ドライブイン安土 邁進7-4
〜本願寺3人目線〜
「雲水!郭蓮!どさくさに紛れて、あの男の片手銃を鹵獲できるか?」
「愚民を盾にすればどうにか」
「今更だな。肉壁にでも何でもしなさい。あれは必ず献上せねばならん」
「畏まりました。では、暫しの間身を隠し、時を見計らって彼奴を討ち取ります。その後の事は?」
「その後の事は言われていない。頼廉様は多分、俺達が帰ってくるとは思っていない。俺も死んでも・・・と思っていた。だが、こうも容易く事が運ぶとは思わなかった。まだ俺は役に立てる。この秘密武器製作所を潰し、国友の技を奪い取れるのは誠に大きい。しくじるなよ?雲水」
「御意。では後程」
「郭蓮。お前はあの前田慶次という大男を討ち取れ。彼奴がこの中で1番武が立つ」
「御意」
〜慶次目線〜
「うぉりゃっ!!(ズシャッ)」
「慶次様!後ろ!」 「おうよ!(ズシャッ)」
「よくも尊さまを裏切りやがったなぁぁ!!天誅ッ!!!(ズシャン)」
「わっはっはっ!いやぁ〜流石、奥方の清だ!恐ろしい!誠に恐ろしい!尊!俺を盾に使え!俺は死んでも構わん!」
「何を馬鹿な事言ってるんですか!近寄るなッ!このクソ男がぁぁぁぁ!!!(パァンッ)」
ふっ。冗談でもないんだがな。この失態は間違いなく俺のせい。人選を誤ったとかいう問題ではない。
間違いなく斬首ものだ。だが、この尊はそれを許さない。ならば俺のする事は一つ。この阿保共を殺し、その最後の流れで討死する事で丸く収まる。
あの坊主3人だけは確実に仕留めなければならない。顕如と頼廉の名前が上がった事は・・・本願寺は破滅への道へと進むわけだ。例えここで俺達が殺られたりしても、大殿は絶対に許さないだろう。
その本願寺の最後が見れないのは少しつまらんが、仕方がない。まっ、これもこれで俺らしいってか。
うん?1人姿が見えない?どこに行きやがった!?
〜カナ目線〜
「あら?あなたから帰ってくるなんてね?どうしたのかしら?」
「お暇と、降神の願いを言いにきました」
「うん?降神?何を馬鹿な事言ってるの?」
「本当の事です。人間に戻りたいと願い奉り候」
「その言葉・・・嘘ではないのね。理由を聞いても?まさかあの人間の男に絆されたなんて言わないわよね?」
「・・・・・・」
「あなた正気なの!?この間も権能が発現したばかりじゃなかったっけ!?」
「全て・・・それもお返し致します。主上様への食物連鎖の権能に関しましてはもう大丈夫かと。後は自然にお目をお開けになるのを待っていればよいかと」
「あなた・・・放棄する意味を分かって言っているのでしょうね?しかも人間風情に絆されるなんて」
「初めて友と言える方が沢山できました。弟子も沢山できました。神は人間界にてその力を出す事を禁じています。あまりに大きな力はその世界線そのものを変えてしまう恐れがあるからです。私は忠実にそれを守っていました。『人間の営みには手を出さない』と。
そして私は人間界に友と言える方が沢山できたと言いました。その友とは一定の距離感があります。私はそれがことの他寂しい。そして、その友の方達が今、窮地に陥っています。手を出せない自分が憎い・・・。何が起こるか分かっていても何もできない自分が悔しい」
「ふ〜ん。やはりあなたも人間から昇神しただけあって、未だに感情が捨てきれないのね。可哀想にね。う〜ん。どうしようかしら?」
「どうすればお許しをいただけますか?」
「ふふふ。冗談よ。どうせ降神するったって、せいぜい100年や200年くらいでしょう?その依代を人間と同じにして、消滅すればまた精神体からになるけどいいのよね?権能はもちろん無くなるわよ?」
「覚悟の上です。私の権能なんて些末なものです」
「分かったわ。たまに上から見てるからね。あっ、供物はこれまでのようにお願いね?そうだ!ついでに、次の供物はチョコレートプリンにしてくれるように言ってくれる?」
「ちょ、チョコレートプリンですか!?」
「そうそう!あの子が居た世界線のあの子が居た時代のアメリカって国の甘味らしいのよ!これ!これを見て!(パラパラ)」
「そ、その本は!?」
「あ、これ?これはカタログみたいな物よ!あの子って律儀に1週間に1度はちゃんと供物を御供えしてくれてるでしょう?人間って困った時にしか神の事を思わないのに不思議よね〜。変な物を御供えされるより、好物が良いじゃない?確か・・・」
