ドライブイン安土 新生8
「ふっふっふっ。マスター!どうですか!?私のラボは!?」
「いや、どうですか!?じゃないよ!?小さめの工場じゃん!」
「マスターも騙されていますね。まぁ、まずは一つずつ説明致しましょう!」
カナは本当に一つずつ説明を始めた。まず、1番目立つ所にある物は、見たままのプレス機だった。
「鉄を圧縮し、プレスする事により更なる物が生まれます!」
言ってる事が分からん。いったい、何が生まれるというのだろうか。
「それで、こちらは前にマスターに言いました旋盤になります!こちらが、ボール盤で・・・」
カナの嬉々とした説明が始まった。
ボール盤、研削盤、歯切り盤と呼ばれる物があった。
「っていうか、今思った事なんだけど・・・明らかに外から見るのと中の広さが違うよね!?」
「さすが、マスター!よくぞ気付きました!私が八幡様にお願いし、権能を使う許可を得ました!」
「どういう事?それに八幡様って!?」
「簡単に言えば、私の上司と言えばいいでしょうか。神は供えられない物しか食べられない、得られないルールがあるのですが、ここの甲賀の方達が、八幡様に毎日祈っていただけるでこのようになりました!」
「このようにって・・・カナが強制してるんだろう?」
「いえいえ!偽物の祈りと本物の祈りの区別くらいは私達には分かります!ここの方は全員本物の祈りです!だから、供物が八幡様に届けられるのです!」
「例えばどんな物?八幡様って戦いとか勝負事とかの時に祈る神様だよね!?」
「この時代ではそうですし、そうやって伝えられてはいますが、何を司っていようが祈りは関係ありませんよ。一応、八幡様は格が高いため、安産や、母子の神など色々と司っていますよ。
あっ、ちょうど良かったです!マスターもこの祭壇に何か供物を捧げてください!タブレットのボックスに何か入っていませんか!?」
「うん?食べ物?太郎君や次郎君の試作が入ってはいるけど・・・」
「違います!マスターが作った物です!」
「オレ!?オレが作った物は・・・スフレチーズケーキならあるけど・・・オレがおやつで食べようとしていた物だから適当に作った物だぞ!?いいのか!?」
「大丈夫です!さぁ!」
さぁ!じゃねーよ!やんわり断る言葉だったんだよ!と、思ったが出さないといけない雰囲気だ。
オレは簡易的に作られ、両端にサカキが置いてある台の上にスフレチーズケーキを置いた。すると、直ぐにそれが消えた。
「はぁ!?消えた!?」
「はい!これで供物が届けられました!まぁこのように八幡様に供物を渡し、色々とルール変更が行われたのです!以前、清様とマスターで捧げた物もあったでしょう?あれもちゃんと届いていますよ!」
これは考えてはダメだ。考えた所で追いつかない。
「では・・・地下に参りましょう。更に驚かれると思いますよ!」
「地下もあるの!?いや、もう驚かないよ」
「(クスッ)」
「なんぞ!?これはなんぞ!?」
「ふふふ。驚かれないのではなかったですか?」
ック・・・。オレとした事が、驚かないといいながら1番に驚いてしまった。
地下に関してはかなり広い空間となっていたわけだが、その地下に・・・・
「あっ!尊の旦那!お疲れ様です!おーい!皆の者!作業辞め〜!作業辞め〜ッ!!」
「え!?源三郎さん!?」
そう。源三郎さん達、一派の鍛治師の人達が当たり前のように溶接のような事をしていたのだ。よくよく見ると、端の方に、以前オレとカナや清さんが教えた炉のような物を新設している。そこに、溶岩のような真っ赤なドロッとした何かを鋳型のような物に入れ込んでいた。
しかも、男でも見惚れてしまうくらいの筋肉達磨のような人達ばかりだ。そんな熱い・・・というか、触れると骨まで溶けてしまうような物体を使っているのに、何故上半身裸なのかと聞きたい。危ないだろ!?
