ドライブイン安土 邁進3

 〜甲斐 野田、小泉、青木班〜


 「おい。お前等が尾張より参ったという行商人か?」


 「はい。我等3人は遠い縁戚でして。色々と国を周りながら、その土地土地で行商のような事をしながら生きております。手前が野田一蔵で、右に青木権左衛門、小泉伝七郎でございます」


 「お前等の名なんぞ聞いておらん。まずは四郎様にお伝えする為にこのワシ・・・元山県昌景様与力 足軽大将である大熊朝秀が荷を検める。餅は持って来ておらんのか?謹賀が近い。皆が明るくなるような物なら嬉しいのだがな」


 「(野田!食い付いたぞ)」


 「(うむ。まずは食い物からだ。ワシに任せておけ)」


 「えぇ。餅は少量ですが、用意しております。準備しておいて良かったです。ははは。他には澄み酒に、乾き物を少々・・・。獣肉の塩漬けに、美濃や安土で流行りつつある果物のイチゴとリンゴ。それに、米の代替となり、腹持ちの良いジャガイモにサツマイモとございます」


 「な、なんじゃこれは!?餅は分かる!分かるぞ?だが、このカシャカシャいう透明の袋はなんだ!?それに何て書いてあるのだ!?こんな物初めて見たぞ!?」


 「へぇ〜。それは少し前、我等が近江に居た頃に、安土方面や美濃方面にて突如として作られ出した物と聞いております。なんでも、真空パックという製法だそうで、この中に入れた物はかなりの日持ちすると聞いておひます」


 「しんくうぱあくだと!?なんだそれは!?それに突如として作られたと!?誰が作ったのだ!?」


 「詳しくは分かりませんが、皆が答えるのは『尊様』と、聞き及んでおります」


 「その話ならこの小泉も聞いております。尊様は、食べ物だけではなく、他の分野にも才覚を表し、ついぞや織田の殿様にもお目にかかったと・・・」


 「野田?それに青木・・・すまん。実はオレは尊様を知っておるのだ。しかも、懇意にしてもらっている」


 「「なんだと!?」」


 「大熊様。今一つお見せしたい物がございます。隠れている護衛数人以外は退かせていただけませんか?」


 「・・・・・・お前等はただの行商人ではないな?」


 「騙すつもりはございません。我等は甲賀出身ですので、ある程度は分かります」


 「ほぅ?甲賀の田舎者か。では・・・(シャキンッ)有益な物でなければ、お前等の首を斬ろう。どうせ織田の差し金であろう。さしずめ、武田を探って来いと言われたのではないか?あん?」


