菌だけ原木に付着させればいいんじゃないかな?多分、この栽培は日の本では絶対に誰もできていないと思うんだ」
「まぁ!?椎茸はこうやって栽培されるんですか!?」
「いや、清さんも普段動画サーフィンしてるよね!?いったい何を見てるの!?」
「え!?心霊スポットの動画に〜、閨房の事を見ましたし〜、男性が肉を食べてる動画も見ましたし〜。あの音が良いですよね!他には、尊さまの世界の女性の服なんかも見てますよ!」
いや、ファッションとかは別にいいよ。だが、心霊スポットの動画が気になるのか!?焼肉ってASMRか!?それと閨房・・・は許可しよう。なんなら、もっと見ていただきたい!
「ま、まぁこれからはこの登録したからこの人の動画とか、鉄砲のこの人の動画とかも見ようね?」
「はぅ・・・」
堪らないな。やっぱ可愛いわ。
「清さんおいで〜」
「尊さま・・・」
「カナ?椎茸栽培に必要な物をクレジットから引いて購入しておいてくれるか?」
《畏まりました それと もし交わるのならばコンドームを装着する事を 提案致します 御二人共若いので 子ができてしまいます 望むのならばその限りではありませんが》
いやいや!カナは感情みたいな物があるのかよ!?要らない・・・事はないけど、今は雰囲気的に違うだろ!?それにちゃんと装着してるから!
〜岐阜城〜
「う〜む。大坂の木津川から毛利の船が入るか」
「上様。必ずそれは阻止せねば、本願寺とは永遠に戦う事となってしまいます」
「分かっている。分かってはいるがな・・・。村上何某という海賊と手を組んでいるのよな?」
「えぇ。村上水軍が毛利側に。ですが、こちらは200を超える船団です。それでも御懸念でも?」
「何か引っかかるのう。まぁ、本願寺には水路から入られぬ様にせよ。補給はさせてはならぬ!それと、この絵だが・・・プライマリなる物だそうだ。尊でも雷管なる物の治金はできんと申しておるようだ」
「私も見ました。このような小さな部品の加工など、さすがの国友衆も悲鳴を上げています」
「そこでだ。このプライマリなる物を使えば火薬さえあれば自作で加工できるそうだ。これ自体を作らせたいのじゃが、ワシでも分からん」
「お館様でも分からぬ物は他の者はもっと分からないでしょうね」
「ふん。これに関しては尊に任す他あるまい。後、このとらんしいばあなる物だ。伝令が要らなくなるばかりか、戦その物を変える代物ぞ」
「その箱は何ですか?」
「遠くに居ても、一定距離以内ならばこのように・・・『光秀聞こえるか?』」
「なっ!?こ、声が!?」
「クックックッ。な?恐ろしい物だとは思わぬか?これを持って、桶狭間くらいからやり直したいのう!まぁたらればの話をしても意味はない。雑賀からの返答は?」
「いえ。未だ何も」
「で、あるか。ならば雑賀も滅ぼさなければなるまい。新式の鉄砲は?」
「はっ。ライフリング加工なる物は国友衆のごく一部がなんとかのようで、数はまだ揃えられませんが、1部隊分くらいはどうにかなります。後は弾の形を錐形に変え、先端部分だけ鉛を分厚くしました。尊の鉄砲程ではありませんが、真っ直ぐ飛び、貫徹力も3倍は変わりました」
「クックックッ。良きに計らえ。雑賀は鉄砲集団。ワシを狙撃してきた事2回。今度はワシらが雑賀を鉄砲にて滅ぼす。ワシの提案を5度も断りおって。是非もなし」
「怖や。怖や。雑賀が気の毒に思えますな」
「ふん。それはそうと、彼奴も雑賀攻めの時は呼んでやろうか。この手紙によれば、なんぞ面白い部隊を作れば良いと書いている。一端の事を言うくらいだ。本人に一部隊くらい任せたら面白いと思わぬか?