そして、地下の中央に堂々と作られているなにか・・・。
「まさかこれって・・・」
「はい!その通り!船の骨組です!」
「って事はこの船を・・・・」
「そうです!甲賀村で作り、それをマスターがまずは織田様に献上し、九鬼様や滝川様へと流れる訳です!」
「いや、それならオレを通さなくてもいいんじゃないの?」
「いえいえ。これはマスターがすべき事です!この人達の殿はマスターですし、この船を作れるようになったのもマスターのお金があってこそですので!」
「いや、まぁ、そこまで言うならそうするけど、これはどうやって運ぶの?」
オレが純粋に疑問に思った事を聞くと、あの荒屋の階段から降りたはずなのにカナは、『上の歯切り盤で歯車を作り、チェーンで回してるだけです』と言い、クランクのような物をクルクル回すと天井が開き、床も上に上がった。
簡単に説明するならば、手動エレベーターのような物だ。しかもよく見ると、歯車が大きいのから小さいのまで、全てが噛み合い、そんなに力を入れずに回しているのが分かる。
「ちょ!カナ!?これはやり過ぎじゃないのか!?」
「いいえ!このくらい大丈夫です!」
「ってか、そもそも天井が開くならオレが地下に降りていった意味は!?最初からここから降りたら良かったんじゃないの?」
「え?だって驚かせたいじゃないですか」
あぁそう。驚かせたかっただけかよ。
「尊の旦那!聞いてくれ!兵装なんだが、直射砲をだな・・・」
また源三郎さんが不穏な事を言い出した。ここだけ21世紀のようだ。
〜堺 茶店〜
「慶次か。久しいな。ワシを呼び出すとは金の無心か?」
「わっはっはっ!いつまでも遊び惚けている俺じゃないぜ?」
「うん?働き出したのか?あの慶次がか!?」
「あぁ!飯屋で用心棒兼、とある部隊の隊長をしている。そんな事は今は良い。とある情報筋から聞いたのだが、お前は飽きもせず本願寺に行商人を入れているらしいな?」
「・・・・なんの事だ?」
「わっはっはっ!惚けなくても良いんだぜ?証拠はあるしな。それと、俺は今は織田家に仕えている。その事は覚えておけよ?」
「下っ端の俺を捕まえてもお前に何かいい事でもあるのか?ないだろう?」
「へぇ〜。あんたが下っ端ってな?銭なら1番貯めているだろう?知ってるんだぜ?どろーんなる物でこの目で見たんだからな。坊主等に鉄砲まで流しているなんて俺ぁ〜目を疑ったぜ」
「・・・・・・・」
「(プカー)まっ、そう警戒しなさんな。これはオレの主からの仕事でな?(ドサッ)受け取れや」
「なんの真似だ?」
「それがお前の報酬さ。次の本願寺との定期便に何人か混ぜてほしい」
「(ブボッ)んな事できる訳ないだろうが!」
「い〜や。お前ならやるね。お金に1番煩いお前がこの話を断るはずがない」
「チッ。やりずれーな。で?何を始める気だ?落ち目の坊主等にお前の殿さんは寝返るという奇特な考えの人なのか?」
「(プカー)いーや?普通に物を売るだけさ。俺の殿が作った物をな。お前は顕如にも話ができる数少ない町衆の1人だろう?山上宗二よ。お前の師匠の千宗易がこの事を知れば怒られるじゃ済まないと思うぜ?」
「分かった!分かったからこの事は内緒にしてくれ!目的はそれだけではないだろ!?言え!お前にはいつも言い包められる!やりずらいったらありゃしねー」
「わっはっはっ!俺ぁー、百戦錬磨の堺の商人にだって負けないからな!よく聞け。俺の殿は上に上がる男だ。線も細く武芸も全然ではあるが、気概がある。オレはあの男を織田家一の男にさせるつもりだ。本願寺を潰す。そのきっかけを俺の殿である尊がやる。その一歩がこれだ」
「はぁ!?まさかお前が本気でその尊という奴の下に着いたのか!?嘘だろう!?」
「本当さ。その箱の中を空けてみろ。最高級抹茶缶と澄み酒数種類、乾き物だ。それを本願寺の上層にお前が売れ。言い値で売れるであろう。寺には、未だに、しこたま金を貯めているだろう。吐き出させてしまえ」
「慶次・・・これは・・・」
「あぁ。お前の師匠ですら見た事ない抹茶の粉であろうよ。(プカー)明日、同じ刻にここへ来る。その時返事を聞かせてくれや」
「・・・・相分かった。まぁほぼ既に決まってはいるがな」
「わっはっはっ!明日にしろ!今日は久しぶりにコレの所に行くんだ!なんせ、5年振りだからな!じゃあな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます