ドライブイン安土 新生6-2
「まぁ!?ここがこの優男の店だっていうのかぃ!?なんだい!?ここは!?」
「クッハッハッハッ!お登勢がそこまで狼狽えるとは珍しい!覚えておけ!これが南蛮様式だ!そうだろう?尊?」
「はい。織田様のいう通りです。清さん?お登勢さんの皿も出してあげて!」
「は〜い!」
「あら?清ちゃんじゃな〜い!久しぶりねぇ〜!」
どうやら、清さんとお登勢さんは知り合いらしい。そんな事より・・・
「ま、待ってくれ!登勢!違うのじゃ!」
「違う事なぞありません!やや子を産み、少しくらいは落ち着いたかと思えば、直ぐにお館様に泣きついて我が儘ばかり・・・この登勢、織田家の姫の教育係をして早、50年・・・幾度となく・・・・あれは市姫が童の時、沼田池で蝉を捕まえた折・・・・そう。あの時は市姫が10歳の時、お館様の馬に・・・・」
長い・・・。この人は話が長い。しかも殆どが昔話だ。そもそもお市は幼少の頃、どんな生活してたんだよ!?ノッブパパの信秀の馬に虫を食わせようとしてただと!?
「登勢。その辺にしておけ。これから飯がくる。其方も食え」
よし!信長からもサインが出た!
「太郎君!次郎君!お出ししてあげて!」
「「御意」」
今日のメニューは、いつものカレーに、チャーハン、おでんだ。それと・・・
「これから小鉢にお出しする物は、私に与えていただいた、甲賀の村にて作っている食物の料理です」
「うん?甲賀でか?これは・・・おでんにも入っているジャガイモか?」
「流石、織田様です。正解です。まずはジャガイモの汎用性を御理解ください。安価で誰でも育てられ、荒地でも育ちます」
まずは、イモ料理で、現代でも好きな人が多いであろうじゃがバターを出した。作り方は至ってシンプル。ジャガイモの芽を取り除き、切れ目を入れて、バターを一欠片乗せて、塩胡椒を少々。最後にレンチンするだけだ。
「はい!殿!お口を開けてくださいまし。あ〜ん」
「うむ。(ハムッ)ぬっ・・・なに!?美味いだと!?」
ック・・・。信長さんよ!?なにアーンしてもらってるんだよ!?濃姫は濃姫で信長にゾッコンなんだな。明らかにメスの顔だわ。
「殿!アーン!」「殿!妾からも!はい!アーン!」
ッチ。見てらんないぜ。
このジャガイモ・・・。実に優秀だ。じゃがバターを始め、ポテトチップにもできるし、わざわざスライスして揚げなくても色々な形に切って、油で揚げるだけでも食感が変わり美味しさも変わる。
その揚げ方、油の種類でもそれは変わる。下味にスパイス調味料を付けたりするだけでも変わるし、デブ活まっしぐらではあるが、ラードを付けて揚げてもクリスピーポテトにもなる。
なんといっても腹持ちの良さは段違いだ。このジャガイモの次に出すサツマイモ。これも汎用性が素晴らしい。
まずは、サツマイモを乱切りし、電子レンジで5分加熱する。その間に、砂糖、塩、みりん、醤油をフライパンで熱し、別のフライパンに少量を入れた油にて表面に焼き色を付け、そのままタレを入れる。上手く絡める事ができれば最後に黒ゴマを振りかけて、大学芋の完成だ。
他にも、サツマイモを輪切りにし、水に晒したあと、砂糖と醤油で煮詰めるだけの甘煮なんかもオヤツ感覚で食べられる。他にもシンプルな焼き芋や炊き込みご飯、スィートポテトなどなど色々あるが、今日は、大学芋と、サツマイモの甘煮だけだ。
「ゴホンッ。尊。今宵、見た事は他言無用ぞ。約束を破れば・・・どうなるか分かるよのう?」
はい。物理的に首が飛ぶわけですね。分かります。
「はい。誰にも言いませんし、私は何も見ていません」
「うむ。ならば良い。で、だ。これらを甲賀で作っていると聞いたが、どうするのだ?」