『いつもお菓子やスイーツばかりだから、今度は酒にでもしよっか。清さん?清さん的に神様ってなんのお酒が好きだと思う?』
『そうですね・・・やはり澄み酒ですかね?』
「ビジョンハイライトの権能ですか」
「まぁね。私は時を司る一柱だからね。そんな事より、お酒なんて辞めさせてよね?嫌いじゃないけど・・・分かるわよね?」
「えぇ。それは嫌という程」
「ふふふ。良かったわ。じゃあ、権能は預かるわよ?(ポワン ポワン ポワン)これでよしと・・・。
さて・・・これは私からの餞別よ。人と人が小競り合いしてるんでしょう?その友というのをあなたは失いたくないんでしょう?今回限りよ。使いなさい(シュッ)」
「こ、これは・・・ハーフエリクサーじゃないですか!?」
「そうよ。流石にエリクサーは渡せないからそれで我慢してちょうだい。腕や指が欠損してる人間が居るみたいだからね。けど・・・リンカーネーションは渡せないわよ。魂の輪廻に還って来たのも1人居るけど、そこはあなたがどうにかしてちょうだい。亡くなった者を生き還らせる事は許せないわ」
「ありがとうございます。では、また幾百年後に・・・失礼します」
オレは斬った。それは大いに斬った。未だ源三郎さんは見えないが、おそらく向こうの国友一派の中に居るはずだ。
どうやら、本願寺側は国友が欲しいみたいで殺さずに捕縛しようとしてるみたいだ。
「国友さん!手は出さないように!」
オレは一言叫び、国友から本願寺側への攻撃は止んだ。無駄にこの鍛治師軍団に死なれたらマジで困るからな。生きててくれればなんとでもなる。
「このぉぉぉ〜!!!(ズシャッ ズシャッ)」
清さんもかなり奮闘している。いや、そもそものスーパー強化されているから普通ならばオレ以外は負けないだろう。それでも、刀と長物なら修練を積んだ者ならやはり、長物が有利なわけだ。強化してると言っても、斬られたら慶次さんだろうが、清さんだろうが死ぬ。これだけは変わらないからな。
約100名程、降ってきていたと思うが、この反乱に加わった人は8割くらいか。だが、それも既に前衛の太郎君、次郎君、慶次さんが半分とは言わないが、かなり斬り捨てている。
そして、何回も言うが、いくら強化されているとはいえ、疲れも来る。敵は考える事を放棄した獣のような人間でもずっと真正面からは来ない。前方、左右と襲いかかって来ている。
前衛3人が討ち漏らした敵を清さんとオレが斬ったり撃ったりしている。獣のような人間は吉之助の言葉を疑わず、味方が斬られているのに、その死体を盾にしながらも突進してくる。
「(パンッ カチッ カチッ)慶次さん!弾込め入ります!」
「皆の者ッ!今です!囲んで殺してしまいなさい!」
吉之助の下卑た笑いの声が聞こえた。勝ち誇ったかのような顔からの言葉だ。オレに射撃の腕があればここから吉之助に向けて撃ちたかった。だが、オレにはそんな腕はない。仮に闇雲に撃ったとして、もし後ろの国友一派の誰かに当たりでもすればオレは一生立ち直れないだろう。
そう考え、吉之助の事を見据えた時にそれはオレの目に入った。
「源三郎さん・・・」
「馬鹿!尊ッッ!!!横だ!横ッ!!!」
吉之助に目を向けた時、その後方に居る国友一派。更にその横に数人の亡骸があるのが見えた。その1人が・・・源三郎さんだった。
「もらったぁぁ!!!!!」
オレが源三郎さんの亡骸を見つけ、呆然としている隙に横の開拓していない森の方から1人の男がオレに斬りかかってきた。
オレは刀や槍など武の素人だ。その素人のオレでも分かる事がある。
『これは斬られたな』と。
だが、その刹那・・・
「太郎!次郎!後の事は頼んだ!どうやら俺はここまでのようだ!尊を日の本一の飯屋兼、武将にしてやれよ!あばよ!」
グサッ
敵が手にしていた得物は直槍と呼ばれる真っ直ぐに伸びている刃をしている槍だ。その穂先の刃が慶次さんの脇腹に突き刺さった。
オレはこの出来事が、ここへ来た当初に野伏りに襲われた時のようにスローモーションに見えた。
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