間話
※次話から物語を再開致します。間話ばかりすいません。
「つまらぬ。織田軍のなんと言ったかのう?」
「柴田軍にございます」
「うむ。その柴田軍は小荷駄隊であった者に窮地を救われ、挽回せしめんと我等を執拗に挑発をしてくるが、話にならん。我が少し動けばすぐに逃げる」
「ですが、その逃げの前に田畑を燃やしているので、少々兵糧が乏しくなっております。冬になる前に一度、越後に戻らなくては兵の士気も危うくございます」
「今代の小島は先代とは違い、内政に重きを置くのか?それがいかんとは言わんが」
「武の方も先代程ではないやもしれませんが、それなりにはやります。では、兵糧の方は武田の倅と北条にでも渡りを付けましょう。最近は酒の量が増えたように見えまするが?」
「酒が身体から抜けそうになるとムシャクシャするのだ。あの織田軍の武田は出張って来ぬのか?」
「新しい旗印は見当たりません。そんなにもまた戦いたいと?」
「あぁ。あれは格別だった。久しく感じた事のない高揚感。死を感じる戦い、技を出しても皮一枚の所で防御してくる。
動きは素人・・・って程ではないだろうが、経験値が圧倒的に低い。だがその低さ故に上段の構えだろうが正眼の構えだろうが脇構えだろうと我の一撃を防いでいた。
最後まで我が宿敵と同族かは聞けなんだが、彼の者は大きくなるぞ。渇いていた我を湿らせるくらいには愉しかった。
それにしても・・・右目が霞む。我も48だ。そろそろ宿敵の元へ行ってもおかしくはないの」
「何を言っておられるのですか!御実城様が病なんぞに殺られるわけないではありませんか!」
「我も無敵ではない。いつかは死ぬ。だが、今一度、彼の者と戦で語りたい。刀で語りたい。加賀に展開している織田軍は3万は居るのであろう?」
「はい。そのくらいは方々に居るかと」
「ハァー。ならば新たな軍が出張ってくる事は暫くはないだろうな。(ゴトン)おっと・・・」
「御実城様!?大丈夫でしょうか!?」
「すまん。少し足腰が弱くなったようた」
「・・・・・・・・」
「どうした?」
「軒猿から聞いた所によると、あの者は本当に近江で飯屋を営んでいるようでして」
「確かに口上の折になんぞそのような事を言っておったのう」
「それと・・・甲賀にて酒飲み場の町のような物も監督しているとか。その酒飲み場の一部に薬屋なる物があるそうです」
「ほう?それを我に見繕うというのか?」
「認めたくありませぬが、最近は本当に酒の量が増えております。そして、肴の塩も摂りすぎのように思います。上杉家を大きくするには御実城様が必要でございますれば。どうか・・・」
「ふぁっふぁっふぁっ。誠、今代の小島は面白い」
「長い目で見れば当然の事かと。軒猿に言い、即座に・・・」
「我が行こう。動ける内にな。千坂!千坂は居るか!」
「はっ。ここに」
「暫し旅をする。着いて来い!小島!お主に暫し軍を預ける!」
「ハァー。そんな事許される訳ないでしょう。敵の本拠地ですぞ!?」
「ふぁっふぁっふぁっ!戦は戦!戦う道理はなかろうて。我が越後にも織田が来るというのなら戦中でももてなすぞ?」
「先代の小島や譜代からの臣下に言われていたままですね。御実城様は時折りふらりと居なくなる癖がある。と。そして、その時は上機嫌になると・・・。
そして、どこの誰が戦っている敵の大将をもてなすのですか。普通に捕らえられた斬首ですよ」
「北条は普通にもてなしてくれたぞ?武田は知らぬ振りをしていたぞ?」
「いや、それは御実城様が・・・」
「そう言うな!小競り合いのみで、今は戦局は動かぬ。上洛への道も調べなくてはならぬであろう?それに、彼の者は我が知る者で1番義理堅い。
宿敵が亡くなり渇いた我を・・・愉しみが無くなった我をこうも激らせられるのか、我でも分からぬ。それを調べたい。
戦で我の命を脅かす者は最大の友也ッ!」
「そう言われると何も言い返せません。が、国衆の者達にはなんと言うのですか?」
「ふぁっふぁっふぁっ!そんな時こそ兼続の出番だ!若いのに口が立つ。だが、義理とはいえ景綱の息子ぞ。誰も言い返せれぬであろう?」
「誠に御実城様という方は・・・。ではもう少し護衛を多くしてください」
「いや、それはならぬ。そもそも護衛は千坂だけで足りる。あまり人を動かせば織田軍に我が不在なのが気取られる。二人でボロを纏い向かう。今日から暫くの間は我は商人だ」
「まぁ畏まりました。軍に関してはお任せください」
「うむ。一応、我が織田軍だとして、思い浮かぶ作戦を書いた紙を置いておく。その対応の事もだ。まぁ今代の小島なら我が居なくとも難なく撃破するであろうが、老婆心だ。
景綱も国で病を患っている。その薬も何か持って帰ってやらねばならぬ。では、この場は任せたぞ!ふぁっふぁっふぁっ」
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