まぁ奴は、今は甲賀の事で頭がいっぱいであろう。暫くは自由にさせてやる」
「御意」
「おはよう!」
「おはようございます。尊様」
「次郎君?今日はお店は早目に閉めていいから、慶次さんを留守番にして、君は源三郎さんの木を切ってあげてくれる?作ってもらう物があるから」
「畏まりました」
木を切った所で直ぐには使えない。皮を剥がなくてはいけないし、乾燥もさせないと使えない。ならば、何故そのような事をするのか。
それはまぁ、家の木に関してはタブレットでどうとでもなる。いや、なんならカナが言うには・・・
《レベルが100になると ジオラマ家が 購入可能になります 更にレベルが1000になるとビルのジオラマも 更新されます》
と、言われたのだ。もうね・・・。レベル1000とか意味が分からないし、この手の物って大概はレベルが100が上限じゃないの!?ってのがオレの感想だ。
そもそもジオラマ家ってのはなんだ?家その物が買えるのか?どうせ値段が1000000貫とか意味不明な値段とかのような気がする。
まぁ何故、木が必要なのか。それは・・・
「看板は主要な街道に立てるから、だいたい10個くらいあればいいです」
「それくらいでいいのかい?尊の旦那?」
「看板立てたくらいで客足は増えないかもしれないけど、遠方からもしかしたら来てくれるかもしれないでしょ?念の為ですよ。明日は大津班を休みにさせて、源三郎さんの加工場の方を考えますので、そのつもりで」
「分かった。すまねぇ〜」
皆への報告を済ませて、オレは椎茸原木を軽トラの荷台に乗せ、支給用の米を更に300キロ乗せて甲賀へ向けて出発した。
そして、村へ到着すると・・・というか、到着する前からなんとなく違う事が分かってはいた。遠目から昨日、開墾した場所に稲穂が稔っているのが見えた。
そして極め付けは・・・
「なっぁんじゃこりゃぁぁ〜〜!?!?」
「尊さま!!イチゴなる物がこんなに・・・それにあんな青々とした稲穂は見た事ありません!!」
「あっ!!尊様ではありませんか!!おはようございます!見てくだせぇ〜!さすが尊様が、まうんてん富士の頂にて開発された肥料ですじゃ!今までの糞をばら撒いていた時とは大違いですじゃ!」
「尊様!」「「尊殿ッ!!」」「尊さまぁぁ〜!!」
小川さんが嬉々としてオレに報告してくれた。まず、稲穂は言わずもがな。そしてイチゴの方は立てた竹柵では足りないくらいに下の道にもバーっと実ができている。
そして最後のサツマイモの方だが、オレが試しに抜いてみたのだが・・・
「(ふんぬぬぬ・・・ドサーッ)はぁ!?えぇ!?」
「うわぁ〜!尊さま!先日食べたサツマイモよりかなり大きいですね!」
「いやいや清さん!?これは大きいとかそんな問題じゃなくて、お化けイモだよ!?」
「ふぉっふぉっふぉっ!どれもこれも凄まじいですな!こら!皆の者ッ!整列じゃ!」
「え!?小川さん!?何を!?」
オレがサツマイモ、米、イチゴに驚いていると、甲賀の人達が整列してオレに土下座を始めた。
「昨日の夜半くらいから見る見る成長しておりました。そして、夜中に皆で会議を致しまして。もしよろしければ、これより我等は名実共に・・・尊様及び奥方様に忠誠を誓いたく・・・。
少々草臥れてはおりまするが、尊様から頂いた秘薬・・・栄養ドリンクなる物を頂いて、身体は以前より動くくらいです。
どうか・・・尊様の御家の配下の末席に我等を・・・」
「「「「「お願い致します!!」」」」」
「ワッチは毒生成に長けたおりますぞ!」
「な!?牧村ババア!おのれ!尊様!俺は尋問を得意としております!」
「野田も牧村も!?おのれッ!!尊様!俺はこの特徴のない顔にて、どこへでも潜入できます!巷に噂を流したり、敵国の米相場を変動させたり凡ゆる下仕事を得意としています!」
「私も男達相手なら甲賀に伝わる妙技48手にて酒に酔わせて重要事を聞き出せます!」
いやいや皆どうしたんだ!?それに最後の30代くらいの女性だよ!妙技とはなんだ!?48手もあるのか!?なんならオレも少し・・・。いやいや、そんな事より・・・。
「ゴホンッ。確かあなた達は六角時代から忠誠は誓いつつも独自の・・・自治をとかじゃありませんでしたかね?」
「確かにかつてはそうでした。六角家に忠誠は誓いつつも、心から仕える事は致しませんでした。それは・・・我等を使いつつも心の中では下卑た笑いで我等に過酷な任務を平気で鐚銭数枚で、命じたりされていたからです。
ですが、尊様はそんな我等に早くも結果を残してくださいました。我等は皆、幼少の頃より相手を読む訓練を受けております。今まで、浅井の殿様が尊様に似ておりましたが、ここまでは我等の事は考えてくれていませんでした」
「いやまぁそれは人として当たり前だと思っているから・・・。生まれや血筋で差別するなんてオレは馬鹿な事だと思っているだけです。そもそもオレは皆の期待に応えられるような猛者じゃないすよ? 戦なんてできませんし。なんなら、妻の清さんの方が強いんですよ?」
「だとしてもです。もちろん奥方様にもお仕え致します。たとえ、賊に不覚を取ろうとも命を賭してお守り致します。ですが、それでも我等は、その裏表のない笑顔の尊様の配下にとお願いしたいです」
「う〜ん。ありがたいけど、オレは飯屋ですよ?皆は戦が好きそうですけど、オレは戦が嫌いだから戦働きはあまりないかもしれないですけど、いいのですか?それに未だ稼ぎが悪いから給金は少ない・・・というか、当分は衣食住・・・まぁ見た感じ、住はあると思うから衣、食しか支給できませんがいいのですか?」
「そんなに施しを頂けるのは普通有り得ません。織田の殿様がこんなに活躍する尊様を放っておくはずはありません。いずれ、尊様は戦に参加させられます。その時、我等は少数ですが、他の大名の兵より働く事を御約束致します」
確かに信長がここ最近来ていない事が奇妙な感じはする。弾の事を伝えたわけだから、オレも・・・参加させられそうではある。だが、どうだかな・・・。約70人か。マジで給金どうしようか・・・。
「尊さま!おめでとうございます!初めての尊さまの部隊です!初めて仕えていただける配下ですよ!皆を見てください!このような清廉な顔付きの兵は見た事ありません!」
「分かった!分かりました!あなた達全員を雇います!そして、飢えさせる事だけはさせません!必ずオレが面倒見ます!」
「「「「オォォォォーーーーー!!!」」」」
「とりあえず・・・全て収穫しましょう!!」
「「「「オォーーーー!!!」」」」
まずは、兎に角、お化け芋やイチゴをどうにかしよう。調理方法とかも教えてあげないといけないな。
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