「それは織田様が考えている通りにすれば良いかと。自分は飯屋の店主です。各地を治める家臣の方達に名物的な感じで特産品として売れば良いのではと思います。このジャガイモ、サツマイモに関しては本当に簡単に安価で作れます」
「続けよ」
「仮に他の領地でも作れますが、この原料の二つは甲賀で作り、甲賀で売っても良いのでは?と思います。周り回って、銭は織田家に帰結します」
「たかが食い物だけでよくもそこまで思い浮かぶものじゃな」
「えぇ。自分は下々の人も美味しい物が食べられる生活になればいいなと思っておりますので」
「ふん。まぁ良い。後程、話したい事がある。暫し待て。今一度、貴様の飯を堪能する」
信長はそう言うと、大盛りにカレーをよそい、食べ始めた。本当にカレー好きな人だ。側室さん達はおでんが好きなようだ。濃姫さんは信長を見ながら同じ物を少しずつ食べている。お市は・・・
「美味い!どれもこれも美味いのじゃ!」
「こら!姫様!端ない!何故、童のように食べるのじゃ!」
お登勢さんはマジで大変だなと思う。
小一時間食べて、皆はお腹が膨れてきたようだ。一様に皆は『美味い』『美味しい』『城の祝いの席のご飯より美味い』とか、『こんな美味しい物初めて食べた』とか言っていた。
側室の1人のあここさんって人はどうやら京都の公家出身の女性らしく、京料理を知ってる人らしいのだが、辛辣な言葉を言っていた。
「なーにが京料理ですか!あの自信たっぷりの父上の料理人の金右衛門に、この尊殿の飯を食べさせたいですわ!(ヒック)」
「あここ・・・その辺にしておけ。飲み過ぎだ」
「私は酔ってなんかいませんよ!(ヒック)素材の味を生かしてなんて・・・京料理なんてただの薄味の食べ物ばかりです!」
と、かなり辛口意見を言っていた。金右衛門さんだっけ?さぞかし高名な料理人なんだろう。逆にオレがこの時代の京料理を食べてみたい。
そして飯のあと・・・。まず、女性陣には清さんや桜ちゃん、梅ちゃん、吉ちゃん、滝ちゃんも加わり、娯楽として皆の贈り物に入れてあるトランプ遊びを始めた。
オレが分かりやすく、オーソドックスなババ抜き、神経衰弱、を口頭で教えると、皆は直ぐにルールを覚え、毎夜遊んでいるのは知っている。後は清さんがスマホで、大富豪やポーカー、ブラックジャックを覚え、皆にルールを教えて遊んでいたりする。
他にもリバーシも渡している。
「何故じゃ!何故挟まないと白に変えれないのじゃ!?妾は全て白がいいのじゃ!」
「お市姫様。これがこの遊びの掟ですので、守らなければ遊びではなくなりまする」
「いやじゃ!いやじゃ!」
清さん・・・すまん。ルール無視のお市を暫く相手してくれ・・・。
オレは自分の部屋へと信長を案内した。太郎君に言って、時を見て、コーヒーゼリーを出すようにお願いしている。
「ふぅ〜。我が妹がすまぬな。そもそもは小姓の遠藤がいかんのじゃ。許せ」
「いえいえ。面白くて自分も楽しいですよ。未来の人ならお金払ってでも、織田家の人とご飯食べたいって人も居るかと思いますよ」
「確かに貴様は未来から来たのだったな。二人で話すというのは他でも無い。貴様は甲賀をどうするつもりなのじゃ?」
「どうするもこうするもありません。オレは皆を食わせ、自活できるようにと思っております。強いて言うなら、できれば甲賀の人達のような草でしたっけ?そのイメージ・・・すいません。印象を良くしたいと思っております」
「印象を良くしてどうするのだ?」
「甲賀に限らず、下々の人も普通に暮らせるようになればいいなと思っております。飢えで死んだりしないように、7日に最低1日は何もしない休みを作り、適度に遊んで暮らせる方が楽しくないですか?『他所が栄えている。奪え』という考えを改めたいと自分は思います」