 「これを見て同じ事が言えるならば甘んじて首を斬られましょう。ですが、これを見てください」


 パンッ


 「き、貴様ッ!!!その音はまさか!!大熊様!!お隠れください!」


 「いや・・・待て。鴉、鵺。お前等以外は退け」


 「で、ですが・・・」


 「いいから退けと言っている!その気なら今の瞬間に撃たれている。あの木を見てみろ!どういうカラクリか分からないが、穴が空いているだろう!」


 「・・・・御意」


 「お話の分かるお方で助かります。このまま説明しても?」


 「あぁ。続けよ」


 「実はこれは連射できるのです。弾はこれで、ここを押してこの穴にこう装填して・・・」


 パンッ パンッ


 「あまり何度も試し撃ちしては肝心な時に弾が無くなるかもしれませんので、今はこれまでで。これを3丁用意してあります。いかがですか?」


 「これをどこで?」


 「これは先に言った、尊様と手前が少し懇意になり、融通してもらった物です。ですので、弾もこれだけしか用意できませんでした。が、かなりの価値がある物だと思います」


 「ほぅ?ワシ相手に吹っかけるつもりか?」


 「滅相もございません。ただ、適正な銭を頂けるなら次も用意できるようになんとかしてみますが?」


 「いくらだ」


 「実は尊様という方は金に興味があるようで。よろしければ、甲州金での支払いをお願いしたい。我等の路銀も少し心許ない故に」


 「ふん。抜け目がないな。駒一両金20枚。これ以上は払わん」


 「(おい。関所の奴等に伝えておけ。この者等が甲斐を抜ける銭も10倍にしろとな)」


 「(御意)」


 「ありがとうございます。年明けに今一度、良い物を持ってくるように致しましょう」


 「うむ。その心意気痛み入る。もし、お主等がその気なら取り立ててやらんでもないぞ?甲賀は独立してるのであろう?」


 「いえ。我等は飽くまで旅の行商人故。では確かに頂戴しました。御免」


 「(一蔵?怪しいと思わんか?)」


 「(あぁ。素直過ぎる。1人ここに置いておけと言われるかと思ったが、あっさり過ぎる)」


 「(追っ手も見えんぞ)」


 「ふぅ〜。まぁ、関所・・・が、怪しいな。ワシが大熊という奴の立場なら、ここでケチるより、大目に渡して今後の事も考えるのだがな。つまり彼奴は阿呆だ」


 「せいふてぃーばあを外しておけ。関所で問答が起こるはずだ。そのまま押し通るぞ。長居は無用だ」


 「「了解」」



 〜年明け1月1日 岐阜城より少し西へ行った金華山〜


 「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり一度生を得て、滅せぬもののあるべきか」


 「よぉ〜・・・(ポンッ)」


 1月1日を迎えた。年明け・・・というか、年末に岐阜城にて、清さんとカナとで皿の用意や食材の用意、城の料理人の人達と作戦会議をしていると言われたことだ。


 「朝日を拝みに行く。貴様も来い。それとカナ。お主もじゃ。清は戻ってから一年が始まるのに相応しい物を作っておけ」


 と、言われ、朝方・・・でもなく、夜中と言っても過言ではない、オレが持っている時計の時間にて夜中の3時に遠藤さんが起こしに来て、ジャージにダウンジャケット、軍手、マフラーと完全に冬の装備をして、ノアに乗ってやって来たのだ。

 濃尾平野をバックに即席の舞台の上で信長は、オレが出した、焼き火鉢に炭を焚いて暖を取っている。同行者は、オレ、秀吉、滝川、カナ、丹羽さん、遠藤さん。後は皆の護衛の人が数人。

 オレの護衛は太郎君、次郎君、五郎君だ。桜ちゃん達女の子も来たいと言っていたが、寝不足は女の子の肌には大敵だから、丁寧にお断りした。


 ちなみに、忘年会を28日に行ったんだけど、大盛況だった。ビンゴゲームやジャンケン大会など、催し物も行い、景品は多岐に渡る。サバイバルグッズや、酒類各種、おつまみなどなど。

 それとプラスして、皆に特別給金という名のボーナスを渡し、景品代とボーナスのお金を渡した事によって、信長から貰ったお金を全て使い切った。

 カナもカナで色々と更に工作機械を購入したようで、タブレットの中のお金も円表記で5万円ギリギリをキープしている。こらを下回れば普段のお店の材料費が購入できなくなるので、これ以上は使うなと言っている。


 朝日が出て来てから・・・


  「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり一度生を得て、滅せぬもののあるべきか」


 「よぉ〜・・・(ポンッ)」


 信長の未来でも有名な敦盛である。初めて見たけど、素直にカッコいいように見える。


 「今年は呼び寄せた者は少ない!何故か分かるか!?サル!」


 「ははぁ〜!明智殿は丹波平定に!柴田殿は加賀平定の為に北ノ庄城にて軍備を整えているからでございます!」


 「ふん。よく分かっている。で、今年から新顔が居る。皆は知っているだろうが、尊だ。尊に武器開発の一手を任せている!尊ッ!首尾は?」


 「はい。国友様と配下の源三郎さんは合流し、カナを通してかなり進捗は良いように思います。九鬼様に船の引き渡しも終わり、志摩の方では訓練が盛んに行われている頃です。取り急ぎ、数人の人数で運用できる青銅砲という物を一門作りました。

 近江者だけで作った大砲です。弾薬は和紙を使った紙製薬莢でございます」


 「続けよ」


 「はい。以前、織田様にお渡しした片手銃の製作にはまだまだ時間が掛かります。それに人の訓練にも時間がかかります。故に、まずは皆様が使われている、前装式の砲の製作に着手致しました。弾薬は・・・(ゴトン)これです。この前の方に鉛玉を入れております。鋳型にて直ぐに作れます。そして、この後方に火薬を詰め込んでおります。この大量の火薬を爆発させる事により勢いを増し、敵を壊滅させられると進言致します。カナ?今後の展望を」


