ドライブイン安土 始動2
「これを俺にくれるのか!?これはなんだ!?」
「伝助君に死んでほしくないからな。ここのピン・・・この輪っかを抜いて敵陣に投げ込むんだ!すると、爆発が起きる!」
「へぇ〜!焙烙玉のような物か?俺は初めて見たけど!本当にいいのか!?」
「いいよ!いいよ!その代わり、少しの間、ここの飯は全て1文で提供するから友達とか連れて来てくれよな!」
「い、1文だと!?毎日来るよ!必ず!それに知り合いも連れて来るよ!じゃあそろそろ行くよ!」
「あいや、そこの小物。待てぃ!」
「き、騎乗している!?ハハァー!」
「平伏しなくとも良い。ここに尊と申す者が居ると聞いたがどなたか?」
「えっと・・・自分が尊です。あなた様は?」
「おっと失礼。先触れが届いてなかったか?私は明智十兵衛光秀と申す。お館様から聞いて、急ぎ参ったのだ。なにやら、常人には考え付かないものを持っているとな。これを出したのも其方なのだろう?」
マジかよ・・・。この人が明智光秀なのか!?めっちゃ細い。というか、病人みたいだ。だが、一目で分かる事がある!頭に布を巻いているけど、禿げている!それだけは分かる!
そして、明智が取り出した物は信長に渡した銃だ。
「え!?銃!?」
「うむ。この銃をもう少し出せぬか?いや、ここだけの話しだが・・・(これはお館様に奪われたのであろう?その気持ちや分かる。実に分かる。私もそれなりにあったからな)」
明智は小声でオレに語りかけてきた。苦労人なんだというのも分かる。だが、確かに奪われ?みたいな感じだけど、それはそれで仕方のない事だと思っている。
「申し訳ありません。それは本当に一つしかなくて・・・。少しお待ちを・・・。清さん?明智様に冷たい飲み物とお握りを」
「はい!明智様。お久しぶりでございます」
オレは急いでまたまた武器の項目を見る。改めて見ると、とんでもない代物の武器もある。どうやら、レベルが足りないみたいで、黒くなってはいるが、戦車やロケットランチャー?のような物まである。
だが、仮に購入できたとしても、操作方法とか分からないし、ただの鉄の巨大な置き物になってしまいそうだ。他には、トラックやバギーのような物まである。これなら、オレでも運転できそうだ。
そして肝心の今すぐ用意できそうな武器は・・・。あった!
《三八式歩兵銃 三八式実包30発》7貫
タブレットの円計算で7万か。安くはないけど、渡さないといけない雰囲気だし、仕方がない。
オレは素早く購入し、厨房に向かう・・・が、何故かこのタイミングでレベルの表記が《LV8》に変わった。
だが、少し謎が解けて来たような気がした。何故かというと、明智と清さんの会話が聞こえてきたからだ。
「こ、これが握りとな!?中に入っているものは!?鮭!?鮭とな!?これを清殿が!?え!?違う!?あぁ、あの店主がか!?美味い!実に美味い!時間があるならば、もそっとゆっくりと食いたいものだ。なんと!?氷が入っていると!?氷室はどこにあるのだ!?あの箱に氷だと!?信じられん・・・。いや、実に良い!ここは必ずまた来させてもらう!」
そう。この声が聞こえてレベルが上がったのだ。
つまりオレが出した結論は、『また来たい』『次も来店する』と思ってくれる人が居れば、レベルが上がるのではないかと思う。この仮説が本当ならオレは一生懸命、客に飯を振る舞ってあげなければならないという事だ。
しかも、また項目が増えている。なんと・・・
《家電》
が、増えていた。地味にこれは嬉しいかもしれない。既存の家電が壊れないという保証はないし、冷蔵庫がなければ死活問題だからだ。まぁこれはまた落ち着いてからでいいや。
「明智様。お待たせ致しました。この武器とかいかがでしょう?それと、そのリボルバー・・・片手銃?追加の弾とこの三八式歩兵銃の弾です」
「おぉ!なんぞこれは!?いや、分かる!分かるぞ!種子島と似ておる!弾はどうやって装填するのだ!?」
「え!?ちょ、ちょっとお待ちください!」
オレは急いで見えない所に行き、スマホでユーチュ◯ブを立ち上げる。すぐに検索をかける。すると、ある!ある!色々な人が説明している。
それを早送りしながらザッと見る。ふむふむ。この5発束になっている弾をレバーを引いた状態で上から入れるのか。それでコッキングすると・・・。
オレは急いで戻り、見たままの事を明智に見せた。ちなみに、マニアの中ではこの三八式歩兵銃は最高傑作らしい。明治時代の鉄砲とも言っていた。
ワンチャン、いつか戦車を買う事ができても動画を見るだけでなんとかならないか!?いや、さすがにならないよな。
「(スチャ ガチャン!)これで、恐らく撃てるかと思います。1発撃った後、このレバーをこうやって引くと(ガチャン カチャ)このように次の弾が装填され、撃てます」
「素晴らしい!素晴らしいという他ない!これを譲ってくれ!これを量産する事ができれば我が軍は更に強くなる!」