「面白い。それをワシの下でやりたいと申すのか?倅のような考えじゃな」
「え!?信忠様ですか!?あっ・・・すいません!確か・・・奇妙様でしたか!?」
「ふん。構わん。その信忠じゃ。彼奴はワシと似ておらん。常に下に気を使い、労っておる。優しい奴じゃ。ワシの血を色濃く引いておるのは三男の信孝じゃな」
「・・・・・・」
「近い内に会わせよう。貴様なら気が合うやもしれんな。天下を治めた後、必要なのは武ではない。民を思う心がある者じゃ。ワシはその限りではない。燃える水も探さねばならないしな」
「約束・・・覚えていただいてるのですね」
「ふん。当たり前じゃ。貴様の知識は余す事なく使わせてもらう。これも他言無用ぞ。一度だけ聞く。ワシは・・・織田家はこれより貴様の知っておる歴史とやらでは繁栄するのか?」
「・・・・・・」
本能寺なんて絶対言えない。仮に本能寺が起こらなければ間違いなく信長は四国を攻めていただろう。中国の秀吉と挟み撃ちにして。その後、九州がどうなるか分からないが、恐らく明との戦を考えていただろう。
「沈黙は・・・・」
「いえ。すいません。織田様が天下を治めます。これは間違いありません。仮にオレが来た事により、歴史が変わったとしてもオレがそうします。最初にも言いましたが、オレは織田様が治める日の本を見たいです」
「そうか。ならばワシはワシのやりたいようにするだけじゃな。貴様は黙って着いて来い。もう迷いはせん。本願寺とは決着をつける。今一度聞くが、武田は貴様とは無縁なのだな?」
「はい。名字は同じですが、関係ありません」
「相分かった。武田は滅ぼすぞ。毛程も残さぬ(グワッ)」
信長は静かにそう言うと、凄まじい殺気を放った。
「何やら小賢しい真似をしようとしているのではないか?今井から慶次の事を聞いた。堺で何かするのか?」
え!?もう耳に入ってんの!?この人の耳はどうなってんだよ!?
「少し・・・織田様の縁の下の働きをしようかと」
「そうか。ならばワシは聞かぬ事にしよう」
「え!?」
「なんじゃ?貴様は何をするかは知らぬが、それが織田にとって良い事だと思っているのだろう?成果が出れば自ずと分かる。良きに計らえ」
オレはやっぱこの人が好きだわ。いや、ラブではない。断じて違う。ただ、この人の会社・・・ではないが、織田家に仕えて良かったと思う。
「そんな事より・・・貴様は刀なんぞ差していたか?」
「あっ、これですか!?これは元近江の鍛治師の方が作ってくれたのですよ!織田様の程ではありませんが、カッコよくありませんか!?清さん・・・妻との兄弟刀って聞きました!」
「・・・・・・聞いておらんぞ。その黒刀はどうやって打ったのだ」
信長は静かにオレに問いかけてきた。これは・・・アレだ。ガチのやつだ。
「はよう言え!いや・・・その鍛治の者を呼べ!今すぐにだ!」
オレは思い出した。カナが直ぐに呼ばれると言った事を・・・。オレはトランシーバーでカナと源三郎さんを呼び出す事にした。そして、タイミング良く、太郎君がコーヒーゼリーを持って来てくれた。が・・・
「これまた見た事ない物・・・よのう?ほぅ?貴様もその短刀なぞ前まで持っていなかったよのう?それも源三郎と申す者が打ったものか?」
「はい!某の為に尊様が下賜してくださいました!」
馬鹿!太郎君!こんな時はそこら辺で拾ったって言うんだよ!!あぁ〜あ・・・。魔法を唱えそうだ。
『ワシニモヨコセ』
が、絶対に発動する・・・。
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