 「織田様。ここからは私が。次にこの火薬も今年中には古き物に致します」


 「ほぅ?」


 「まずはこれをご覧ください。これはニトロセルロースと言います。見ててください・・・(ボワッ)」


 「なんぞ?直ぐに燃え尽きたぞ?」


 「そうです。これが次世代の火薬の原料となります。ニトロセルロースとはセルロースを硝酸と硫酸との混酸で処理して得られるセルロースの硝酸エステルで・・・」


 「ま、待て。もう良い。理論はワシは分からん!それは量産できるのか?それに変える事により何が変わるのだ?」


 「量産はできます。燃焼速度が上がり爆発させ、弾丸を飛ばす推進力が今使っている黒色火薬より数倍は上がると思っていただければ」


 「滝川。分かったか?これがワシがこの2人を新参だろうが重用する理由だ。ワシでも分からぬ事を平気でこの2人は知っている」


 あ、いや。オレはあまり分かっていないんだけど・・・。


 「はっ。某はもう何も言いますまい」


 「時代は変わる。新しくどんどんとな。ワシ等も変わらねばならぬ。尊等の進捗を以って今後の作戦は変える。まずは、尊!貴様は鍛治連中等を差配せぃ!武器開発を1番にせよ」


 「は、はい!」


 「うむ。今日一日は岐阜城で過ごすと良い。配下は配下で一部屋設ける。貴様は清とゆっくり過ごせ」


 「あれ!?」


 「なんじゃ?」


 「いえ。てっきり、何か作れと言われるかと思いまして」


 「ふん。ワシは昔から一年の始まりの1日は近親の者と過ごすのを通例としている。一年の始まりを家族と過ごし、来年また同じ一年を迎えられるように願ってな。貴様も家族は大切にせよ」


 こういうところだよな。未来で伝わる信長象ではこういう所は思い浮かばないもんな。やはり、案外優しいな。



 〜岐阜城 尊に充てがわれた部屋〜


 「尊ッ!!!カレーを作って参れ!!」


 「は!え!!?ゆっくり過ごせって・・・」


 「たわけ!貴様は死ぬまでワシの飯を作れと言うたであろうが!それは今日も含まれる!はようせい!腹が減った!今後、一年の始まりはカレーに致す!そして、カレーで一年を終わりに致す!覚えておけ!」


 ったく・・・結局は動かないといけなくなるんだよな。


 「(クスッ)尊さま!私も手伝います!」


 「ありがとう。清さん。カナとゆっくりしててよ。城の料理人の人達も休みなんてないはずだし、明日は頑張らないといけないから、声掛けもしてくるから」


 「分かりました!何かあれば呼んでくださいね!」


 

 「清様?真面目な話があります。他言無用に」


 「カナ様がそんな事言うのは珍しいですね。どうされましたか?」


 「私はとある技がございまして。少し先の未来を予知できると申しますか」


 「あぁ〜!マウンテン富士で会得したアレですか?」


 「・・・・えぇ。まぁそんなところです。で、その技で先の事が少し見えました。甲賀の村にて、マスターが変貌する何かが起こります。その時は私ではなく清様。貴方が、マスターの横に居てあげてください」


 「え!?どういう意味ですか?」


 「はっきりとは私も言えないのですが、兎に角・・・マスターの今後が変わる大きな事象が起こります。その時に間違えるとマスターは壊れてしまいます。その支えは清様。貴方しかできません。マスターは本当に清様を思っております」


 「分かりました。私は尊さまを支えます!けど、その何かは未然に防げたりしないのですか?」


 「できません。絶対に。そのように世界は紡いでいくものです。その事象に私は入れませんので、清様がマスターの横に居て支えてあげなければなりません。太郎様や次郎様、五郎様、桜様、梅様、吉様、滝様と側近に近い方は居ます。ですが、これは清様でなければなりません。約束できますか?どんな事が起ころうと、貴方はマスターの支えになると」


 「はい!即答で答えます。私は尊さまの妻です」


 「分かりました。その返事が聞けて安心致しました。さて・・・今の間に少し女子会なる事でも致しませんか?(パサー)」


 「あ!?え!?その風呂敷は!?」


 「マスターには内緒ですよ?実はこれ・・・10貫もしたのです!年末に購入したのですよ!1日に1回だけですが、2種類のホールケーキが取り出せるのです!」


 「ほ、ホールケーキ・・・あの至高のケーキを2種類も!?しかもホールとは・・・大きな完成したままの・・・(ゴグリッ)」


 「ふふふ。清様も分かりますよね!?さぁ今の内に・・・」

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