本当にこの人が裏切るのか?今の所、そんな雰囲気は感じないんだけどな。念の為、この人は気を付けておかないといけない。
あれ?オレは歴史の事象に関与しないと思ってたのに・・・いつのまにか、信長を助けるようになっているな。
「多分ですが、鉄砲はもしかすればなんとかなるかもしれませんが、弾は難しいかと思います。雷管とか・・・。いやまぁ自分の方でも色々調べて纏めておきますので、此度の戦の御武運をお祈り致します」
「う、うむ!感謝致す。私も何が何やら未だ分かっておらぬ故。落ち着いたらゆっくり語らおう。それとこれは焙烙玉か?」
「あっ、それはこの伝助君にお渡しした・・・」
「これも貰っていって良いか?これを引っ張り投げると聞いたぞ?」
「あ、はい。その通りですが、それはーー」
「皆まで言わなくとも分かっている。その方、所属は?」
「は、は、はい!丹羽様配下 安土小荷駄隊及び伝令役の伝助と申します!」
「うむ!丹羽殿には私から連絡致す!暫し、我が明智隊に来い!私は人の物を盗む事はせぬ!これは其方が尊殿から頂いたのであろう?ならばこれを我が隊のために使ってくれ」
「は、はい!」
これはオレも喜ぶべきなのか?引き抜きみたいな感じだけど、明らかに出世だろ!?
「伝助君!死ぬなよ!」
「お、おぅ!」
返事が少し頼りないな。
「伝助君!外の荷車は伝助君のだろう?よければこれを全部持って行ってくれ!炊いた米を全部、お握りにしたんだ!中の具はバラバラだから誰に渡しても文句がないように伝えてほしい。それで、もし美味いと思ってくれるなら、ここに飯屋があるって言ってほしい」
「分かった!宣伝しておくよ!」
「うむ!では尊殿!また近々な!お握り美味かったぞ!また必ず来る!はいや!」
明智はカッコよく背中に鉄砲、腹にリボルバーを入れて駆けていった。それに続いて伝助君も荷車を引き駆けて行った。ちなみにお握りは約200個くらいだ。念の為に米を多めに炊いていたのが良かったか。
「さて・・・もう米もないし、どうしよっか」
「尊さま!それならあの箱の中の人を見たいです!」
「テレビの事ですか?分かりました!」
テレビは映りはするが、番組は全部砂嵐だった。が、使い道はある。親父は映画が好きで色々なDVDを持っているため、再生ができるのだ。
清さんはその中から、アーノルドシュ◯ルツェネッガーのターミ◯ーターシリーズにハマったらしい。
「うわ!この南蛮の男性の身体は凄まじいですね!凄い修練を積んでそうです!」
「これが車なのですよね!?人が溶けた!?え!?え!?蘇った!?尊さま!?この先は!?この先はどうなるのですか!?」
この時代って、『南蛮怖い』という時代だと思ったけど、清さんは違うみたいだった。あの無双するロボットがカッコいいらしい。いや、男のオレから見てもカッコいいと思う。あのロボットがこの時代に居たら、あの1人だけで天下が取れると思う。
さて・・・桜ちゃんや太郎君達も居間のテレビに釘付けになったし・・・。オレは原付が動くか試してみようかな。
「跨った感じは大丈夫そうだな。ってか、燃料はどうすればいいんだろう?レベルが上がればガソリンも売られるのか?(ブォーン)おっ!?エンジンはかかったぞ!おぉ!走れる!走れる!」
オレは独り言を言いながら、店の周りを走り出す。アスファルトなんてものはないからガタガタ道たが、走れない訳ではない。
ちなみに、車の免許は持っているが、車は持っておらず、この原付がオレの足代わりだった。ここでもオレの足になってくれそうだ。まぁこれを走らせてるところを誰かに・・・主に天上天下唯我独尊さんに見られると・・・
「なんじゃそれは!?寄越せ!とか言われそうだよな〜」
オレがまた独り言を言っていると、唐突に殺気のような物を感じた。
「ほぅ?貴様はワシの事が分かっておるようじゃのう?ん?ならば、何故、先に見せようとせぬのじゃ?ん?」
「すすす、すいません!これは今し方自分も気付いた物でして・・・」
ゴツンッ
「痛っ!すすいません!!」
「ふん。このくらいで堪えてやろう。明智が参ったであろう?ワシも出る。本願寺の糞坊主を根絶やしにして参る」
「はい!お聞きしました。どうぞどうぞ!馬は・・・乗った事ありませんので、分かりませんが、ここを捻ると走り出します!ゆっくり回してくだーー」
ブォーーーーーン
「ぬぉ!良い!良いではないか!これは小雲雀より速いではないか!」
「殿ッ!!!その馬はなんですか!?危のうございますぞ!!」
信長は、10人程の人を連れていたが、まったく気が付かなかった。その10人の兵の人が本気で驚いているのが分かる。なんなら、2人はオレに槍を構えているんだが!?早く仕舞うように命令してほしいんだけど・・・。無言がめっちゃ怖い。
ってか、最初から乗りこなせるのってかなり凄くないか!?オレも最初は転けた事があるんだぞ!?
「うむ!これは良い!これを寄越せ!」
はいでたよ。言われると分かってたさ。なんとなく・・・なんとなく本能寺を起こされる気持ちが分かった気がしたわ。
「分かりました。その代わり、それを動かすには燃える水が必要なのです。今ある限りしか今の所ありませんので、動かなくなっても怒らないでください」
「燃える水?なんじゃそれは?」
「石油という水です。燃料なのです」
「そうか。ならばワシが見つけてきてやろう!」
残念ながら日本には石油が出ない。いや、この時代は現代の地殻と多少なりとも違うから出る所もあるかもしれないが、中東のような事はないだろう。けど、その事は敢えて言わない。何も言わなければこの人なら配下にお願いして、マジで探してくれそうだからだ。まぁ、仮に見つかっても精製方法なんか分からないから使えないだろうけど。
「えっと・・・本日は何用ですか!?」
「うむ!先日の片手銃は見事だった!あれと同じ物を献上せよ!弾はあるだけ寄越せ!」
はい。また出たよ。信長専用の魔法の言葉、『ヨコセ』だ。
これは何かの呪文か!?
だが、オレはこんな事もあろうかとさっきの時に購入こそしなかったが、見ていた物がある。同じ、リボルバーの所に、《ニューナンブM60》という物を見たのだ。オレはすかさずそれを購入する。
ちなみに、5貫で弾は《.38スペシャル》というらしい。
何がスペシャルかは分からないが、信長にピッタリだろう。元から弾は30発同梱されているみたいだが、その横の項目に弾1発5両、タブレット計算で500円だった。
どうせ、この人はヒャッハーするタイプのように思うから、100発購入して渡す事にした。これだけあれば満足だろう。
「おぉ!これじゃ!これ!前のとは少し見た目が違うようじゃが?」
「同じ奴は用意できませんので、それでお願いします。そちらの方が性能は良いかと思います」
最初に渡した二十六年式拳銃は1890年代の鉄砲だが、今回渡した物は説明には1960年代の鉄砲らしい。どちらがいいかは分からないが、素人のオレからすれば新しい物の方が良いに決まっている!だ。
「うむ!よくぞ渡してくれた!おい!渡してやれ」
「本当に構わないのですか!?」
「くどい!なら貴様はこの片手銃をワシに出せるのか?あん?分かったなら早うせい!」
信長が部下の1人にそう命じると、大きな木箱を二つ渡してきた。どうやら、オレにくれるらしい。
「一箱100貫入っている。一つは貸しだ。もう一箱も同じように入っている。が、そちらは当面の生活の足しにせよ。その銭で一気に返済するも良し、運転資金にするも良し、貴様の好きなように使え。返済するならば戦の後にせよ。では、ワシは摂津に向かう。励め!」
「あ、ありがとうございます!」
信長は返事もせず、駆けて行った。どうじゃこうじゃ言っても案外面倒見のいい人なんだな。
「で、君達は何で隠れていたのかな?」
「いや、隠れてなぞいませんよ!」
「そ、そうです!陰から伺っていただけです!」
桜ちゃん達は信長の相手をオレ1人に任せてやがった。これはお仕置きしないといけないな。まぁ冗談はさて置き・・・。この金をどう使うかだな。
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